【感想・ネタバレ】天国からの宅配便のレビュー

あらすじ

大切な人へ、あなたが最後に贈りたいものは何ですか? 依頼人の死後にしかるべき人の元へ遺品を送り届ける「天国宅配便」で働く七星律は、今日もバイクで配達先へ向かう。友人たちに先立たれた孤独な老女、祖母と喧嘩別れした女子高生、幼馴染みと結ばれなかった中年男、顧問の先生を喪った部活仲間……。会えなくなった人から届いた思いがけない小包みの中身とは? 言いそびれた言葉と伝えられなかった想いにきっと涙があふれる。今を生きる力が湧いてくる感動作、待望の文庫化!

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Posted by ブクログ


第1話から涙が止められない。
涙と感動が9割、あとの1割は爽やかさ。依頼人からの贈り物を貰い、受取人が今までの生き方を見つめ直すのが良き!小さなお家とかくれんぼの話がお気に入り。配達人の七星律も魅力的。続編も読まねば!

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2025年10月15日

Posted by ブクログ

天国宅配便シリーズの第1作目。
読むのが最後になってしまいましたが、やっぱり好きなシリーズでした。

・私たちの小さなお家:ゴミ屋敷に住む75歳の夕子について
・オセロの女王:地方で家を守って生きてきた八重と東京に憧れる孫の文香、「やってみろ」という言葉の持つ意味
・午後十時のかくれんぼ:かくれんぼが好きな幼馴染のこと
・最後の課外授業:サイエンス部の5人に顧問の真田先生から贈られたものは…
・エピローグ:七星と母親のこと

今回もどれも好きだなと思って読みすすめましたが、特に良かったのかサイエンス部のお話とオセロの女王。

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2025年09月01日

Posted by ブクログ

 亡くなった人と残された人を贈り物で繋ぐ、あたたかい物語でした。

 ある日届けられた宅配便は、心当たりなど何もない『天国宅配便』なる運送会社のものだった。差出人は、既に亡くなってしまった人。依頼人が生前、亡くなってから届けてほしいと依頼した遺品をしかるべき時期に届けるサービスが『天国宅配便』だという。受け取った相手の反応は様々。共に生活していた友人たちに先立たれた老女、祖母と喧嘩別れした女子高生、かくれんぼの得意な幼馴染を見つけられなかった男性、つながりなどなかったはずの高校時代の顧問から謎の手紙が届いた元部活の同級生たち。生前伝えられなかった想いが、届かなかった言葉が、時間を経て宅配便の形で彼ら、彼女らにようやく届く。

 今回、このタイトルを選んだのは直前に読んでいた『ラストラン』が思いの外幽霊の強いお話だったので、『天国からの宅配便』ということなら天使か何かのようなキャラクターが死後の世界から何かを宅配便で届けていくような話なのではないか、とタイトルから想像したからでした。それなら幽霊繋がりになるかもしれないからこの話にしようか、と。
 第一章を読んで、その予想は外れていたことはすぐにわかりました。それよりももっとずっと、強い想いを感じるお話でした。
 宅配便を受け取った時、送った差出人は既に亡くなっている。一方通行になるだけの贈り物のはずなのに、その贈り物はどれも、生前の誰かの想いが強く残って、相手の心に深く潜り込む力がある。そんなことを感じさせる贈り物の数々。そこに至るまでの登場人物の背景を丁寧に書いてくれているため、その贈り物を受け取った人が、その贈り物に何を見てどんなことを感じているのか感情移入がしやすく、何度も泣きそうになりながら読みました。
 どのお話もとても素敵で、素晴らしい話だったと思います。特に印象に残っているのは祖母と女子高生のお話と、高校の部活顧問と部活メンバーのお話です。
 私がもし、亡くなった大切な誰かから『天国宅配便』を受け取ることができたなら、一体何を思うだろう、と考えると同時に、私がもし亡くなった後に誰かに何かを送ることができるなら、なにを渡したいと思うだろう、とも考えてしまいます。
 今この現代に、『天国宅配便』なんてサービスはないだろうし、そもそも死を予期して何かを準備しておく間もなく死んでしまうかもしれない人生です。死んだ後に何かを用意する前に、生きているうちに、後悔のないように何かを伝えられる人でありたいと思います。

