【感想・ネタバレ】地図と拳 上のレビュー

あらすじ

日本からの密偵に通訳として帯同した細川。ロシアの鉄道網拡大のために派遣された神父クラスニコフ。桃源郷の噂に騙されて移住した孫悟空。地図に描かれた存在しないはずの島を探し、海を渡った須野。日露戦争前夜、満洲の名もなき都市に呼び寄せられた人々は、「燃える土」をめぐり殺戮の半世紀を生きる。広大な白紙の地図を握りしめ、彼らがそこに思い描いた夢とは・・・・・・。第13回山田風太郎賞受賞作。第168回直木三十五賞受賞作。

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Posted by ブクログ

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上巻は下巻のための下拵えという感じ。主に満州を舞台に日露戦争前後の日本人やロシア人や現地人の登場人物が揃えられたという感じ。タイトルの地図と拳を思わせる地図や暴力・戦争の話が出てきたがこれからどうなっていくんだろう。細川は今後どう動き、須野や明男はどう巻き込まれていくんだろうか

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2026年03月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

上下まとめて。

本当に小川哲氏は小説家として懐が深い、守備範囲が広い。
次々と繰り出される引き出しからはいつも違うものが飛び出してくる。
本書では、旧満州を舞台に太平洋戦争をまたぐ半世紀を等身大の視座で描ききり、いわば直球の真っ向勝負。
物語の骨格を形成するような基準や軸がいくつか現れるが、いずれも本筋を貫く大黒柱というものではなく、あるいは散漫であるという印象を受けながらも、容貌をゆるりと変えながら連綿と続く、ある意味でクロニクルらしいトーンに仕上がっているという見方もできる。
それらの中でも、"予測"が、最も強く印象に残るキーワードか。
戦時下という、剥き出しのアイデンティティが曝露される状況で示される各キャラクターの生き様に、否応なしにすべての読者は沈思し黙考を強いられることだろう。

「はたしてそれは勇敢ゆえの行動だろうか。それとも臆病さのせいだろうか。」
「都市という衣を引き剥がした、仙桃城の本当の姿が写しだされているように感じたからである。」
「『アカシアだけではない。この世界の「自然」は本当に素晴らしい建築だ』」
「人体の設計者が神であるというならば、神が大学で建築学を履修していないことは確実である。」
「『国家も建築だ。ゆえに、国家の図面を引くのも建築家の仕事なんだ』」

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2026年08月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

