あらすじ
この世には善とも悪とも呼べない、理解不能な神がいる。
毎年身体の一部が村に降ってくる神、不老不死の夢を見せる神、あらゆる事象の辻褄合わせをさせる神、一切の記録がなくただ信仰だけが残る神――。
理解もできず根本的な対処もできない、だが確かに日本各地で起こり、人々の平穏を脅かす現象は「領怪神犯」と呼ばれている。
公的機関として密かに存在する「領怪神犯特別調査課」に所属する片岸は、部下である女性調査員の宮木と、各地から報告される「領怪神犯」の調査と対処に当たっている。
奇怪で危険な様々な神による超常現象、時にはそれらの神を崇める危険な人間たちとも対峙しながら、片岸は調査を進めていく中で失踪した妻の痕跡を見つけ出そうとする。
だがそれは、「領怪神犯」のある恐ろしい真実に触れることにもつながっていき――?
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
これのノベライズを試し読みした瞬間「ど好みだーーー!」と即読んだ一冊。そして木古先生の面白さがたまらなくて本当に好み。
日常に怪異がある。謎の組織がそれを隠して調査してる。怪異が人間の理解を吹っ飛んでわからない。主人公がくたびれてる。タバコが似合いすぎる。雰囲気がじっとり暗い。人間がたまに怖い。しれっと主人公コンビが怪異に巻き込まれてるけど気づかなかったり気づいたり。怪異の造形が理解不能に奇怪。日常が日常じゃなくておかしい。
全部好みすぎて役満。私の趣味全開すぎてほんと好き。
章によっていろんな神様が出てくるのですが私は「ひとつずつ降りてくる神」が一巻では好きです。お前誰だよ。
Posted by ブクログ
面白かった!
解決はしない、ただ調査するだけ……だからこそ、それぞれの怪異の「こんなん解決できないわ無理無理」ってレベルの恐ろしさが浮き彫りになるというか。
個人的に人魚の村が一番ぞっとしたなぁ。悪意の煮凝り。
最後に世界観の背景が明かされたところで背筋ゾワッとした。
軽口かと思ってたセリフの意味合いも変わってくるの……本当に構成すごいなぁ!
Posted by ブクログ
「これは怪談なんだ」というのが1話を読み終えた際の感想。
各話はどれも40ページ前後の短い話だが、単純ではなく軽い捻りもある。体裁は現代風(?)だが、怪談としてちゃんとしているという印象を受けた。
主要登場人物達は特別な力があるわけでもなく、特殊な機関で怪現象をハントして回っているわけでもない。ただ怪異を観察・記録し、その途上で意表を突いたりスリリングな展開を含みながら、謎を残してエピソードが終わる。シーンのところどころに挟まれる何気ない描写も、どことなく気味の悪さを感じさせる細かさで、気のせいなのか伏線なのか(場合によっては読み終えても)わからない怪談特有の空気感がある。
各物語のゲストで主役でもある『神』も、日本古来の神の意味で使われ「強力な力を持った人智の外のモノたちの総称。人々に益をなすように、あるいは害をなさないように、危険だから祀るモノ」というニュアンスの存在である。極端に言ってしまえば妖怪やものの怪とそう変わらぬ存在であり物語の雰囲気とよくマッチしている。
明らかにフィクションであり、所々でファンタジックでもある創作怪談なのだが、そこらの実話形式の怪談よりよほど雰囲気もあって内容も面白い。いかにも怪談にありそうな場所(過去の風習が残る田舎、病院、廃校舎など)が舞台になるが描写も上手いし話も面白い。
短編が集まった怪談集との違いは、話が進むごとに物語の中の時間も進み、主人公らの背景も少しずつ明らかになっていくこと。以前扱った事件が引き合いに出されることもある。
基本的に片岸の目を通して物語が進行していくので、中盤くらいまでは相棒の宮木が怪異なのではないかと思うことが多々あった。”神の目線”で彼女の心理を知ることができないので「片岸が感じていることが真実なのかわからず怖い」という感覚がときどきあり、この怖さ(不信?)は、一話完結形式の個々の話を越えて、物語を通して累積していくものだった。それぞれの話の中での謎解きと、その裏で一貫して流れる主要登場人物の謎の2系統の焦点があり、平穏なシーンであっても別の緊張感もあって二重の楽しみ方ができた。