 とても心温まる、優しい物語でした。

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2024年12月12日

Posted by ブクログ

「午後10時のかくれんぼ」、オーディブルで聞いていたのですが、車の中で大泣きしました。そんな結末、予想もしませんでした。
 本の題名から泣けるお話ということは、予想できましたが、正に著者の狙いにハマってしまいました。

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2024年12月06日

Posted by ブクログ

感動(T ^ T)
届け物を依頼人の死後届ける。
それは、大切な人を残して亡くなる人とその後生きる人を繋ぐ届け物。
亡くなった人とは再び会えないが荷物を通して伝わる思いがある。それがこれからを生きる残された人にとっての大きな糧になる。

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2024年07月21日

Posted by ブクログ

亡くなったひとからの宅配便。贈り物は色々あり、込められた思いもそれぞれでした。 生きている人からの贈り物は想像できるけど、亡くなったひとからの贈り物は想像できないので、楽しく読めました。。読み終わりは、自分なら何を贈るか、なども考えてしまいます。

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2024年05月26日

Posted by ブクログ

亡くなった人から、天国宅配便で贈り物が届く4つの物語。

自分の事を想って、最期に手紙や贈り物を届くように依頼してくれているだけで嬉しくて泣いてしまいそうです。
すごく愛を感じる物語でした。

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2025年05月03日

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午後10時のかくれんぼ、に、見えない優しさを感じます。星の王子さまの名言、大切なことは見えない、というのが思い出されます。

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2025年04月28日

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心がホッとする。
残された人にとって素敵なシステム。
だけど、そんな風に 事前に準備できるなんてこと そうそうないと思う。
だからこそ、生きてる間に伝えたい事や成したい事は しておくべきだと。
いつどんな形で、突然亡くなってしまうかなんて わからないから。
いつも、このようなストーリーを読むと思う事なんだけど なかなか私は大切に生きる事ができない。
ダメダメです。

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2025年04月06日

Posted by ブクログ

4話とエピローグからなる短編集。
1〜3話は、ありきたりの話だなと思いつつ読んでいたが、4話だけは違った。
登場する5人のキャラが、短編の短い中でうまく描かれていて、ラストの5人が集まる所から後は、すごく心を動かされた。この4話だけで長編にすれば良かったのにと思った。

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2024年11月27日

Posted by ブクログ

天国から贈るよりも、生きてる間に贈りたいと思った。大切な人とのやり取りは、生きてる間にやりたいなぁ。

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2024年10月30日

Posted by ブクログ

私のフォロワーをして下さっている方はご承知かもしれませんが、私は今年の4月に父さんを亡くしました。
タイトルに引き込まれて、読みました。
私は短編は苦手ですが、一本のテーマが流れているので、読みきれました!
特に第3話がお気に入りです。
しかもこの本、シリーズみたいですね。
そちらも読んでみたいです

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2024年10月26日

Posted by ブクログ

あなたは『宅配便』を受け取ったことがあるでしょうか?

この問いに”いいえ”と答える人はいないでしょう。国土交通省の資料によると2022年度の『宅配便』の取り扱い件数は実に50億588万個だったと言いますから驚きです。年々過去最高を更新していくというその数値は私たちの生活が『宅配便』なしではもはや成り立たないことを示してもいます。

かく言う私も『宅配便』を受け取らない一週間はないというくらいに『宅配便』を利用しています。最も多いのはネット上で購入した商品の受け取りです。身近にあるスーパーやドラッグストアでは売っていない品々も簡単に入手することのできる便利さは一度憶えるとやめられなくもなっていきます。ついつい無駄遣い…そんなことのないようにしないといけませんね。

では、あなたは『宅配便』の差し出し人を意識することはあるでしょうか?もしそれが亡くなった知人だったとしたらどうするでしょうか?

