あらすじ
全ては「死者の日記」から始まった。これは“怪異”か、或いは“事件”か。
選考委員、激賞!令和初の大賞受賞作!
「恐怖と謎がしっかりと絡んでいる。ミステリ&ホラー大賞にふさわしい」――有栖川有栖氏
「謎への引きこみ方が見事。読了後は心地よい酩酊感に襲われました」――辻村深月氏
信州で暮らす久喜雄司に起きた二つの出来事。ひとつは久喜家代々の墓石が、何者かによって破壊されたこと。もうひとつは、死者の日記が届いたことだった。久喜家に届けられた日記は、太平洋戦争末期に戦死した雄司の大伯父・久喜貞市の遺品で、そこには異様なほどの生への執着が記されていた。そして日記が届いた日を境に、久喜家の周辺では不可解な出来事が起こり始める。貞市と共に従軍し戦後復員した藤村の家の消失、日記を発見した新聞記者の狂乱、雄司の祖父・保の失踪。さらに日記には、誰も書いた覚えのない文章が出現していた。「ヒクイドリヲクウ ビミナリ」雄司は妻の夕里子とともに超常現象に造詣のある北斗総一郎に頼ることにするが……。 ミステリ&ホラーが見事に融合した新鋭、衝撃のデビュー作。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
最初からどんどん引き込まれます。どこが現実で、
どれがこの人の幻想かとか…もう全く先を進むしかない…
火喰い鳥て本当に存在するのか‥も気になる。とか思いながら‥終わりました。
怖いし面白いし…
Posted by ブクログ
こーれはすごかった…
不思議な不思議な世界観から生まれたホラーミステリー。
結末もそういう展開になるのかと…
息を飲んだ、という表現がふさわしい、そんな話。
墓石の削りあとという、不可解な事件から始まり、戦時中に亡くなったと言われた大伯父の日記が発見され、そこから主人公や回りの人間に怪異が起こる。
場面展開が秀逸。
合間に挟まれる主人公の夢魔とか、最後の最後の数ページでぐるっと逆転するというか
物語の一つ一つのタイトルが日にちで、この一連の事件が真夏の8日で起こった出来ごとということで、濃密な話だな~と、感じた。
まさかまさか、最後怒涛に、ね
戦時中のパプアニューギニア占領中の生々しい感じの描写があって、本当に戦時中はこういう心境だったのかと、鮮明に想像できる文章力
頭の中に自然と場面場面がイメージされ、映像として想像しやすいのが自分的には読みやすい本なんかな
漢字読めないところとかところどころあるような文章だけど、すっ飛ばして読んでもサクサク読めちゃう
のめりこんで読んでしまった、そんな作品でした。
ホラーミステリーの大賞にふさわしい作品だ。本好きの人がこの作品をあげる理由がよくわかる、読んだらわかる。
Posted by ブクログ
あってたまるかこんな呪いが!と目を背けたくなるような怖いお話でした
ホラー小説なので説明のつかない超常現象が起きてるだけなのか?と思いつつミステリっぽい要素もあるのでこれって誰かの悪意によるものなのか?と疑いながら読みました。
そんなミステリの要素とホラーの要素がうまく掛け合わされている小説で面白かったです。
こうなりたいとかこうしたいという前向きな動機は行き過ぎるとある意味呪いに近いのものかもしれないですね
Posted by ブクログ
元々読みたいと思っていた小説だったが、積読チャンネルでオススメされていたので読んだ。
ドパガキでも読める小説と言われていたけど、本当に怒涛の展開で、2日で読み終わった。
戦死した貞市の日記を読むことで、次々と起こる怪異と不穏な展開。
貞市の日記だけでも、戦争の過酷さがすごく伝わってきて、どんよりする。
主人公の雄司が愛するものを守るために奮闘するんだけど、物語はどんどん悪い方向に……。
イヤミスと聞いていたけど、想像以上に嫌な終わり方だった。
