【感想・ネタバレ】この胸に深々と突き刺さる矢を抜け 下のレビュー

あらすじ

カワバタは胃ガンであった。手術の直後から、数年前に死んだ息子が自分をどこかに導こうとする囁きが聞こえ出す。格差社会、DV、売春――思索はどこまでも広がり、深まり、それが死の準備などではなく、新たな生の発見へとつながってゆく。発表されるや各メディアから嵐のような絶賛を浴びた、衝撃の書。(講談社文庫)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

すごい小説だった。
自分とは何か、何のために生きているのか、世の中の真実はどこにあるのか、何を信じればいいのか。
もっとも繰り返し問われるのは経済格差の問題。
小説の最後に、「胸に深々と突き刺さる矢」の正体が分かる。
でも、もしそうなら、私はその矢を抜くことはできないと思った。
その矢にとらわれることなく、「自分」という存在をあるがままに受け入れるのは難しい。
人は誰でも、過去にとらわれたり未来を想い描いたりするからだ。
そうでないと生きてはいけないと思う。

小説を通して、世界の真実を問うているのか、一人の人間の真実を問うているのか、運命の何たるかを問うているのか、愛の何たるかを問うているのかわからなくなってくるけど、多分すべてを読者に問いかけているのだろう。
内容盛りだくさんで非常に考えさせられるし、ストーリー展開自体も面白くて最後まで引き込まれる小説でした。

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2021年09月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

上巻よりも下巻の方が面白かったかも。
相変わらずの引用はちょっと難しい部分やくどい部分もあり、頭に入ってこないところもありましたが、カワバタがどのように救われていくのか追っていくのが面白かったです。
まさかDVから助けだしたユリエと一緒になっていくとは思いませんでした。
白石さんお得意のスピリチュアルな要素も双子に絡めて展開されていましたが、思わず納得しそうな感じでした。

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2014年06月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

唐突な引用や不意に変わる展開が効果的で面白く、ストーリー運びの上手さと相まって最後まで一気に読ませられました。
ただ主人公の論理には非常に魅力的な部分もあれど、その偏狭さに段々頭痛がしてきます。すべての人の心に矢が突き刺さっているという前提のようで、彼の目を通すと非常に暗いサングラスをかけて世の中を見ている気分になります。他者に対する評価が大変厳しく、彼らに対する想像力や寛容性は殆どありませんが、ご自分には意外に点が甘く、持論には辻褄が合わない箇所も多々あります。結局自分の信条に固執するあまり多様性には狭量のようです。
恐らく議論を広げるため確信犯的に書いているのだろうけどそれにしても今一つ感じの悪い主人公だ、、、と思わせられるところは日本のミシェル・ウエルベック?巧いです。
これほどシニカルな人がどうやったら救われるのだろう、本人もあまり興味がないようだが果たして救われるのか?という興味を持ってラストに向かいましたが、彼の選択は他のと何が違ったのか、今一つ説得力に欠けます。あれが必然性なのでしょうか。ストーリーはともかく、思想的にこれだけの大風呂敷を広げてしまった後では結論が弱い感が否めません。
しかし、著者の今までの本もみなそうでしたが、共感はしないが読み進めてしまう、考えてしまう、という本で、きっとまた次作も手に取ってしまうことでしょう。

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2014年07月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「そんなことより、もっとよく現実を見ろ。それがお前の仕事だ。問題なのは“過剰さ”ってやつだ。俺たちジャーナリストがこの世界で見逃してはいけないのは、過剰な不幸、過剰な貧困に喘いでいる人たちの姿だ。そのひとたちのために自分には何ができるのかを考えろ。俺たちにできることもやるべきこともそれだけだ。この世界がなぜこうも悲惨なのか、なぜこうまで残酷で非人間的なのか。つまりは問題や課題は一体何のために存在するのか、その一点に自分の能力を集中しろ。」う〜ん。上巻はけっこう面白かったんだけどな…。上巻からの進展が少ない。

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2013年02月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

表題「この胸に深々と突き刺さる矢を抜け」。
その「矢」とは一体何か。
生と死を、未来と過去を、日本社会と資本主義を、引用を交えながら
激しく、叩きつけるような筆圧で描かれています。
そのメッセージ色が濃すぎるため
しばしば物語が置き去りになりますが
差し引いても、その熱に触れられて良かった。
今、なすべきことをなし、丁寧に生きる。
ハードな生き方ですが少しでも近づければと。
現代経済学者、岩井克人氏の
「二十一世紀の資本主義」と合わせて読み直したい作品です。

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2013年09月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

このほんは何故パワープッシュされているのかよくわからなかった。タイトルには厨二心を惹きつけるなにかがあるのは感じるが(というか実際ひきつけられた。)

実際、中身を厨二病をこじらせたまま大人になった「資本主義って」「政治家なんて」「オトナとかって」という作家自身が伝えたいメッセージであふれていて、少しこっぱずかしい感じがした。


お話としては、登場人物を延々に混乱し続ける分かり辛さにはなんとも言えないことに加え、結末もなかなか唐突だった。

しかしながら、説教くさく、ストーリーとして大きな展開があるわけでもないのに、きちんと最後まで導く表現力と文章力は秀逸。また読みたい作家かと言われれば、少し距離を置きたい感じがするが、それでも売り出すだけの理由がある作品。なのだろうな。

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2012年04月01日

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