さてここに、そんな『宅配便』の配達人が主人公たちに『遺品』を届ける様を描く物語があります。四つの短編それぞれにさまざまな『遺品』が届けられていくのを見るこの作品。そんな『遺品』が持つ重さを思うこの作品。そしてそれは、まさかの「天国からの宅配便」を受け取った人たちを描く物語です。

『定位置は、長椅子の上だった』と、一日を『硬い板の上に寝転び、ただうつろに天井を眺めている』のは主人公の新垣夕子(あらがき ゆうこ)。『足の踏み場もない』中に『体を伸ばせるのが長椅子の上くらいしかない』という部屋は『積まれたゴミ袋からは、割り箸がつきでており、何かのチラシやぼろ布、菓子パンの空袋が透けてい』ます。『この前のゴミの日にも、生ゴミをまた出し忘れた』という『部屋のよどんだ空気は、七十五歳の総白髪にも、カサカサした乾燥した肌にも、深くしみついていることだろう』と思う夕子。そんな中、『足音がして、家の前でピタリと止まった』のに気づいた夕子は『薄汚れたカーテン越しに、外を眺め』『頭痛の種のあいつだと知って、顔をしかめ』ます。『手には何やら包みを持って』『いつもの通り丸顔に丸い眼鏡に丸い目でニコニコしている』のは『民生委員の沖野』でした。『こんにちは。新垣さーん』、『アップルパイを焼いたんです…一緒にいかがですか』とモニター越しに語りかけてくる沖野。『こちらがどんなに拒否しようとも、おせっかい善意ばあちゃんの沖野はへこたれない』と『ピンポン、ピンポンと呼び鈴をずっと鳴らし続けられるのもうんざり』という夕子はやむなく扉を開けました。『もう構わないでください。このゴミを何とかしろって言うんでしょ。いつかやりますから、気が向いたら』と言う夕子に『文句を言いに来たんじゃないんですよ。新垣さんが、三人暮らしから急におひとりになって、何かこう、がっくりと、気落ちするのもわかるんです』と語る沖野は『ケアマネージャーさんとも相談して、例えばどこかで新垣さんが昼間のんびり、ご飯を食べたりしてくつろいでいる間に、区から派遣された掃除の業者が ー』と続けようとしますが『いりません』とそれを封じる夕子。さらに続けようとする沖野に『なぜだか猛烈に腹が立ってきた』夕子は『帰ってください…もう来なくていいから!』とドアを閉めます。しかし、『これどうぞ。アップルパイ、後で食べてくださいね』という包みはやむなく受け取った夕子。『もう誰もこの家に来なくていい。心から』と思う夕子は『定位置である長椅子の上で、元のように身体を横たえ』『じっと天井を眺め』ます。『あのふたりがわたしを置いて行って、もう一年近くが経とうとしていた。ずっとふたりに訊きたかったことがあったのだが、もはやその問いは、この長椅子の上から、どこへも届かない』と思う夕子は『わたしたちは、本当の友達だったの。テンコちゃん、カナちゃん ー』と思います。そんな時、『ピンポンと、また音が』します。『もしや沖野が引き返してきたのかとうんざりしつつ』モニターを見るとそこには『知らない顔の女』が映っていました。『ショートカットに灰色の帽子をかぶり、制服を着て何やら荷物を持っていることから判断して、宅配便の配達なのだろう』と思う夕子は『天涯孤独』の自分に宅配便が届くはずがなく、『ひとり暮らしの老人を狙った、送りつけ詐欺か何かに違いない』と思います。注意して扉を開けると『すみません、こちら、新垣夕子さんのお宅でしょうか』と訊いてきた配達人は『”天国宅配便”です。お荷物のお届けに参りました』と続けます。『天国、宅配便?耳慣れない配達業者だ』と思う夕子は『いりません』と『そのまま扉を閉めようと』しますが『待ってください、このお荷物はですね ー』と慌てる配達人。『どうせ詐欺か何かでしょ!警察呼ぶわよっ!』と怒鳴る夕子に『でも、新垣さん。この荷物、明神さんと、渡部さんからのお届け物なんです』と言う配達人。『まさか、そんなはずは。本当にテンコちゃんと、カナちゃんから?』と思う夕子は『一瞬、すべての時間が止まったような気が』します。『見覚えのある筆跡』を見て、『ひざの力が抜け』た夕子の『顔を覆った手の間から、ぽたん、ぽたんと玄関に雫がこぼれ落ちてい』きます。そして、亡くなった親友からのまさかの『宅配便』を受け取った夕子のその後が描かれていきます…という最初の短編〈第一話 わたしたちの小さなお家〉。まさかの『天国宅配便』が一つの起点を作っていくこの作品の王道パターンを描き出した好編でした。