作中では貞市の日記の結末が書き換えられてたけど、私は本作のラストを書き換えたくなったよ…笑
でも、よく考えたら、雄司視点だからバッドエンドだけど、チャコ視点だとハッピーエンドになるんだよな……。
誰かの幸せの裏には誰かの不幸があるっていう残酷さですね。
物語の途中、北斗が怪しい説が浮上するんだけど、「こういう場合、大抵は濡れ衣でミスリードなんでしょー?」と思ってたら、結局北斗が黒幕だった…。そういう裏切りかー。
執着の薄い雄司と、執着の強い貞市が対比として描かれていたけど、実は軽薄そうな北斗こそ夕里子への執着が強くて、結局、執着が強いものが勝つ、ということなんだろうか。
Posted by ブクログ
決して引き返せない不可逆的な変化により日常が侵食されていく恐怖。ページをめくるたびに積み重なる、後戻りできない絶望感と、人間 vs 怪奇現象という対立構造の中、人間の無力さを容赦なく突きつける作品だった。
物語の起点は、第二次大戦で戦死した祖父の兄・貞市の記録の発見にある。その古びた軍記がほどかれた瞬間から、日常の歯車が狂い始め、読者は得体の知れない奇妙な世界へと引きずり込まれる。
作中で主人公の夢に現れる、人を喰らうヒクイドリのグロテスクな描写は、単なる悪夢にとどまらない。現実世界で次々と発生する超常的な現象や、狂気へと呑み込まれていく世界のメタファーとして見事に機能している。
人間が到底抗うことのできない正体不明の力によって、主人公の周りが、世界が変容していく恐怖。その結末は衝撃的だ。理不尽な運命に翻弄される人間の無力さを味わいたい読者にとって、忘れられない一冊となるはずだ。
Posted by ブクログ
得体の知れない恐怖がじわじわと浸透するようなホラー体験が出来ました。
いい塩梅にミステリーとホラーが融合してきてさらにSF的な要素もあり、新鮮な体験が出来ました。
意味不明でやりたい放題の世界観が、異質な世界観を際立たせていたように思います。
最後は急に安全なストーリーに路線変更しましたが、人間一人が引き起こす悪事の落とし所としては個人的にしっくりきた展開でした。
犯人はやり過ぎだとは思いますが、動機や行動にも理解は出来たので、それなりにミステリーとしての要素もあったと思います。
Posted by ブクログ
じっとりとした怖さはさることながら、さ、最悪…!となる展開に後半少し笑ってしまった。別世界の自分を勝たせるための執着がすごい。生者と死者が入れ替わる世界の中で一人勝ちしたあの男は本当に幸せになるのか?という疑問もある。ジャパニーズホラーの王道という感じでかなり面白い
Posted by ブクログ
田舎、戦争、マルチバース、バタフライエフェクト...、個人的に好きな要素が詰まっているので楽しめた。
ただ、一人の人間(貞市)の生への執着心があそこまでの事象を引き起こすっていうのが動機としてはちょっと苦しいかなぁ。
Posted by ブクログ
すごい話だった…。
序盤は、「これってどういう話?」っていう感じで、なかなか掴みどころがなかったように感じてたのですが、中盤以降からどんどん読む手が止まらず、一気読みしてしまいました。
これってホラーなんだろうか…。SF?いや、むしろファンタジーかな…。うーん、こんなにジャンル分けに悩ましいの初めてかもしれません。でも、本作は『横溝正史ミステリ&ホラー大賞』を受賞してるんですよね。だから、ホラーかミステリかなんだろうけど…。
本作のオチ、最高でしたね。
最近、シリーズもののホラー小説を読む機会が多かったのですが、それらでは実現できない終わり方というか、単発ものだから出来る終わり方ですよね。すごく気持ちいい終わり方(裏切り方)でした。
まさか火喰鳥が出てくるホラー小説があるとは。本作って実写映画化されてるんですよね。なんかそのまま実写化したら凄く滑稽になりそうで心配になってきたのですが、上手くやれたんでしょうか。どういう作品になっているのか、気になりますね。
