あらすじ
宋建国の英雄・楊業の死から2年。息子たちに再起の秋が訪れる。宋国と、北に位置する遼国は、燕雲十六州の支配をめぐって対立。かの地を手中に収めたい宋の帝は、楊業の息子で楊家の長・六郎に楊家軍再興を命ずる。かつて味方の裏切りに遭い、命を落とした父への思いを胸に秘め、立ち上がる楊家の男たち。六郎は、父が魂を込めて打った「吹毛剣」を佩き、戦場へ向かう。対するのは強権の女王・蕭太后率いる遼国の名将・石幻果。天稟の才を持つこの男は蕭太后の娘婿で、「吸葉剣」という名剣を佩いていた。その石幻果が父とも慕うのが、「白き狼」と怖れられる遼国一の猛将・耶律休哥。楊業を斃した男である。戦場で見えた六郎と石幻果。剣を交えた瞬間、天を呪いたくなるような悲劇が幕を開ける。軍閥・楊一族を描いて第38回吉川英治文学賞に輝いた『楊家将』の続編でありながら新展開。『水滸伝』『楊令伝』に登場する宝刀「吹毛剣」の前史がここにある。
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Posted by ブクログ
上巻とは思えないほどの重厚感と重さ。しかしあまりに切なさすぎる。北方謙三にとっては、記憶喪失というのは少し珍しい題材にも思う。
しかし、1人の人間が二つの人生を持ってしまうというのは、本来耐えることができないと思う。ましてや軍人。使命というものを幾多も抱えて生きていけるほど、人間は強くない。それはまさしく北方謙三の作品にたくさん教えてもらった。
下巻からはどうなるのか。とても楽しみです。
Posted by ブクログ
前作の戦うことばかりしか知らないギラギラした四郎も好きでしたが、今作での自分の居場所と役割や生き方を模索し成長していく四郎はもっと好きです。人間臭さがあっていい。四郎と幻果の間で揺れ動き死の淵まで行くけれども、家族に支えられて幻果として生きることを選ぶくだりも好きです。あの、四郎が…人との交流とは疎遠だった四郎が…( ;∀;)最後は悲しい展開にはなりますが、遼の父母や家族に囲まれて幸せに生きることが出来たことは四郎にとって、楊家にいるよりも素晴らしい人生だったと思います。いいお話でしす。
Posted by ブクログ
悲しいなぁ…本当に悲し過ぎる。
なんでこんな事になってしまったんだろう。
石幻果は、記憶を取り戻さないままの方が幸せだったかもしれない。
第二の人生を歩み始めた彼は、本当に生まれ変わったかのように見えた。
でも、身体には間違いなく偉大な父・楊業の血が流れている。
過去を取り戻した石幻果は、一体どんな選択をするんだろうか…
下巻を読むのがちょっとだけ怖い。
もちろん楊家贔屓だけど、耶律休哥は敵ながらどこか抗い難い魅力がある。
「水滸伝」で楊志から楊令の手に渡った吹毛剣はここからきたのかと
思わず嬉しくなってしまうエピソードがありました。
Posted by ブクログ
前作で耶律休哥が捕らえた宋の将軍は記憶喪失となり、石幻果という名前を与えられ、お姫様と結ばれ子をなし、かなり順風満帆な生活を送っていた。自分は何者だったのかはどうでもよく、今を一生懸命生きている。かたや父親楊業をはじめ、兄弟たちを多く失った楊家六男、七男は各地に散った仲間たちや末っ子九妹を集め再建を始める。耶律休哥軍と度々相見える楊家軍は「石幻果って兄貴じゃね?」となる。その後も度々戦い、石幻果の兜が飛ぶくらいの攻撃をくらった時に全てを思い出しちゃった。塞ぎ込む石幻果改め四男。五男は相変わらず行方不明。
Posted by ブクログ
先に楊令伝を呼んでいたので、その展開と近いものを感じて興奮と若干興ざめした。
楊家の悲しい運命に心が打たれる。
楊家将では、あれだけまとまっていた楊家がなぜと思わざるを得ない。
ただ、それは内紛というものではなく生きざまがそうさせている分、あがらいようがなく悲しい。
楊家将との違いとして、楊家の登場人物が絞られ、話がよりシンプルになっている。そして、四郎と六郎がどう成長していくのか、引き込まれる。
楊令伝でもそうだったが、吹毛剣は鋭く悲しい。