“友人に先立たれた孤独な老女、祖母と喧嘩別れした女子高生、幼馴染みと結ばれなかった中年男、顧問の先生を喪った部活仲間…。依頼人の死後に届けものをするサービス「天国宅配便」の配達人が贈る心温まる感動の物語、待望の文庫化!”と内容紹介にうたわれるこの作品。このレビュー執筆時点で続編となる2作目まで刊行されている柊サナカさんの代表作です。そんなこの作品を未読の方は「天国からの宅配便」という”いかにも”な書名の印象からファンタジーどっぷりな物語が展開していくと予想されるのではないかと思います。実のところ、私もこの本を読むまでそのようにしか想像できませんでした。しかし、読み始めて早々にその予想は大きく覆されます。はい、ここでハッキリ申し上げます。この作品は書名から想像されるようなファンタジー作品では全くありません。少し都合が良すぎるところはありますが、それでもギリギリあくまでリアル世界の中で展開する物語なのです。正直なところ、ファンタジーどっぷりな物語を読みたいと手にした私には、えっ?という思いがなかなか消えてくれませんでしたが、それは私の問題であって作品に罪はありません。ということで、これから読まれる方には、この作品はファンタジーではないということをまず理解いただいた上で手にしていただければと思います。

ではこの作品に登場する「天国からの宅配便」とはどのようなものなのかというご紹介からスタートしましょう。

 ● 『天国宅配便』について
  ・配達人は『七星律(ななほし りつ)』
  ・灰色の帽子。灰色の制服の胸には白い羽根のマーク
  ・運搬用の箱には、大きく「天国宅配便」とあり、シンボルマークなのか、向かい合った白い羽根が描かれている
  ・『わたくしども天国宅配便は、ご依頼人の遺品を、しかるべき方のところへお渡しするという仕事をしております』

いかがでしょうか?『天国宅配便』と聞いて、白い羽根の天使が舞い降りてくる…というイメージを想像された方は大はずれとなります。『白い羽根』がシンボルマークにはなっていますが、荷物を配達してくる配達人は七星律という女性です。上記した通り、『天国宅配便は、ご依頼人の遺品を』届けるという仕事をしています。『いろんな背景のお客さん』から生前預かった『遺品』となるものをその死後に指定された人の元へと届けるというのがその仕事の内容となっています。これでおおよそイメージがついたでしょうか?まあこれは、そもそも内容紹介に記されてもいることであって、天使が舞い降りてくるというようなイメージを勝手に抱いた私がどこまでいっても悪いのですが…(笑)。

さて、この作品は四つの短編と、その位置付けを超えた重さを持つ〈エピローグ〉が連作短編を構成しています。〈第一話〉の冒頭は上記でご紹介しましたので他の三つの短編を見てみましょう。

 ・〈第二話 オセロの女王〉: 『もしも自分が、都心で生まれてさえいれば』と『何千回と考え続けてきた』のは主人公の住井文香。『米が美味しい、野菜が美味しい…』という田舎暮らしの『文香が中学二年のとき『黒船』が来航しました。『東京からこの村にやって来た若いお嫁さん』の石光茜との出会い。『世界のアーティストを相手に仕事をしている』という茜と『仲良し』になった『文香の中で、新しい価値観が生まれ』ます。一方で、『長期出張に出ることが多くなり、次第に村には戻ってこなくなった』茜のことを村人は『逃げたんだ。やっぱりねえ』と噂しますが、『捨てられたのは、この土地の方だ』と思う文香。そんな文香は『必ず東京に行く。東京で大学生になってみせる』と決心しますが…。

