あらすじ
40億年前にDNAが誕生し、ニューロンが発生して脳になり、やがて人間の脳が言語を発明する……生命の壮大な歴史を、AIの最新の研究成果と比較しながら辿り直し、5つのブレイクスルーが知性を発展させてきたことを解き明かす。そして今、「第6のブレイクスルー」が目前に迫る――。異能のAI起業家が到達した「必然的ビジョン」。
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Posted by ブクログ
知性について、脳機能の生物的発展とAIの発展とを比較しながら記述。
まず生命が生まれ、生き残るためにエネルギーのある方向に向かう能力ができ進化した。この〇×を予測する体内化学物質がドーパミンで、これに引っ張られる。ここに時間の疑念ができて大脳基底核で指示を調整する。
脳内でシミュレーションができるようになってきたのは脊椎動物と思われる。霊長類では、心の理論が生まれている。人間は言語を生むことで、心の理論と泡さて、社会的、時間的な進化を続けることができるようになった。そして今aiの時代を迎えて、能力の制限が取っ払われて、進化する時代になった。超知能がその答えか、あるいはそれもどのようなものであるかはわからないが、価値に重きを人間としては置かないといけないだろう。
Posted by ブクログ
原題は「知性の歴史」であり、知性がどのように進化し、AIの進化とどう関連していくかを統合した本。AIについて考察するのに有意義な視点を得られる。また、脳の進化についてもわかりやすく整理されている。
脳の進化について、これまで以下の5つのブレイクスルーがあり、今6つめのブレイクスルーが起こりつつあるとしている。
ブレイクスルー1:操縦(左右相称動物)
ブレイクスルー2:強化(脊椎動物)
ブレイクスルー3:シミュレーション(哺乳類)
ブレイクスルー4:メンタライジング(霊長類)
ブレイクスルー5:発話(ヒト)
(ブレイクスルー6については具体的な予想は行っていないが、人口超知能である可能性が高いと述べている)
それぞれの段階に対応したAIの概念(強化学習、生成モデル、…)も説明されており、AIについての理解を深めるうえでも有用だった。
【原題】
A BRIEF HISTORY OF INTELLIGENCE
【目次】
人間の脳の解剖学基礎
私たちの進化系統
はじめに
第一章 脳以前の世界
ブレイクスルー1
「操縦」
左右相称動物の登場
第二章 善悪の誕生
第三章 情動の起源
第四章 連合と予測、すなわち学習の夜明け
ブレイクスルー2
「強化」
脊椎動物の登場
第五章 カンブリア爆発
第六章 時間差分学習の進化
第七章 パターン認識という問題
第八章 なぜ生命は好奇心を持つようになったか
第九章 世界の最初のモデル
ブレイクスルー3
「シミュレーション」
哺乳類の登場
第十章 神経の暗黒時代
第十一章 生成モデルと新皮質の謎
第十二章 イマジナリウムの中のネズミたち
第十三章 モデルベース強化学習
第十四章 食器洗いロボットをつくる秘訣
ブレイクスルー4
「メンタライジング」
霊長類の登場
第十五章 政治的手腕という軍拡競争
第十六章 他者の心をモデル化する方法
第十七章 猿のハンマーと自動運転車
第十八章 ラットはなぜ食料品を買いに行けないのか
ブレイクスルー5
「発話」
人間の登場
第十九章 人間独自のものの探求
第二十章 脳の中の言語
第二十一章 パーフェクト・ストーム
第二十二章 ChatGPTと心への窓
[結論]ブレイクスルー6
謝辞
訳者あとがき
イラスト、写真、図版クレジット
参考文献
原註
用語集
Posted by ブクログ
良い意味で期待外れで、最高に面白かった。AIは知性と呼べるのか?みたいなところに興味を持って読み始めたところ、原初の動物の脳の話から始まり怪訝に感じたが、果たしてこの生物の進化の物語がすごく面白く興味深かった。
意識とは何か、感情って何なのか、すごく深遠な問いなのかと思いきや、まさか左右相称動物が自身の体を操縦するためのニューロンの働きが本質だったとは。もちろん一言で言い表せるような単純な話ではないが、ここから脳が始まり、強化学習やシミュレーションなどのブレイクスルーに至るストーリーは強力な納得感があった。
また、本書のいうとおりLLMは他社の感情をシミュレーションする人間の一番の特徴を欠いており、人間と同様の知性にはなりえないという指摘もなるほどで、今後はこれまでの5つのブレイクスルーを元にして超知能が出現するというのはあり得そうだなと思った。
著者が根っからの学者ではなくビジネスマンなのが驚きだが(知識量、勉強量的に)、だからこそ自分のような一般人が分かりやすい本になっており、最近読んだAI関連の本では間違いなくナンバーワンだった。2025年、最高の読書納めとなった。
