あらすじ
世界中を旅する男が、久しぶりに元妻のつつましやかな家庭を訪れた。生活に疲れた元妻に、男は胸躍る冒険の数々や、途上国での豪奢な暮らしなど夢のような土産話を披露する……ユーモアに辛辣さを織り交ぜた表題作ほか、著者自身の戦争体験を反映した「記念品」、音楽を愛するあまり暴走する高校教師の苦悩を描く「女嫌いの少年」など、ヴォネガットならではの、優しくも皮肉な視点で描き出される珠玉の初期短篇を23篇収録。
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Posted by ブクログ
●死圏
○あらすじ
成層圏の外側に霊界があって死者がたむろしているとしたら、の世界。
アメリカが核をソ連に命中させるため、命中したことを確認するために成層圏の外側にUFOを飛ばしたことで、その霊界は発見される。
○キャラは何を欲しているか。
UFOに載った人は、死んだ妻を欲している。打ち上げ計画の最高責任者は、核をソ連に打ち込むことを欲している。計画に参加した科学者は、計画に対して自分が完璧な技術力を発揮したという事実を欲していて(つまり計画の成功)、途中からは霊界の存在の解明を欲している。
○感想
霊界の存在をどうやって博士たちに信じさせるか、のところが面白かった。傍にいる死者が誰で住所がどこ、って情報だけだと事前に調べたんだろで疑えるけど、博士とその親しい人にしか知り得ない事実を博士と親しい死者から聞き出し伝えるというのは、確かに綺麗な暴露だった。
●ジョリーロジャー号の航海
めちゃくちゃいい。俺の置かれてる状況と似てて、自分を重ねてみてた。
20歳くらいから35歳くらいまで戦争に従軍してた人が主人公で、戦闘が大好きだった。で、一般人の友達もいないし、日常に戻った時にやりたいこともなかった。で、いざ戦争が終わってみると、自分は価値のない人間だと自覚してしまう。若い男女の会食にお邪魔することになった時は、自分が芸術とかの話に混ざれなくて、それを気の毒に思った人から戦争の経験談の話を振られるけど、要領の得ない話を延々としてしまい場を盛り下げてしまう、これで俺はもう無理だ...価値のない人間だ...となる。まあでも最終的には、親友のジョージがホームタウンで聖者として尊敬されてるのをみて、自信を取り戻す。自分には価値があるんだと。
やっぱり僕も人と上手く話せなくて、会食やら何やらが終わった後に「もう無理だ...」という経験を幾度となくしてきたから、あるあるとして面白く読めた。最後自信を取り戻すまで描いてハッピーエンドにしてくれてありがとう。俺は果たして自信を取り戻せるのか。人との間で何かの承認を受けるしかない、と思ってる。