 ・〈第三話 午後十時のかくれんぼ〉: 『いつも通り』『公園のベンチ』に座るのは主人公の巴山祐。そんな祐はビールを飲みながら『小学校の同級生だった』三木田真帆のことを思い出します。『真帆との遊びは決まって「かくれんぼ」だった』という祐は自身が鬼になると姿が『どこにも見えなくな』った真帆のことを思い出します。『その気配までもを、どうやってか消すことができる』という真帆は、『中学生になっても「かくれんぼやろう」と言い出』し、困る祐。そして、『別々の学校に進学した』にも関わらず、高校に入ってもそれは続きます。『かくれんぼ道に終わりはない』と笑う真帆。そんな中、『地元の高校生からするとわりと大きめのイベント』である『花火大会』が近づいてきます…。

 ・〈第四話 最後の課外授業〉: 『大学構内のコンビニで、せっせと自分のノートのコピーを取り続けてい』るのは主人公の長部彩香。『もうすぐ試験』という中、友人のためにコピーを差し出してきた彩香は『加点のない人間が上位グループに属すための、たったひとつの武器が、このノート』と思う中に『真面目にノートを取って』きました。そんなある日『「長部、彩香さんでしょうか?」と声をかけられ』ます。『天国宅配便の、七星律と申します』と語る女性は『真田光彦先生』からの手紙を持ってきたと語り『サイエンス部顧問の、真田光彦先生です』と補足された彩香は『高校三年のときに少しの間だけ入っていたサイエンス部の顧問で、理科の教師』のことを思い出します。病気で亡くなった真田の手紙には…。

三つの短編をご紹介しました。七星律が『遺品』を持って主人公の元に現れ、それが主人公にとって一つの起点を作り出していくという大きな展開こそ変わりませんが主人公が置かれた背景事情は大きく異なるのみならず、七星律の登場タイミングも一様ではないため、パターン化された物語を読むという感じでなく読んで行けるのがこの作品の大きな特徴です。上記した通り、この作品はファンタジーでなく、あくまでリアル世界の範疇で展開していきますが、なんと言っても『遺品』が登場することもあって、しんみりとした物語が展開していきます。ネタバレを避けるため冒頭に七星律が現れる二つの短編のみに触れますが、〈第一話〉では親しかった友人二人に先立たれた七十五歳の女性の物語が描かれていきます。すっかりゴミ屋敷の住人と成り果てた女性は、先立って二人の友人との間に何かしら確執があったこともうかがわせます。そんな女性が友人二人から受け取った『宅配便』とは?一方、〈第四話〉では、一人真面目に授業を受け、書き留めたノートをコピー代まで自腹で友人に提供することで自分の立ち位置を確保している彩香の物語が描かれます。この短編には他にも複数の人物が『遺品』を受け取っていきますが、そんな先に何が待ち受けているのか?なかなかに凝った展開を見せてくれます。号泣必至という作品ではありませんが、四つの短編+〈エピローグ〉には、まさしく「天国からの宅配便」という書名に相応しい優しい世界観の物語が描かれていました。

 『わたくしども天国宅配便は、ご依頼人の遺品を、しかるべき方のところへお渡しするということをしております』

結果論としての『遺品』ではなく、生前に『遺品』を託すという考え方の先に、遺された者に一つの起点を作っていくという考え方を提示するこの作品。そこには、まさしく「天国からの宅配便」という書名に相応しい物語が描かれていました。ファンタジーではないのに、ファンタジックな魅力を感じるこの作品。パターン化されない物語展開に柊さんの工夫を感じるこの作品。

“人生の終わりに、誰を想い、何を遺しますか?”という本の帯の問いかけに、ふと遠い目になってもしまう、そんな作品でした。

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2024年10月19日

Posted by ブクログ

依頼人の死後、思い出の品や手紙を届けたい人に届ける「天国宅配便」。
それらを受け取った人は、過去を悲しみ、受け入れ、前に進んでいく。
どの話も明るい結末なのがいい。
読んで温かい気持ちになった。

特に好きだった話は、「午後十時のかくれんぼ」と「最後の課外授業」。
「午後十時のかくれんぼ」は、切なくて、あっと驚く事実も判明する。泣ける。
「最後の課外授業」は、読み進めるうちにワクワクするそんな話だった。