本作の著者である原浩さんの作品は『身から出た闇』だけ読んだことがありました。あの作品もなかなか面白かったし、本作も凄く面白かったので、他の作品も読んでみたいなと思いました。
Posted by ブクログ
★3.9
死者の執着が現在を揺らす。
いわゆる「怖がらせ特化」のホラーではない。
『火喰鳥を、喰う』は不穏なホラーだ。“現実の輪郭が少しずつ壊れていく感覚”という空気感作りが秀逸。
戦死した大伯父の日記を起点に、墓石の破壊、家の消失、失踪、不審な文字列など、異変が連鎖していく構造になっているが、この作品はそれらを「明快な怪談」として処理しない。だからこそ、不穏さが長く尾を引く。
「死者の記録」が現在を侵食していく。
ホラーでは“呪い”や“因習”が軸になることが多いが、本作では日記という記録媒体そのものが異様な存在感を持つ。ただ読むだけだったはずの文字列が、徐々に現実側へ染み出してくる。この“記録が世界を書き換えていく感覚”が、オカルトというよりかはSFの味を出してるのだろう。
一方で、ミステリとして読むと不確定要素は多い。読み手によっては「説明不足」と感じるだろうし、逆に「最後まで輪郭が定まらないのがよい」として評価する人もいるはずだ。自分は後者寄りではあったが、完全に腑に落ちたかと言えばそうでもない。作品の空気感や構造はかなり好きだが、“一本の鋭い解答”を期待すると少しズレる。
ただやはり、その曖昧さ自体がこの作品の武器でもある。これは「怪異の正体を暴く」というより、「説明できないものが現実へ滲み出してくる過程」を読む小説だ。
この記録媒体が独り歩きして、世の中に呪いを撒き散らすのだろうか。
見たら最後、死ぬまで執着される――。
…あれ、そんな話他にもあったような…
井戸から出てきて呪い殺したり、あげくどこかの最恐モンスターとバトルするような…
Posted by ブクログ
とっつきやすく、読みやすいホラー作品。
ぞくぞくしながらも読む手が止まりません。
作品中に火喰い鳥は何度も出ききますが、結局何の象徴だったのだろう。
Posted by ブクログ
オカルト系タイプじゃないな〜と思いながら読んでたけど、7日目あたりから加速度的に引き込まれていった。結末はほんのり察してたけど、ちゃんと気持ち持ってかれた。夕里子にも同じことはできるのかな?
描写リアルで怖過ぎて、映画は観たくないな。笑
Posted by ブクログ
面白かったし読み応えもあったけどホラーではない...?
2025年に映画公開するし、物語のきっかけが80年前だしで戦前戦後の歴史好きとしてはちょっと期待したけどあくまで要素の一つだったから少し期待外れ
でも80年の年にあの予告で公開してくれなかったら原作手にとってないから出会いには感謝
追記:映画版は演出含めホラー強めだった
ミステリだと思って映画観た同僚がホラー展開にキレていて、かたやホラーだと思って原作読んだ自分が肩透かしくらってたのでマーケティングのズレにちょっと面白くなってしまった作品
あっという間に完読
二日間の日中で完読しました。テンポ良く話が進展し、その世界観にのめり込む形で小説の世界観に没頭してしまいました。その世界観を改めて深く理解するために、現在二読中です。
Posted by ブクログ
まず設定が凄くいい。戦争という、誰しもが暗いイメージを抱くテーマを上手く利用していて、そこはかとない不気味さ、気味悪さがずーっと続く。
前半の叔父の日記の描写は、戦争の辛さや残酷さが嫌という程伝わって読んでから半日くらい沈んだ笑。ここの描写も本当に凄い。客観的な語り口じゃなくて、体験した人の日記という形式のせいかリアル感が凄かった。
