【感想・ネタバレ】地のはてから(下)のレビュー

あらすじ

小樽での子守奉公で初めて都会の暮らしに触れたとわは知床に戻り、森のなかでアイヌの青年と偶然再会する。しかし彼への恋心は胸に秘めたまま嫁ぎ、母となる。やがて戦争の足音が……。まだ遠くない時代に、厳しくも美しい自然とともに生きてきた人の営みを鮮烈に描き出した感動巨編。中央公論文芸賞受賞。(講談社文庫)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

「ニサッタニサッタ」の前日譚。エエ味出してたあのとわさんが主人公。

大正から戦前戦中戦後といえば、戦争で悲惨なことになったとはいえ、文明国家だと思っていたの本。俺らの祖父祖母の時代だから地続きの世界と思っていたが、北海道開拓史においてはl、こうまで俺の知らない過酷な世界だったとは。

それにしても、主人公とわ、そしてその母親のたくましさ、しぶとさが素晴らしい。物語の中で何度も何度もしつこいくらいに悲惨な目にあう、とわさんや母親。それでも彼女らは生き延びること、子供や家族をなんとしてでも養うこと、それだけを念頭に「今日を生き延びる、今日をやり過ごす」ことに集中する。そして何度も何度も地べたを這い、泥水をすするような事態にあっても、生き延びてゆく。その描写のすさまじさに眉間にしわが寄るのを止められない。そしてなぜか、とても大きな勇気をもらえる。

彼女らの境遇からすれば、俺なんてまだまだ生きていけるし食えてるし眠れてるし逃げ場もたんまりあるじゃないか。もっともっとあがけるじゃないか。

できれば、お国を運営している連中に読んでもらいたい。連中の舵の取り方、羅針盤の見方一つで、どれだけの尊い命が無駄にされていくか。しかと心に焼き付けてほしい。
とわさんのお兄さんはじめ戦争で散っていった命一つ一つをないがしろにするつもりは一切ない、だが国の舵を握った連中が間違った航路を進めば尊い命が無駄死と化すのだということを、俺たちもしかと覚えておきたい。

「お国のいうことは信じちゃなんめえ」
パヨクるつもりはないが、作中に出てくるこの言葉の重み、きっちり感じておこう。

それにしても、男連中の情けなさ…父親、義父、亭主、孫(これはニサッタニサッタの方)、まさかの三吉までもが実になさけないダメ人間。
俺もその仲間かもしれないなぁ。老い先も短い人生とはいえ、もうちょっと生きるしたたかさを持つようにしたい

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2018年08月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

とわは12歳で小樽で洋品、雑貨、小物を卸す大きな商家の子守として奉公に出されるが、商売が傾き、16の時、実家に帰される。とわは三吉への思いを秘め、親の勧めるままに結婚するが、戦争に向かう不穏な時代が始まる。
アイヌの青年三吉との淡い恋と、その後の再会には胸がつぶれそうになる。これが現実。でも、三吉と結ばれていたとしても、幸せであったとは限らない。

戦争が、いかに人々の人生を翻弄してきたか、それに加えて北海道の自然の厳しさ。ときに自然は人々に恵みを与えてくれた。それを使って生きる術を教えてくれたのは、アイヌの人々だった。「地の果て」での暮らしは、人々が支え合わなければ生きて行けない、極限の環境であった。

とわはどのような試練にあっても、「生きなければならない」という計り知れぬ強さを持ち続けていた。子どものために、家族のためにと、こんなにも強くなれたのは、母つね、兄直人のおもいがあったからだろう。

「ニサッタ、ニサッタ」は、とわの孫にあたる青年の物語であるらしい。現代に至っても、男たちは女の強さに敵わないようだ。現在、北海道は豊かにみえる。私には、その影に人生に敗れていった多くの開拓移民の姿が見え隠れする。

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2018年07月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

自由をかなり制約され、生きるために生活するとわがとてももどかしく、せつない気分になった。

それと、この物語に出てくる男はなんでこんなにダメなの・・・。

全編をとおしてセリフが方言。おそらく、かなり忠実に方言を再現したのだろうと思う。
だけど、五十音で方言を表現するのって無理がある。方言は好きなんだけど、かなりセリフが読みにくく、文字から単語、単語から文章に変換してからセリフを読まなくてはならなかった。テンポよく読み進めることができなくて、それが残念。

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2013年09月11日

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