続編も読みたい。

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2024年09月29日

Posted by ブクログ

依頼人の死後に依頼先へ指定の物をお届けする
その名も「天国宅配便」
全4編からなる短編小説

「天国宅配便」は素敵なサービスだが、出来ることなら亡くなる前に、私なら直接会って伝えたい。そして私にも生きている間に伝えて欲しいと強く感じた。

一方的な宅急便は、時として遺された者に後悔や自責の念を強く抱かせるだろう。
第二話と第三話は、その色が濃くて胸が苦しくなった。もっと亡くなる前に出来ることがあったんじゃないだろうか・・・

読み進める程に、この世に生きられる限られた時間の大切さや尊さを、読み手に訴えかけてくる。きっとこれが作者の意図する所なのだろう。
このシリーズは次作も出ている様なので、是非読んでみたいと思う。

柊サナカさんは初読みの作家さんだったが、どの話も全く趣が異なっていてしみじみと心に沁みる作品だった。私は特に第三話が好みだった。


以下、タイトルと簡単なレビュー

第一話 わたしたちの小さなお家
先に逝ってしまった二人の友人の優しい想いが優しく胸に響いた。遺されたユウちゃんは、残りの時間をゆっくり謳歌して二人の元に行って欲しいと思う。

第二話 オセロの女王
田舎育ちの文香の気持ちが手にとるように分かった。けれどこの歳になると自由に生きられなかった祖母の想いも分かる。切ないなぁ・・・

第三話 午後十時のかくれんぼ
これは号泣必至・・・四話の中で一番胸が苦しくなる。生きている内にやっぱり大切な人への想いは伝えようと思った。刻一刻と時は流れて、自分も相手もいつかは逝ってしまうのだから。

第四話 最後の課外授業
真田先生、実はしっかり生徒のこと見ていてくれたんだなぁと感激。当時のメンバーがなんやかんや再集結するプチ同窓会には同志のように心が弾んだ。

エピローグ
「天国宅配便」の配達人である七星律の裏話。
一話目から実は七星は幻なのでは?とか色々勘繰ってた私って・・・笑

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2024年08月29日

Posted by ブクログ

帯に書いてあるほど感動する というわけではなかったけれど、4話目とエピローグが自分には良かった。
1話目に関しては、ありがち…とか思ってしまったけれど(書けないくせにすみません)、最後まで読んで良かったと思えた。
星3.5くらいだと感じたけれど、四捨五入して星4。

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2024年08月08日

Posted by ブクログ

故人の生前の依頼で、遺品を配達する「天国宅配便」。
連作短編でありながらも、色々な切り口で描かれていて飽きずに楽しめた。
川の向こう側へ行ってしまった人には、もう会うことも話すこともできないけれど、遺してくれたほんの少しの言葉が、生きる糧になったりするのだなと。
特にエピローグは考えさせられる話だった。
1つ1つの短いお話の中でも、しっかりキャラクターが立っているのが魅力の1つかもしれない。

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2024年07月07日

Posted by ブクログ

本屋で平積みされていて手に取った作品。題名からファンタジーかと思っていたら全く違い、死を悟った人が生前に荷物や手紙をとある宅配会社に預けておいて、死後それを大切な人に届けてもらうというお話。
その遺品が残された人が生きることに前向きになれるものばかりで、依頼した故人の優しさが沁みます。
特に『午後十時のかくれんぼ』は切なくて優しい素敵なお話でした。

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2024年07月06日

Posted by ブクログ

タイトルに惹かれて手にした作品です。

依頼人の遺品をしかるべき方のところへお渡しする天国宅配便。

大切な人へ死後に、しかるべき人の元へ遺品を送り届ける。

第3話の午後十時のかくれんぼには、なんか切なすぎて、なんで気づいてやれなかったんだろうと思うばかりです。

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2024年06月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