Posted by ブクログ
【1:新皮質の基本構造と共通アルゴリズム】
・新皮質はどこを切り取っても「同じ6層構造のカラム」で構成されている。
・場所によって「入力(感覚)」か「出力(行動)」かの比重が異なるため、層の厚みに違いが出る。
・感覚野:入力層である第4層が発達。
・前頭葉:出力がメインのため第4層が縮小しているが、情報の処理回路自体は共通。
【2:生物の進化と時間差分(TD)予測】
・生物は脳内に「行為者(アクター)」と「批評者(クリティック)」を持つことで進化した。
・批評者が「将来の報酬(ドーパミン)」を時間差で予測し、行動を修正するモデル。
・この仕組みを応用したのが「TDバックギャモン」であり、自己対戦を通じて人間を超える戦略を自ら編み出した。
【3:現在のAIが直面している壁(チョークポイント)】
・現在のAIは統計的なパターン認識(生成モデル)で進化したが、「世界モデル」を構築できていない。
・脳は「基準枠(リファレンスフレーム)」の中に物体の構造や物理法則を配置して理解する。
・「動き(センサーの移動)」を伴う学習が欠けていることが、AIが真の知能に至るための課題となっている。
【4:古い脳と新しい脳の葛藤、社会構造】
・古い脳(本能):霊長類のルーツとして「階層構造(上下関係)」を求める。
・新しい脳(新皮質):教育や文化を通じて「平等」などの抽象的な概念モデルを構築する。
・学校教育で教える「平等」は、生物学的本能(不平等な階層構造)と矛盾する場合がある。
・幼児期に過酷な階層がない理由:階層を作るには「社会的な基準枠」を長期保存する高度な脳の成熟が必要なため。
【5:内的シミュレーションと教養の価値】
・顆粒前頭前野(gPFC)は、自分自身に関する内的シミュレーションを行っている。
・他者を理解する際、脳はこの「自己シミュレーション」を他者に投影して利用する。
・教養とは「視点の多さ」であり、それは「内的シミュレーションのバリエーションを増やすこと」に他ならない。
・多様な基準枠を持つことは、結果として他者理解の幅を広げること(理に叶った知性)に繋がる。
Posted by ブクログ
脳がどのように進化し、人やそれ以外の生物でどのような機能でどういう仕組みになっているか説明し、それがAIにどうつながるかについて、広深の知識で解説されていた
内容を全て理解できたとは思えないほどのボリュームであったが、得るものは多かった
Posted by ブクログ
生理学上の発見、それに基づく哲学的飛躍をベースにしたモデル。信用度はいかほどであろうか。
人間の脳の振る舞いを観察してなにがしかの挙動を見出したとする。正解など得られるはずもなく、推測にしか過ぎない。今後新たな発見なり発想が生まれれば、本書が典拠としている論説も更新されることだろう。かつて脳には情動を司る機能があるとされていたが、現在の知見では文化的に学習されたものが大半であると、本書が述べているように。
ポール・マクリーンの人間の脳に対する「三位一体」説は現在信用されなくなっているそうだが、2023年刊行の原著で取り沙汰されるからには50年くらいはそれが根拠ないし権威となっていた時代があったということ。学問は漸次進んでいくものだが、中には科学的とは言い難い論拠に基づくものがあり、そういうものに限って意味不明な権威をまとっていたりする。
フィクションとしてのAIには特に思うところはないが、研究課題としてのAIとは出会いが悪かったため、なにを聞いても疑いが先に立つ。
30年ほど前、AI研究を傍らで見ていたような立場の人間が当時思ったことは、計算機のパワーがなければ話にならないということだった。様々なモデルが提唱されていたが、計算資源が貧弱すぎて実証結果もそれなりのものにしかみえなかったからである。それから30年後の現在のAIを見れば、それは正しいように思える。計算機のパワーが道を開いた。
興味深いと感じたところ。
p.88 情動の分類は、大部分が文化的に学習されたものだと考えられている。
どうなんすかねってところ。
p.450 噂話の仮説。AI研究の根底にあるモデル構築は科学の皮をかぶった人文だと感じることを禁じ得ない。
まとめが記されたページ。最終章の末尾がよりまとまっている。
P.127 ブレイクスルー1のまとめ:操縦
P.208 ブレイクスルー2のまとめ:強化
P.310 ブレイクスルー3のまとめ:シミュレーション
P.386 ブレイクスルー4のまとめ:メンタライジング
P.479 ブレイクスルー5のまとめ:発話
どうでもいいことだが訳者あとがきがひかわ玲子みたいだなとか思った。