ただのホラーではなくサスペンス要素もあり、最後まで飽きることなく夢中で読み切れた!大切な人がどんどん消えていくという衝撃、苦しさ、焦りの描写が凄い。自分の大切な人じゃ無いはずなのに、主人公と一緒に深刻な顔して読んでた笑
ただ、明かされた真実がそんな偶然重なるか?となったり、結局拗れた恋愛感情が根本的原因なので、あまり共感できなかったりしたのが少しだけ残念だった。
Posted by ブクログ
戦争で亡くなった祖父の兄がつけていた従軍日記が現代になって見つかる。その日記を巡って謎が展開するSFミステリーホラー。この日記をトリガーとして、交わるはずのない並行世界が交錯し、元ある世界と並行世界の存続をかけた戦いに発展する。
火喰鳥とは一体なんだったのか、どれが本当に現実なのか、どうしてこんなことがなし得たのか等、さまざまな疑問が浮かぶ。
スピリチュアルかつ現実味のない怖さで、読んでいる最中は恐怖を感じなかったが、読み始めてから何故か怖い夢を見るようになった。救いのない幕引きで、大切なものを横取りされ、壊されてしまったような辛さの残る読後感。
Posted by ブクログ
不気味なプロローグの後、まず家の作りから入り、平和的な夫婦とその馴れ初め、家族構成、不吉な出来事、そして日記が登場し、主要キャラクタが集まっての談話から戦時中の状況に入りこみ、時空が交差する。実にスマートな導入。こういうのが大事だ。
「常と変わらぬ」を言い過ぎだが、〈蜘蛛牢〉とは別人に思えるくらい違う力のこもった文章。これほど実力者だと思ってなかった。難しめの語句が浮いていない。
4章までは正体不明の凶事が支える五里霧中なホラーで調子が良かったが、例の人物の召喚から内容は180度反転する。それからは…とにかく救いのなさが強調され胸糞悪い。スプラッター描写、寝取られ要素もあり、逆にバッドエンド的凡庸さが目立ってしまった感じ。
その胸糞悪さがどこに最も起因するかといえば、強制的に参加させられたゲームが最後になってとんでもないクソゲーと判明し、絶望のままエンディングを迎える展開にある。
火喰鳥は禍々しい怪異、恐怖、不安の象徴であると同時に、システムに残された回避不能の不条理なバグ、クソゲーのメタファー、イメージキャラクターだ。
逸脱するが、このような印象操作はヒクイドリにとっては風評被害になるだろう。実際のヒクイドリは無暗に手出ししなければ基本的に大人しい動物であるらしく、ジャングルの生態系に欠かせない存在であり、凶兆というより再生の象徴である。
貞市生存ルートは、悪夢をみてるだけ、恐怖は強迫観念的なもの止まりであり、体力無制限、戦闘はオートで楽勝な、初心者でも楽々クリアなイージーモードといえよう。
更にチート改造も施されている。
対して貞市死亡ルートはウルトラハードモードだ。主人公の最後のセリフ「火喰い鳥だ!」は、プログラムを直接弄る以外にクリア不可能なクソゲーだと理解してしまった瞬間の絶望の叫びである。
前者のゲーム性は普通、低評価の嵐になると思うが、小説になるとすんなり受け入れられている。結局本作品の根幹はそこにあり、あくまでハードモードという対比が無いと物語全体は機能しない。
太平洋戦争の敗北が別の小規模な生存競争を招き、さらにその結果を賭けて現在の争いが起き、またその結果次第で過去も変わるという、二重の円環的構造を持った設定は上手いと思う。
どこから状況が発生しているのか?などと端緒の部分を考えると頭がこんがらがってくるが、いわゆるパラレルワールド、並行世界的な話ではないと思う。並列した世界なら道路の合流地点みたいに、未来でも同時に存在できるはずだ。
これはゴムボートで岸に向かっていたら、急に真横に巨大タンカーが出現して転覆したみたいな、無意味で暴力的な事故に近い。しかもその事故は仕組まれている。
この作品の対立は真vs偽なのか、真vs真か、あるいは偽vs偽か?