想像していた話とは違い、現実感があり、すごくよかった。
じんわり目尻に涙がたまるような余韻があり、すぐに続編を読みたくなった。

全編通して上手に生きられない人達が、宅配便をきっかけに前に踏み出すことができるようになった。
どの話も心にしみたが、特に第4話の「最後の課外授業」が好きだ。
周りから少し外れている5人の生徒達に、先生から特大のプレゼントが届いた。
滞っていた人生が少しだけ開けたようで、明るい光があることに気づけたと思う。
もしかして、これから友達になれるのかな。想像すると、とても微笑ましい。

第3話の「かくれんぼ」は悲しかった。
最期まで、かくれんぼが上手だった。
歩くのも難しいのに、彼を心配して駆け寄った気持ちを思うと、胸が痛かった。
再生と引き換えるには、彼は大きなものを無くしてしまった。
その喪失感と一緒に生きていかなきゃならないなんてしんど過ぎると思ったけど、彼女の気持ちを知れたことが、生きる糧になるのかな。


2024/06/18 18:32

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2024年06月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

天国からの宅配便。
てっきり宅配人は、天国からの使者だとばかり…。
ではなかった。さらに、生前に依頼しているという現実感溢れる設定。

わたしたちの小さなお家
 仲良し女性3人の小さなお家にひとり残された時。本当の友人
オセロの女王
 田舎の家や家族を守る考え方、おばあちゃんと孫
午後十時のかくれん
 かくれんぼが得意でかくれんぼが大好きな幼馴染との思い出
最後の課外授業
 サイエンス部の部長に託された部員への手紙を渡す事。集合日時に其々に持ち寄るものが違う理由。
エピローグ
 配達人の過去と事務作業について。


どれもすぐに思い出せる程、心に残った内容だった。

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2024年05月26日

Posted by ブクログ

短編4話。
四つめの高校サイエンス部の同級生の話がよかった。仲良くはなかったはずなのに、同じひと時を過ごしているだけで、思い出はつながると感じた。
エピローグの七星の話もよかった。

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2025年07月28日

Posted by ブクログ

亡き人から届いた小包には 愛と希望がいっぱい_

天国配達便より贈り物が届く4つの物語



今まで旅立つ側より 残された者のほうが
辛いと思ってた…

でも旅立つ側も 同じように辛い気持ちの中で
生前に大切な人を想いながら…
文字にしたためて カタチに残るものを選んで…
小包にして 天国配達便
託してきたのかもしれない!



物語を通して
色んな立場の人の感情に触れるって
大切なことだな!

死と生について考えるきっかけになり
すごく愛を感じる短編ばかりでした

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2025年06月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

亡くなった人が指定した日に、指定した人に荷物を届ける天国宅配便。

最後の元サイエンス部を集める元顧問の話が一番好き。
それぞれの部員が当時抱えていた事情を知って、これから交流が生まれる…と読める流れではあるけど、全員で持ち寄る材料で行うことという謎解き要素があったこと、事情の開示がそれぞれのタイミングだったからか、読み進めたくなる展開だった。
お喋りな黒瀬がみんなに念押しするように、こっそり当日の集合をお願いしてたのもよかったな。

はじめの老女に届いた荷物についても、亡くなった「2人」に少し意外性があって、面白かった。2人との思い出を大切にしながらも、周りの人たちに気付いていけますように。

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2025年05月06日

Posted by ブクログ

超常的な力が働いて天国から荷物が届くのかと思ってたけど、ふつうの人が依頼者の生前に頼まれた物を届けてくれるふつうにあってもおかしくない設定の話だった。 その分どこかでこういうことがあったかもという気持ちで読むことができた。 間に合うならば生きているうちに伝えたほうがいいというエピローグの話が一番胸に迫ったかなぁ。

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2025年02月11日

Posted by ブクログ

心ほっこりする温かなお話ばかりです(*^^*)
シリーズ化しているようなので、 次も
楽しみです。

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2025年01月27日

Posted by ブクログ

依頼人が亡くなると、頼まれた品物をお届けする「天国宅配便」。

お気に入りは「午後十時のかくれんぼ」。

何故かどんな時でも隠れたがる幼馴染。
年々エスカレートしていくかくれんぼ。
彼女の茶目っ気に思わずにクスッと笑ってしまいました。
温かくも切ない2人の関係性と思いがけないラストが印象的でした。