1889年。時代は日露戦争
支那人(中国人)と日本人の高木、細川がロシアへの侵入捜査を開始する。
ハルビンへ茶商人として到着する。
ハルビンに到着するないなや、身体検査があるとのことで、先に銃は海へ投げ捨てたが、短刀は自害する為に、軍人としての誇りの為、捨てる事ができなかた。
案の定、見つかってしまい覚悟した所、細川が私の物ですと、罪を被った。なぜ、暫く独房にいれられて、
自害でもしようかと思ったところ、細川が短刀をもって無事に戻って来た。
1901年。満州に線路設計を作るため、派遣されたドイツ人の、クラスニコフ
通訳の林と共に中国を回る。中国では人身売買が行われており、クラスニコフらは、捕まってしまう。
そんななか支那人共のいざこざにより、脱出成功するが、倒れていた支那人に、対しクラスニコフは、見捨てる事が、できず助ける。、
楊日鋼は神=善、拳=悪という教えの中から
神の拳によって、切り開かなければならない事があると「神拳会」に入門する。数々の挫折者が出る中、楊日鋼は鋼の精神、体を手にする。
周天佑は、16歳の時に母を亡くし、父と北京に赴いた。父は豆腐屋だったが、まったく売れず、殆ど腐らせていた。また周も県試の試験に何度も落ちていた。
ふとした事で父と喧嘩になり、謝って殺してしまう。
そして、東北に逃げ込み、説話人として金銭を集めた。そして、説話人として、話題になった。そんなある日、リージャンジェンという、集落にリーダーガンという元役人の家がある事を知った。周はリーダーガンに、なりきった。そこへヤンリーガンが、現われ、
周が記録していた手帳を見つけ、周が偽物を突き詰める。そこで、周は亡くなり、ヘヤンリーガンは名前を捨て、孫悟空として生きていく事になった。
1905年。高木はロシア軍との戦いの先頭に立っていた。弾不足により、銃剣などで戦う事になり、最後は、西洋戦争で父から譲り受けた短刀をつかって絶命した。福田の弟もその戦争によりなくなったと思ったが、戦死者の記録間違いにより、生きていたことが判明。たまたま、細川との出会いもあり、高木はやはり勇敢だったのだと悟った。
1909年。気象学者の須野の元に、満鉄の新井から黄海にある青龍島が実在するか調べて欲しいと依頼があった。地理も船も専門外であったが半年かけて何百頁にも渡り、青龍島がないという事実に辿り着いた。
新井から、なぜ存在しない島が地図に描かれているか調べてほしいという依頼が追加された。
暫くして、須野の所に1人の男がやってきた。細川だった。事情を聞くと、新井が須野に支払われるべき賃金を着服しており、且つ、調査の必要の無い依頼を追加し、長引かせていたのだという。
須野自信は、お金のことよりも、青龍島が何故、描かれたのか を断念する事のが辛かった。
細井は事情を察し、個人的に賃金を払うから、調査を続けて欲しいと約束を果たすのであった。
調査を続けている後、細川の紹介で慶子と出会う。彼女は高木の元奥さんであり未亡人であった。
細川のプッシュもあり、須野は、慶子と結婚でき、息子 明男も誕生した。
満州の調査の為、単身赴任を続けた。
1923年。明男も11歳となり須野や血のつながりのない高木に似ている所が多々あった。
特に慶子は、高木家の短刀に興味を示した時は、必死に止めた。代わりに、懐中時計を渡した。明男は、時間に興味を示し、最終的には、時計なしで時間を計れるようになった。
あまりにも熱中するので、懐中時計を没収し、温度計を渡した。今度は、火事の中に入っていく程、温度計に熱中してしまった。
1932年。林は60歳過ぎ。仙桃城で仕事を終え、鶏冠山の中腹にあるヨハネ教会へ向かっていた。
教会に男2人女1人おり、日本人の為に働かせられていた。そこで、日本人を仙桃城から追い出す為、選炭場を燃やし、炭鉱を、機能させなくする事を計画した。
女性の孫チョンリンが3人の、中では1番切れ者のようだ。それぞれ役割を決め(炭に重油を染み込ます者、炭を投げ込む者、足止めをする者)準備にかかる。
恨みのある日本人の、中には炭鉱に多額の投資をしている孫悟空も、含まれる。チョンリンは孫悟空の子であったが心底嫌っていた。
明男は、仙桃城にダンスホールができたの事で、笠岡教授と石本、満鉄の村越と気乗りしないまま行く事になった。
途中で帰ろうとした明男は村越に捕まり、いいから踊ってみろとホール1番の美女 チョリンと踊る事になる。そこでチョリンもこういう所は軽視しており、一緒に脱出する事にした。たまたまであるが、2人とも宿は鶏冠山ホテルだった。
チョリンの出生については、
「911字文」と名付けられた掛け軸に記載がある。孫悟空は文学に熱心だっが、満州の実質統治者の張から、子供に習わすべきだと言われたが、子供がいないと返答した。張は、ならば作れば良いとなり、
既婚者、妊娠者関係なく、孫と関係を持つ事になった。実際出来た子供たちは、数とは違ったが、
「百八星」と言われ、108番目の子がチョリンなのだ。
(実際は、孫と関係を持つ前に、妊娠中であった為、孫の子供ではない)
いざ炭鉱の火災の時。順当に準備通り進めていたが、炭の格納庫には頑丈に鍵がかかっており、2階窓を小石で割り、火炎瓶を投げ込む策にでた。林の投げた火炎瓶が窓枠に当たり、同志に当たった。そこで策は中止となった。日本人の死者は4人となったが、新聞では20人と報道された。
それから、半年後。
安井は、陳を使って、実行犯の林を捕まえた。そこで、チョリンの居場所を聞き出し、林と陳を捕まえて、
警察送りはせず、射撃場行き(訓練で人に当てない為の実践)となった。
安井は、鶏冠山を女子供構わず焼き払った事を、長江時代文明と重なった。何も痕跡が残っていないのだ。
鶏冠山集落の文明も同様に焼き払う事を決めた。
チョリンは炭鉱を燃やす事に失敗し、炭鉱が直ぐに元通り稼働し、更には孫悟空の会社、東亜光司が復旧をうけた事により、儲けた。チョリンは、日本人が偽満州を作り、孫悟空を悪に染め、日本人が悪の根源と思うようになった。そこで、東亜光司から、爆薬を盗み、満州鉄道を爆破する事を思いついた。
尋ねた、クラスニコフはチョリンを説得するが、拒否する。また、林がいないか確認した。
林は日本人は日本人に捕まっていたが、偽の合言葉により、チョリンの逃す。逃亡先の東亜光司で孫悟空で出会してしまっが、殺すことも、自爆する事も叶わず、
孫悟空に爆薬はくれてやる故に、線路でも爆破するがよいと言葉を受けた。
一方、細川は、満州鉄道を退社し、戦争構造学なる物を進めると、須野に説明した。須野自身は満州鉄道に残り、新所長横山の下で、不服ながら、業務に就く事になった。