動機の点から考えれば、明確に真vs偽だ。
ユウジの世界には動機が無く、一方でチヤコの世界は動機がありすぎる。さらに北斗の動機はチヤコの利害と一致し、逆にユウジとは対立している。
動機無くしては戦争は始まらない。戦争は動機によって継続され消えれば終結する。
ややこしいが普通に、正史が偽物によって乗っ取られる話だと理解した。
《おまえの死は、わたしの生》という一見不穏なキーワードも、なんてことはない、利害関係者の吐くセリフだ。
意外にもこれと似たようなことを述べている作品がハン・ガン『すべての、白いものたちの』だ。
『すべての、白いものたちの』では存在は一体化していたが、こうした「私」の存在を「誰か」の存在の有無に求めるという考えは、未来のことはわからず「誰か」を指定できないのだから、結果論でしかなく、やはり真ではなく偽造を思わせる。
いわば原作者没後の二次創作が本家に取って代わってしまったようなものだ。
多くの感想に見られるように確かにSF要素はあるが、個人的にあまりSFぽさは感じない。プロットはP・K・ディックが得意とするものだが、やはり格が違う。
だが実はこの小説は、あの名作SFと言われている、伊藤計劃『虐殺器官』(※三分の一ほど読んで挫折)のフォロワーなのだ。
互いの共存を拒む二つの勢力の生存競争によって起こり得ることが虐殺であり、またそれを操る存在がいて、言葉によって喚起される。
このように両者には作品の方向性を決定する重要な部分に共通項を見出せる。
『虐殺器官』のコンセプトの中核になっているのはトマス・ホッブズの提唱した「万人の万人に対する闘争」という概念だが、本作の内容をほぼ完璧に説明している。
以下はAIからの引用:
“万人の万人に対する闘争とは
これは17世紀イギリスの哲学者トマス・ホッブズが、『市民論』(1642年)や『リヴァイアサン』(1651年)で提示した概念で、国家や法などの共通権力が存在しない「自然状態」において、人間が互いに争い合う状態を指します。
基本的な考え方
・自然状態では、人間は自己保身のために他者を攻撃し、常に危険にさらされる
・能力差のない個人同士が自然権(自由・平等な権利)を行使し合う結果、全員が全員に対して敵対する戦争状態になる
・この状態では「勤労への意欲も削がれ、死への恐怖が支配する」とホッブズは描写した
ホッブズの解決策
この闘争状態を避けるために、ホッブズは社会契約論を提唱しました。
・人々は平和な社会を築くため、自分の権利を全面的に国家(主権者)に譲渡する
・強大な主権者(国家権力)が秩序を維持することで、万人の闘争状態から脱却できる
・これが絶対王政を合理化する理論となった”
⋮
この基本的な考え方と全く同じ状態と言っていいだろう。しかし解決策となると話が違ってくる。それは権力者が秩序を破壊し、自分の利益のために行動していることにある。
本作のキャラで《強大な主権者》に該当するのは言うまでもなく北斗である。
ホッブスの分析は一つの国、一つの国民に対しては的確だが、国家間になると説得力が弱まる。その解決のためには〈統一世界政府〉みたいな組織が必要になってくるが、作中でも争いの端緒は太平洋戦争にあることが皮肉だ。
現在の情勢でも、その解決方法の実現性は限りなく低く、まさに低い鳥である。
厳密に言えば、最初に闘争状態にさせた原因が来るのだが、この話は「万人の闘争状態から脱却した世界が、自然権を行使する別の世界と、それを利用した侵略者に滅ぼされる」ストーリーだといっても過言ではない。
歴史の改変は文明の消滅を示唆し、北斗はさながらインカ帝国を滅ぼしたコルテス大王のようだ。終盤の展開は、その配下の〈エスパー的な能力を植え付けられた強化兵士〉によって惨殺される無力な一般人を思わせる。
北斗は、二つの世界にアプローチできる、多くの情報を把握している、原理や方法を知っている、などの有利な条件が揃っているチートキャラで、それらはゲームを進める上でも不可欠な要素であり、実質的に主権が与えられている。このキャラはチームリーダーであるうえ、ゲームマスターで、更に敵勢力のスパイなのだ。
この“失敗が約束されたようなキャラ”をメインに添え作品として成り立っているのは作者が優秀な証だとも言えるが、そんな“ゲームマスターがチームリーダーのゲーム”が面白いわけがない。
明らかにバランスがぶっ壊れたしょうもないクソゲーである。
しかし、もしこの物語が最初からゲームであれば傑作になっていかもしれない。日記を燃やせば30分ほどでクリア出来てしまうが、もちろん複数の分岐するシナリオ、マルチエンディングだ。