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2024年11月29日

Posted by ブクログ

天国からの宅配便が届き、亡くなった人の思いが明らかになる。励みにる話もあるが、後悔や悲しみが深まる感じもする。

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2024年11月09日

Posted by ブクログ

天国からの宅配便。
依頼者が生前、天国からの宅配便サービスに配達をお願いしていたもの。
手紙だったり、思い出の品だったり。
大切な人の亡き後、天国からの宅配便が届いたら、それはそれは号泣するだろうなぁ。
そしてそれを大切に、これからを生きていくことができるかもしれない。

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2024年05月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 依頼人の死後に届けものをするサービス「天国宅配便」の配達人が贈る、心温まる感動の物語。
 もし、自分の余命が分かったら、誰に何を贈るだろう。

別に自分に贈り物が届いたわけでもないけれど、何か贈り物をもらえたそんなほっこりする作品。
誰かを思えるそんな人間関係を大事にしたいと思った。

話の順番も、この順番で読みやすく物語にすっと入ることができた。
「わたしたちの小さなお家」
老女へ(二人の親友からの贈り物)
独居老人のごみ屋敷問題など、世相をよく表していると思う。孤独をゴミで埋める。きっと二人の親友はこれからも歌を通じて最高の思い出を伝えてくれる。
カセットテープで歌声とメッセージを遺すというのは素敵ですね。
(今はスマホで動画だろうけど)

p.53
今日を生きる、誰かのために。
きっとこれからも宅配便は走っている。

孤独と思っていた老女にもう一度周りを見渡す希望があった。

「オセロの女王」
孫へ(最後まで諍いをしていたと思っていた祖母。贈りて手は祖母のオセロの対戦相手も含むと思う)
田舎の祖母のの意固地なまでの生き方、そしてそれをかえてくれたきっと今は亡きオセロの対戦相手。孫には二人からのエールになった。それはきっと文香のこれからの芯になっただろうな。農業と英語をミックスさせた将来へ目標を持ちつつある前向きな話。
「午後十時のかくれんぼ」
中年男性(初恋女性)
好きな男性のために、最後までかくれんぼして見守り続けた真帆さんの思いが切ない。きっと誰よりもそばにいたかっただろうし、花火大会の時には発症していたのでは?と思うとかくれんぼしてごまかした気持ちがとてもせつない。
でも、彼女のおかげで、いびつな夫婦関係から新しくやり直せる。
胸を張って生きていける。大丈夫、まだまだ頑張ろうと思えた。

p151
だから、ズルはしない。すぐにそっちへ行くなんてズルをしたら、もう口もきいてくれなくなるだろう。
かくれんぼの続きをしよう。いつか人生のその先で、真帆を見つけ出せるように。そのとき胸を張って「みーつけた」と言えるように。精一杯、自分の人生を生きる。

「最後の課外授業」
大学生(高校のサイエンス部顧問:謎解き・実験)
こんなに生徒のことを見ている先生はすてきだな。きっと体調が悪くなければもっとメンバーのために何かをして、在学時代から動こうとしてくれていたと思えた先生。
それぞれが前向きに変わることができた贈り物。

「エピローグ」
子ども(司書をしていた母からの本:配達員七星律の過去)
本を贈る親子もすてだし、七星さんの母との最後の喧嘩別れも切ない。
互いを思っているはずなのに掛け違えたことで思いを伝えられない、関係が絶たれるというのも切ない。
とりあえず休みの日は親と会話してみようかな。いつも仕事でいっぱいで電話もなかなかせずごめんなさい。

本当は宅配便を使用しなくてもいいのがすてきな生き方だけど、でもこんな素敵な宅配便があれば・・・と思ってしまった。大変な仕事だろうけれど。
シリーズがあるらしいので、読んでみたい。社長がなぜこの仕事をしようと思ったのかが描かれているといいな。
明日もまた一日がんばろう。

p.251
「白い羽のマークの帽子をかぶり、誰も知らない遠い川の向こうと、こちら側をつなぐ、最後の贈り物。
誰かの最後の思いを届けるために、今日も進もう。」

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2024年05月22日

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