【感想・ネタバレ】等伯(上)のレビュー

あらすじ

都に出て本物の絵師になる――武家から養家に出された能登の
絵仏師・長谷川信春の強い想いが、戦国の世にあって次々と悲劇を呼ぶ。
身近な者の死、戦乱の殺戮……それでも真実を見るのが絵師。
その焦熱の道はどこへ。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

長谷川等伯がずっと好きだった。
「好き」という表現は少々軽いかもしれない。

狩野派全盛の織豊政権下、
「時代の寵児」だった狩野永徳や、
時の最高権力者である関白秀吉らに対し、敢然と戦いを挑み
己の地位と長谷川派を画流を確立した等伯。

そんな「時代の反逆児」等伯に対する思いは
「好き」というより、「畏怖」「畏敬」の念に近い。

最近になり、安倍龍太郎の直木賞受賞作「等伯」を読み、
絵仏師、画家としての等伯を、
法華経の信奉者として
戦国の安土桃山時代を駆け抜けた人間として
そして何より芸術を探求する表現者として
深く理解することができた。

印象的な台詞や注目すべき箇所には
思わず鉛筆でラインを引いてしまった。
受験の現代文読解のように(笑)
読後の感動が冷めやらぬうちに、感想を書きたいと思う。

人間は誰しも困難や挫折、悲劇と直面し、
哀しみを味わい、葛藤し、悩みを抱えながら生きていく。
武家社会の計略、因縁に巻き込まれ、
「焦熱の道」を歩んだ等伯にも様々な悲劇が降りかかる。

養父母の自決から、故郷の七尾を追われた等伯。
京の都に妻と幼子を連れて旅立つ途中で
信長の比叡山焼き討ちに独り巻き込まれ、
追われる身となった苦しい時代。
愛妻の死、
狩野派との暗闘、
師と仰いでいた千利休の自刃、
そして愛息・久蔵の死。
戦国時代の荒波に飲ま混まれれるような悲劇と困難の数々。
窮地に陥った等伯も嘆き苦しむのだが、
彼を救ったのは法華経の教えと
「とこしえの真善美」を探求する芸術家としての信念だった。

この本を読んでいて
東日本大震災に伴う津波や原発事故で
故郷や大切な人を失った人たちの姿が重なった。
自分も被災地を訪れ、大切な家族を失った人達を取材した人間の一人である。
ジャーナリストは、芸術家とは違うが
世の中に真実を伝える「表現者」である点は共通すると思う。
そういう意味では、大変おこがましいが、
等伯の反骨心、権力や理不尽なものに敢然と立ち向かう姿を読むにつけ
自分の弱い生き方を恥じるとともに
「かく在りたいな」という畏敬の念を抱かざるを得なかった。

自分も迷える人間だが、
等伯のように悲しみも喜びもすべて背負いながら
己の人生を強く生きていこうと思う。
そして、等伯の絵を訪ね、京都や七尾、敦賀を旅したいと思った。

0
2014年05月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

長谷川等伯という安土桃山時代から江戸初期に活躍した画家の伝記小説。上下2冊の長編小説ですが、一気に読み進むことが出来ました。

恥ずかしながら私は、この本を読むまで長谷川等伯を知りませんでした。同時代活躍した狩野永徳は知っていましたが。こういう本を読んで、今まで自分の知らなかった有名人を知るのは楽しいですね。

さて、この本の終盤の山場に出てくる「松林図屏風」ですが、東京国立博物館の新春特別公開で、実物を見ることが出来ました。感激です!!

椅子に座って暫く「松林図屏風」を観てみました。しかし、その屏風から光と陰は感じることは出来ましたが、残念ながら私には、風までは感じることが出来ませんでした。残念です!