途中のガチャでは低確率で激レアキャラの〈カカポ〉をゲットできる。〈カカポ〉は北斗を弱体化でき、ボタン連打で火喰鳥を撃退することも可能。
育成に成功して〈概念化したカカポ〉にランクアップさせれば、貞市がカカポを食えるのか?と迷うことになる。
小説のタイトルが『カカポを、喰らう』なら売れないだろうが、ゲームなら大ヒット間違いなしだ。
Posted by ブクログ
太平洋戦争末期に戦死した大叔父の日記が死没地から届く。強烈な生への執念が籠った死者の日記を読んだことによって、主人公の周りで怪異が起こり始め、とっくの昔に死んだはずの大叔父が生きていた世界線が徐々に現実を侵食し始める。
ビニール袋を裏返して行って、全部裏返った後袋の口を閉じられて中に閉じ込められたような読後感。巻末の解説にも「十日間を1本ずつの指に見立て、1本ずつ折って行って最後は掌に閉じ込められる」と書いてたけど、ほんとにそんな感じ。一回読んだだけでは全てを理解するのは難しかったけど、虚構と現実の境界線が曖昧になり、最後はひっくり返ってしまう不穏さが良かった。また、火喰鳥というモチーフが物語の不気味さにより拍車をかけている。表紙の障子からぬっと顔出す火喰鳥、怖すぎるでしょ…。
しかし夕里子が魅力的な人物に思えず、そこまで執念を燃やすような女か?と思ってしまった。
Posted by ブクログ
凄惨な戦いの物語でした。私の守りたい現実vs怪異、その行く末をハラハラしながら読みました。主人公夫婦に現実感がない(現代なのに敬語?学生時代からの付き合いなのに?)ところは引っかかるも、怪異モノ好きな人は楽しめると思います
Posted by ブクログ
あまりホラー小説は読まないが、これは恐怖をしっかり感じた。
日記に少しずつ書き込みが増え、その異常が周囲の人間まで巻き込み、やがて現実そのものがおかしくなっていく。原因も仕組みも分からない何かによって、当たり前だった世界が崩れていく恐怖があった。
佐藤究『Ank: a mirroring ape』を読んだときにも少し似た感覚だ。とても読みやすくのめり込んだ。
ただ、正直ラストは微妙だと思った。あれだけドキドキしたから、その緊張感を最後まで持っていってほしかった。
二つの世界がどういう関係なのか、片方で生きればもう片方で死ぬのか。考えてもどうにも整理できない。もちろん、そこを読者の解釈に委ねること、説明できないものにすること自体が魅力だと感じる人もいると思う。
ただ、途中から「これはあえて答えを出さず、読者に解釈させるための曖昧さなのだろうな」と作者の意図みたいに感じてしまった。そこで少し冷めてしまった。
最初は「何が起きているのか分からない」から怖かった。最後は「分からないように作ってあるよ」と言われた感じがした。
Posted by ブクログ
ホラーはともかくミステリでもタイトルとっているのか…。
物語中盤から語られている「生と死の連動」がいまいちピンとこず。なんで大叔父さんが生きていたら語り手の歴史が絶たれるのか。
Posted by ブクログ
面白かったが、ところどころ描写が分かりづらく、読者の理解力に頼りすぎている部分があるなと感じた。純粋に最後の結末に納得がいかなかなったというのもある。(貞市を殺しても主人公サイドの勝利にならないなら、最初からほぼ負けゲーだったんじゃない?というモヤモヤ)(そもそも間に合わなくて殺せなかった説もあるけど)
最後のシーンで物語中の「よく分からない夢のシーン」が何を指していたのかなどはクリアにはなったものの、一番のモヤモヤポイントは全く精算されず……それを何とか回収するためにもう一度読み直そうという気力も起きず……。という感想。
結局もう1つの「籠り」は北斗総一郎の有里子への執着だった。それが貞市の日記の籠りと共鳴し、呪物の影響力を引き上げ、ブラックホールのように現実へ強烈な影響を及ぼさせた。
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⬛︎貞市死亡世界線
雄司と有里子が結婚
北斗は有里子へ執着を続ける
縁でパプアニューギニアへ行く(恐らくここから日記が呼んでる)
日記の存在を知り、日本へ送らせる(玄田を使う)
墓石の貞市の名前を削る
(呪いの侵食開始)
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⬛︎貞市生存世界線(侵食完了)
保は子供も作らずがんで死んでいる。よって、保の孫の主人公は存在しない。
