【感想・ネタバレ】孤高の人(上)のレビュー

あらすじ

昭和初期、ヒマラヤ征服の夢を秘め、限られた裕福な人々だけのものであった登山界に、社会人登山家としての道を開拓しながら日本アルプスの山々を、ひとり疾風のように踏破していった“単独行の加藤文太郎”。その強烈な意志と個性により、仕事においても独力で道を切り開き、高等小学校卒業の学歴で造船技師にまで昇格した加藤文太郎の、交錯する愛と孤独の青春を描く長編。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

ずっと、自分と山と向き合い続ける加藤文太郎の生き様が好きです。
孤高とはいうものの、孤独であり不器用なのですが、そこが魅力でもあります。
だから、誰かと共にあろうとするとき、彼には悲しい出来事が決まって起きてしまう。
唯一、伴侶が出来て、子どもを授かった時に、山から距離を置いたあのときが、彼にとって誰かと幸せを共有できた時間で、それがとても尊いものに感じました。

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2024年10月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

『単独行の加藤文太郎』と呼ばれる登山家が、どのようにして山に導かれ進んでいくのかを追った物語。

 序盤の神港造船所の技術研修所に、研修生として五年間在籍している間の話は非常に面白かった。木村敏夫は影村一夫からの嫌がらせや罵倒に嫌気が差し出ていく。地図の読み方などを教えてくれた新納友明は肺結核にかかり死に、金川義助は主義者として逮捕され…。彼と共に過ごす人達は何らかの形で不幸な道を辿ってしまい、加藤は俺といない方がいいと考え、孤独に生きていく。

 冒頭からずっと彼を気にかけている外山三郎の存在も大きいと思う。山岳会に入らないかと仕切りに勧めるが、加藤はそれを拒絶する。しかし、外山から本を借りたり、会食に招かれれば訪ねて行ったりと、どこかしらで繋がり続けている所が、加藤は本当は誰かといたい気持ちもあることに気付かされる。

剣沢小屋の6人のパーティーに拒絶されてもついていこうとする加藤のシーンは心惹かれた。単独行を好んで進めた部分もあるが、どこかで誰かと共に登山をしたい気持ちもある。けれど自分の登山速度が速すぎることや、人とのコミュニケーションをうまくとれないことも相まって、結局は孤独に、1人冬山を登っていく姿はとても印象に残っている。

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2023年10月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

昭和初期に、単独行で名を馳せた、加藤文太郎の人生を追った小説。本当は優しいのに人づきあいが下手な加藤が、山にのめりこんでいき、やがて数々の冬山の単独行で有名になる。そんな彼も結婚し、子供をもうけて、山を控えるようになるが。。
新田次郎の乾いた、しかし鋭い筆で描かれる山行のシーンに引き込まれます。実在の人物をもとに描かれたと思われる登場人物たちも、個性豊かで映画のよう。
加藤と同じ生き方はできないけれど、彼の人生や仕事、そして山に対する真摯な姿勢には大きな感銘を受けました。

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2018年08月31日

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ネタバレ

モルゲンロート観てみたい。

「山岳小説」で検索してヒットして面白そうだと思った本を片っ端から買っていて、積読していた。

大正~昭和の初めのお話で、時代小説が苦手で一回途中まで読んで断念していたけど、最近忍たまにハマっているので、昔の時代の物語も楽しめるようになってきて、読み切れた。(忍たまは戦国時代。ありがとう忍たま)

途中まで読んでいたとき、乾し小魚をぼりぼり食べている描写を読んで、影響されてわたしも乾し小魚をスーパーに買いに行った。再読時、その出来事を忘れていて、また乾し小魚をぼりぼり食べている描写を読んで、また影響されて乾し小魚を食べたくなった。そして…(無限ループ?)