終盤に向かう頃には宮木を「別の時間軸や世界の人間なのか」や「神の干渉を受けない体質なのか」といった、人間だけど普通じゃないという印象に変わっていったが、それでも目的が不明なため敵か味方か分からない不信感は残り続けた。
2話についてだけだが、ちょっと気になった部分がある。序文と本文終盤での神の描写が全く同じだったことだ。
『ひと喰った神』の姿の概要から透ける内臓の様子まで序文と同じ文章では期待外れの気分になる。短い話なので文章自体を完全に覚えているし、敢えて同じ文言を載せる理由もないので、片岸の目前に神(と巫女)が現れる緊迫のシーンが今ひとつ盛り上がりきらない感じだった。序文以外は片岸の目線で物語が展開していくので、唐原目線の序文と全く同じ描写に違和感を覚えたのかもしれない。
同じような描写でも、当時少年で覚悟もなく神の姿を眺めた唐原よりも、その道の専門家、大人として観察した片岸の方が解像度が高かったり(逆に序文の描写の解像度を下げてもいい)、唐原の解釈が誤解だった部分を描けばこの違和感はなかったのかなと思った。
これ以降の話では序文の内容が本文の要約(= サマリー)のようなものから導入(= イントロダクション)へとかわり、証言もどこかズレているような狂っているような薄気味の悪い感じが出てくるようになって、片岸の主観で進む本編とは違うテイストで気味悪さを感じさせる役割を果たすようになった。
最後の2話はあまり好みではない展開だった。
片岸の妻の事は直接話してすらよくわからないままで、なぜ『知られずの神』のもとに来て、ずっとそこに留まっているのかがいまいちわからない。"よもつへぐさ"の故事もあるので異界の生活に馴染む事で現世に戻れなくなることには違和感はないが、来た理由も帰れない理由も納得できない感じでモヤモヤする。
『知られずの神』の世界は客観的には時間が止まっているように見えるので死ぬこともできず、しかし囚われた人たちの主観的には時間も記憶も蓄積していくので「これでは地獄ではないか」とも思った。引き込まれた片岸に人々が興味を示さないのも、すでに精神がすり切れているのではないかという気もしてその点も後味があまり良くない。
最後の話は取ってつけた打ち切りの最終話のようで、駆け足で浅いと感じた。宮木に全部の種明かしまで(こんなに雑に)させなくても良かったのではと思う。本書発行時にはまだ続編の話は固まっていなかったのだろうか。
ほとんどのタネ明かしをしてしまったので、宮木には「なぜ記憶を保持できているのか」という疑問点が残るが、片岸は背景が空っぽになってしまった。ゆるい繋がりを持った一話完結の話はどれも面白かったが、その根底に二人(と六原)の過去が明かされていくという隠し味があったので普通の怪談集とは異なった厚みがあった。ここからどうやって話を再び膨らませていくのかが作者の腕の見せ所だ。
デビュー作ということもあって2作目が楽しみなような、パワーダウンしてしまうのが怖いような気持ちで次作を購入した。
Posted by ブクログ
序盤は実話怪談や掲示板系の様な、全て解決せずに末端だけ判明する感じで凄い好きな単話怪談だった。個人的に人魚の話好き。 後半はしっかり解決したり、世界の真相だったり、しっかり締めにかかっていて小説って感じ。 普通に良作な章だと感じた。 エピローグの真相開示は、伏線自体はあったけど、それでも尚唐突感を感じてしまった。
Posted by ブクログ
あっ、解決しないのね?!
これが私の素直な感想でした。
話が進むにつれ、この解決しないモヤッと感が繰り返されて、ほんのちょっとだけ満足できないw
でも1冊終わるまでにはこのモヤッと感が楽しくなってくるから不思議。
無意識に「事件は解決するのが当たり前」と思いがちですが、良い意味で裏切られたなと。
事件を解決しないのはもしかして伏線??と想像したりして次巻が待ち遠しいです。