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2026年08月14日

Posted by ブクログ

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地図と拳(上巻)は、一つの都市を舞台に、人間の理想と暴力、知性と欲望が交錯するさまを壮大なスケールで描き出した、まさに圧巻の歴史群像劇である。

物語は、まだ何ものでもない「土地」に、人が線を引き、名を与え、意味を刻みつけていく過程を丁寧に追っていく。地図とは本来、世界を理解するための道具のはずだ。しかし本作では、その地図がやがて支配や野望の象徴へと変質していく。理性の結晶であるはずの“地図”と、衝動や暴力の象徴である“拳”。その対比が、時代のうねりの中で否応なく絡み合っていく構図が胸を深く打つ。

登場人物たちは誰もが単純な善悪では割り切れない。彼らはそれぞれの正義と信念を抱きながらも、時代という巨大な奔流に飲み込まれていく。その姿はあまりにも人間的であり、だからこそ痛ましく、そして愛おしい。理想を掲げることの気高さと、その理想が現実に踏みにじられる残酷さ。その両方を真正面から描き切る筆致は、静かでありながら凄まじい熱量を帯びている。

上巻は、いわば大河の源流である。物語は緩やかに、しかし確実に流れを広げながら、やがて避けがたい衝突へと向かっていく予感を孕む。読み進めるほどに、土地の匂い、空気の乾き、時代の緊張が立ち上がり、単なる傍観者ではいられなくなる。歴史とは、抽象的な出来事の羅列ではなく、名もなき個人の選択と葛藤の積み重ねなのだという事実を、本作は力強く突きつけてくる。

重厚でありながら決して観念的に沈まない。知的でありながら血の通った物語として読者を揺さぶる。その筆力は圧倒的で、上巻を閉じたとき、すでに次の展開を求めずにはいられない自分に気づくだろう。

壮大な歴史の中で、人は何を信じ、何を守ろうとするのか。
その問いを、雄弁かつ誠実に描き出した作品。

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2026年02月17日

Posted by ブクログ

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日露戦争前の満州を舞台にした出だしを読み始めたとき、こういう作品特有の読みにくさがなくて驚いた。
聞き覚えのない固有名詞が大量に出てくるため、どうしてもすらすら読むことはできないのだけど、必要以上の文章の堅苦しさがなく、作者の書いている映像が脳内にイメージできる。

ただし、読み始めたときは日本の軍人であることを隠して中国に渡った、密偵・髙木が主人公の話だと思ったが、彼は上巻の半分あたりでさっくりと戦死し、ロシア正教の伝道師であるクラスニコフ(隠された任務はロシアの満州における鉄道網拡大のために現地人を取り込むことである、元測量士)や、時の権力者に両親や家財の一切を奪われたため、強くあることを至上とする孫悟空などの群像劇だった。

シーン転換による視点の移動は、物語全体を立体的に把握するのに役立つが、把握そのものに手間取るという弊害もある。
その中で、序章で高木の通訳を務めた細川の存在が大きくなっていく。

物語がどこへ向かって、どこへ終着しようとしているかは、今のところまだわからない。
けれども、きっと大きな満足が得られるのではないかと予想しながら上巻を読み終えた。

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2026年01月12日

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