あらすじ
同じ軽音部の憧れの先輩に告白をしたり、悪友たちとダラダラ放課後を一緒に過ごしたり、双子の妹――小柴ニャオとリンと共に家族団らんの夜を過ごしたりする。そんな普通の日常を愛する高校生、言万心葉。
かけがえのない彼の日々に異変が起きる。別の世界の夢を見せる指輪、恐ろしい化物と銃で対峙した記憶、そして時折現れる、メイドの幽霊。
世界の真相を解き明かすため、幼馴染のグループ『シャチイーター』と共に怪現象の調査を始める。
「だってお兄ちゃんが、ニャオに優しくしてくれたから」
――彼を待つ、日常の残酷な真実とは。
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Posted by ブクログ
シリーズが積み重ねてきた「日常と終末の境界」を、これまで以上に静かで、しかし確かな重みをもって描き切った一冊だと感じられる。
派手な展開や過剰な説明に頼ることなく、登場人物たちの選択や沈黙、そして揺れる感情そのものが物語を前へ押し出していく構成は、シリーズ中でもとりわけ成熟した印象を受ける。
本作では、何気ない日常の描写が丁寧に積み重ねられる一方で、その背後に常に「終末」という避けがたい現実が影を落としている。その対比が鮮やかであるがゆえに、登場人物たちが守ろうとするものの尊さが、読者の胸に静かに沁み込んでくる。
とりわけ主人公の内面描写は深く、迷い、立ち止まり、それでもなお選び取る覚悟が、言葉少なに描かれることで一層の説得力を持って迫ってくる。
また、シリーズを通して築かれてきた世界観は本巻でさらに厚みを増し、「終末停滞」という概念そのものが、単なる設定ではなく、人間の生き方や時間の在り方を問い返す装置として機能している点が印象的だ。SF的な要素と感情のドラマが無理なく融合し、物語に独特の静謐さと緊張感を与えている。
大きな声で語られる物語ではない。
しかしだからこそ、読み終えたあとに残る余韻は深く、確かだ。
世界が終わるかもしれない状況の中で、それでも「今」を生きることの意味を問い続ける本作は、シリーズの一里塚として、そして一つの物語として、強い完成度を誇る一冊である。