0
2025年09月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

常に己の信念に忠実に生きてきた長谷川信春(後の等伯)。
十一歳で武家から染物屋に養子に出されて以降、戦国の激流に翻弄され続けて不遇な時を過ごすも、その都度自身の絵に境地を救われる。
このままでは終わりたくない。
いつかあの狩野永徳を越える絵師になる!と常に永徳を意識しながら。

山本兼一氏の『花鳥の夢』を読んでから俄然興味が湧いた今作品。
等伯がこんなにも追い詰められながら絵を描き続けてきたことに驚いた。
次々に不遇に見舞われても切り抜ける根性。
故に気迫と気高さが込められた等伯の絵。
特に長年等伯を支えてきた妻のために描いた故郷の山水図はどんなにか素晴らしいことだろう。
そしていよいよライバル永徳との対決が楽しみな下巻へ!

0
2017年08月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

詳しくはないけど、等伯の画、好み。
華々しい狩野派と同時代のお話。

義父母の死、能登七尾から京の都へと。

「あなたは信長に勝ちたいとは思いませんか」

〜人は理不尽な暴挙に屈することのない気高さを持っていると、自分の生きざまによって知らしめたいのです。〜[日堯の肖像画]

近衛前久との出会い
死と向き合う不安と恐怖、それに打ち克とうとする信念と覚悟。〜[教如の肖像画]

『心に分別して思い言い顕す言語なれば、心の外には分別も無分別もなし』

〜言葉というは心の思いを響かして声を顕すという。〜神通というものは、魂の一切の法に通じてさわりのないものじゃ。〜すべての心の動きは悟りに通じておる。〜
〜「力をも入れずし天地を動かす力が、和歌に、いえ、言葉にあるのでしょうか」「ある。心と天地はもともとひとつのものじゃ。心が正しく動けば天地も動く」[日禛の肖像画]

妻、静子の死。本能寺の変。
いよいよ絵師へ。
〜俺ら政にたずさわる者は、信念のために嘘をつく。〜絵師は求道者や。〜

0
2016年02月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

松林屏風図を見て感銘を受けたので
とりあず 直木賞受賞の本作を読んでみた。

戦国時代の不安定な世の中に振り回させれ
命を危険にさらされながら筆一本で生計を立て
地位を気づいていった等伯。
前半は 七尾を追われ、 大坂にでるあたり
絵書きとしての 修練の日々。

よく見る事 人柄に迫るということなど
等伯が一人の人間としてどのように画業にうちこんだかがよくわかる良書。

戦国時代の だれが勝ち組になるかわからない日々の
不安の様子もよくわった。

0
2015年02月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

重々しい話かとおもったら、意外とライトで読みやすい。人が何人も死んだり辛いことが色々とあるのだけど、信春(等伯)の性格のせいかな?絵の才能はすごいけど、見たい知りたい欲が強くて、悩んだり恨んだり、調子に乗っては痛い思いをして反省したり、柔軟で人間らしくてとても魅力的。妻や子を思う優しい気持ちも。登場する絵を実際に見てみたいなあ。下巻へ続く。

0
2018年05月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

長谷川等伯は好きな作家でその生涯も大まかに知っていた。直木賞受賞作とも言うことで期待したのだが、うーむ、肩透かし。まだ下巻を読んでないので評価は下せまいが。

題材としては稀少性はあるが、表現がイマイチ。この作家さんは絵をあまり見ずに、剣客もののほうが好きな気がする。美術家の伝記ものではなく、奥さんを不幸にして夢を追いかけた男の一代記ぐらいのつもりで読むといい。

0
2014年04月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

戦国末の絵師、長谷川等伯の伝記的小説。

とはいっても、養父母の死などのプライベート部分は物語になっていて絵師として成長していくバックボーンとしています。
上巻は信長の死で、いよいよ中央デビューというところまでです。
歴史の教科書では文化面は時代の作風と作者と作品しか出てこないので、物語となると時間はかかるが記憶に残りますね。

0
2014年02月02日

シリーズ作品レビュー

「歴史・時代」ランキング