あらすじ
燎平は、新設大学の一期生として、テニス部の創立に参加する。炎天下でのコートづくり、部員同士の友情と敵意、勝利への貪婪な欲望と「王道」、そして夏子との運命的な出会い──。青春の光あふれる鮮やかさ、荒々しいほどの野心、そして戸惑いと切なさを、白球を追う若者たちの群像に描いた宮本輝の代表作。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
メモ。
青くて幼くて脆くて必死に生きてた。
大人になって世間に擦れて沈んでしまう、若さに裏打ちされた感情を思い起こさせる作品だった。
誰もが椎名燎平であり安斎克己であり氏家陽介でありむしろ誰でもない。
この世は怖い。人生は大きい。
Posted by ブクログ
予想以上に面白くて驚いている。
登場人物それぞれに対して、”なんだかわかる気がする”部分が自分にもあって、静かに余韻に浸ってしまう。まだ上巻なのに…。
特に燎平。
厚かましくも今だからこそ、自分の恋愛のなかにも、この時期の燎平みたいな男の子がいたのかもしれないという気持ちになる。一見控えめなんだけど、心の中では勢い良く溢れそうになっている不安定な感じ。大学生の時に読んでいればまた何か違ったのだろうか。いかにも無知で無経験で小生意気な若さゆえに相手を傷つけてしまうことも少しは減らせたのだろうか。
男は女の感覚がわからないし、女は男の気持ちがわからない。
人は他人のすべてを理解することはできない。
まして20歳前後の大学生なら。
燎平のこの気持ちが今後どういう風に変化していくのか知りたい。
Posted by ブクログ
「一流になるには、変則的なテニスでは限界があるけど、オーソドックスな素直なテニスでは逆に三流の壁がなかなか越えられへん。見てくれはええけど、そんなテニスは怖いことも何ともない。筋金の入った、年季の入ったテニスにかかったら、勝負になれへんのや」
「俺は、実に真剣に、祐子に惚れとったな」
顔が赤かった。ビールのせいだけではなさそうな目元の紅潮だった。
「こないだ、学生食堂の窓から何気なく坂道を見ていたら、祐子がおんなじクラスの女の子四、五人とのぼって来た。なかなか美人揃いの一団で、他の連中と比べると、祐子が一番と目立てへんかった。祐子よりも美人で華やかな女の子に挟まれてたんや。祐子は、そやけどやっぱり際立ってたよ。祐子は華やかでなかったけど、よく見ると一番華やかやった。ああ、祐子て、やっぱりええなァと、俺は思ったんや」