貞市は生存。孫のちえこ(チェコ)と暮らしている。ちえこのお腹には子供がいる。
冒頭の女性一人称の悪夢描写はちえこのもの。
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貞市生存世界線と死亡世界線の入れ替わっていく描写が自分的に抽象的というか、SF的な考え方がないと分かりづらいかも。全体的に世界観は好きだっし怖さもちょうど良かったので読んで悔いは無い。
Posted by ブクログ
ストーリーの核はしっかりしているが、立ち上がりゆっくり目なのと文章があまり上手いと感じられず、最初は一度読むのを止めた。再開したら割とするする読めた。結末はまあ、と言う感じだけど、動機にあまりしっくり来ず。あんまり怖くはなかった。
Posted by ブクログ
南方で戦死した祖父の兄の日記が見つかったことから、怪奇が現実を侵食しはじめる…というめちゃくちゃ面白い話。「ヒクイドリヲクウ、ビミナリ」このフレーズだけで天才的だと思う。
それだけに主人公の「私」こと雄司にも、その妻の夕里子にもあまり魅力を感じられなかったのが残念だった。とくに夕里子さん、この人を手に入れたいがために現実を変えようと思わせるだけの説得力が欲しかった。
自分が恋愛小説好きじゃないからかもしれないけど、雄司、夕里子、北斗の三角関係が物語の核心ではあるけど萎える。
墓石から消えた文字、関わった者の奇妙な行動、不気味な夢など、怪異のレパートリーや感触それなりに良い。
冒頭の墓石〜手帳の「ヒクイドリヲ…」辺りまでが非常に面白いので、出オチ感というか、そのあと同じだけ面白さを引っ張っていくのが難しいけど、後半熾烈を極める二つの世界のせめぎ合いもそこそこ面白く読めた。
Posted by ブクログ
内容が難しすぎた。映画を先に観て難しかったため本でもう少し内容理解しようと思ったが本でも難しかった。ただ、内容の所々でイメージできるシーンがあり、その時に(自分だけかもしれないが)クスッと笑ってしまうような瞬間があったのは楽しかった。ホラー文庫というのもあり、怖さが勝っておりゾクゾクしながら読めたのは良かった。
Posted by ブクログ
あーー……そっちいっちゃうのぉ?
という感じで想定と世界観が全く違ったわけですが、久しぶりにちゃんとしたバッドエンドで、まぁ良しです。
記憶が改変される系に関しては、きちんと「もしかしたら私も……」って一回味わうピュアタイプリーダーなのでその辺も堪能できました。
のびたパンツのゴムみたいな思念しか持ち合わせていない自分にはifの改変はできないな〜とか
こういう世界線のif系って、細かく見ちゃうと「結局のところなんでもありやないか」ってなるのであんまり端々凝視していませんが、いろんな方の考察読んでいると、はぇ〜と思うところもあり、読後も楽しい。
実写化もされているようなので、その辺も絡めたら感想も面白い。サブスクに出てきたら観たいなと思います。
Posted by ブクログ
面白かったが、ラストがしんどかったです。
ホラーなのでハッピーエンドではないとは思いましたが…。
主人公とヒロインがお互いをさん付けで呼びあっていたり、主人公の一人称が私だったりと柔らかい感じの夫婦が可愛かったので、ちょっと残念です。
そもそも主人公が死んだところで、ヒロインが北斗を選ぶとも思えず…。
火喰鳥を”やむをえず”くう、のもなんでだろう?
死にかけの曹長が2人を殺せるはずもないので、やはり正史ではなくバットエンドなんだろうな。
あと
◉←これなんか怖い
星は3.5です。
Posted by ブクログ
結論
え・・・・・・・・・?と言った感じ
日記への執着が籠りとなって現実を変えようといしている」というのはまだ分かるが、パラレルワールドにしては違和感が強すぎる
現実を受け入れていない主人公視点だから尚なのだろうか
北斗が出てきてから加速的にゴチャゴチャしてくる
ペマ師ってなんやねん
ミステリーというよりホラーとかSFジャンル
映像映えしそうだから映画化したのは納得
Posted by ブクログ
太平洋戦争で戦死した貞市の日記が、70年の時を経て久喜家へと届けられた。そこには「火喰鳥(ヒクイドリ)美味ナリ」という不可解な記述が残されていた。
日記を読み進めるほどに、周囲で起き始める奇妙な現象。いつしか久喜家の人々はパラレルワールドへと迷い込み、現実との境界を失っていく。
全ては、生への凄まじい執着を抱いた貞市の思念が引き起こしたことなのか。読み進めるほどに、死者の「生」に対する狂気じみた信念が、底知れぬ恐怖となって迫りくる一冊だ。