北八ヶ岳への旅行に持って行った。実際にハイキングした帰りの電車で読んで、自分が想像できる山の解像度が上がっていて嬉しかったという思い出。
元々は、人間の極限状態が描かれていて面白いという点で山岳小説が好きだったけど、山登り(ハイキング程度のもの)を好きになって、実際に山に行ってから読むと、さらに山を深く知れたような気がして相乗効果がある。
八ヶ岳も出てきて嬉しかった。

地下足袋の加藤文太郎を周りの人はほうっておかないけど、本人にしたらほうっておいておくれ!という感じ。

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2025年11月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

神戸アルプスから始まり、冬の北アルプスにつながる。
山の描写は楽しめるが、日常生活部分は一般人の私生活を覗き見るようで微妙。
主人公が伝説化され、心理的距離感がもっとあれば気持ちよく読めたかも。
神戸アルプス縦走は面白そう。

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2025年03月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

今や登山には色々な技術が駆使されたウェアやギアが揃っているが、昭和4年という時代の、限られた素材を創意工夫して雪山に臨んでいる加藤氏の姿はただただ尊敬に値する。
自分も山登りをするが、加藤氏の様に石を背負って通勤し、甘納豆とら揚げた小魚で長く動ける様に体を慣らし…と日々の鍛錬から怠らない、加藤氏と同じ努力は中々出来るものではない。
山は上流のもの…と言う時代背景も私には新しいが、そんな時代があったのかと変化後の今に感謝したくなる。
それにしても影村のようなヤツはどの時代にもいるんだな。

これだけ褒めてはいるけれど、やはり実際に加藤氏に会ったとしたら言葉少なに引きつった笑みを浮かべる姿に親近感を抱けなかったであろう…

それにしてもラストが分かっていて読み進めるのは辛い

下巻に続く

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2021年02月14日

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ネタバレ

本作品は山岳小説の大家である新田次郎氏が「加藤文太郎」という登山家に焦点を当てた山岳小説である。そこに描かれているのは外山三郎ら庇護する者や影山ら乱す者との人間ドラマであるとともに、大正から昭和へと変わる不穏な雰囲気、関東大震災や5.15事件の軍国化、共産主義の暗躍といった出来事である。「単独行の加藤文太郎」の気骨がどうやって生まれ形成されていったか、新田次郎の詳細な調査と創作が入り交じり「加藤文太郎」に色を与えている。

ひとつだけ疑問は山に興味が薄かった加藤氏がどうしてヒマラヤに執着するようになったのか。作品内でのきっかけや動機が薄弱のような気がする。もう少し詳述が欲しかったように思う。

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2019年03月24日

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ネタバレ

登山をする者として、馴染みのある山や地名が出てくることが、より小説への没入感を増す。フィクションとノンフィクションがミックスされたような作品だそうだ。
今回は上巻。これから下巻に入る。まだ物語は始まったばかりだ。

主人公は加藤文太郎。実在した登山家だ。
彼がエベレストの登頂を目指すことから物語は大きく動き出す。

本格的な登山の描写が出てくるまでに、少々読み進めなければならない(退屈)。
登山に例えるなら稜線までの登りだ。そこを越えると常念岳から蝶ヶ岳への縦走のように素晴らしい景色が見えてくる。といっても冬山がメイン。山行はみっちりと描かれるが、読んでいて私は「こんなもん無理やて・・・」と畏敬の念を抱くしかなかった。

ついつい忘れがちだが、まず時代が違う。大正の末から昭和の初期にかけての話だ。
装備、食料、山小屋や登山者用の目印だって今とは比べ物にならないお粗末な物だろに・・・

また、加藤の不器用さが歯がゆい。
「そこ素直になろっ!」って言いたくなる場面が無数にある。今の時代なら、発達障がいとして分類されるであろう加藤の行動や反応、執着はどのように認知されていたのだろうか。著者はどのように彼の人格を作り上げたのか。
女性への加藤の内心やその関係を描く場面も多くあるが、個人的にはもうちょっと省略してほしかった。なんせ、話がダレる・・・

とは言え、加藤を見込んだ人々のサポートを受けながら、彼はことごとく山を踏破していった。

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2022年10月28日

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