あらすじ
実家の改築工事の最中、次々に発覚する家の奇妙な造りと、2つ目の仏壇の謎が恐ろしい「家の整理」。TV番組のため、都内の心霊スポットを訪れた撮影スタッフが遭遇した怪異と後日談に戦慄する「心霊動画」など日常に潜む恐怖に加え、怪異収集家である著者が厳選した山の怪談を収録。遭難した男性が出会った顔の印象のない男、夜の山道で何度も追い抜く同じ女性の後ろ姿――山という“異界”を堪能できる本当に怖い実話怪談集。
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山には何かが
登山家は言う。
「山の天気は変わりやすい」
「山を舐めてはいけない」
登山は子供の頃、遠足で行ったくらいなので、実感として分からない。
ただし、山神の怒りと解釈すれば合点がいく。山で命を落とした人も多くいることを思えば、安易に考えてはいけないのである。
吉野の古家
最後のFさんの話にでてきた後輩のHさんについて。子供の時は怖がりだったのにFさんを一緒に行こうと誘うし、しかも一人で行っちゃうし。怖がりはどうした。大人になって怖くなくなったのかな。
Posted by ブクログ
ほっこり怪談かと思いきや、最後にひっくり返してゆく「おじいちゃん」。因縁なのか怨讐なのか、解釈次第でどうとも取れる「カルテの虫干し」。人の弱みにつけ込む悪意の塊「彼女の声」。ホンモノじゃねぇかの叫びにいろんな闇を感じる「心霊番組」。これを社畜というのは心苦しいけど、そこまで囚われてしまうのがしんどい「残業」。希望と絶望が同居してしまう怖さの「やけど」。コロナ感染で経験したというタイムリーな「死神」「コロナ感染」「入院」。タイムリーというと不謹慎な気もするけど、大災害やパンデミックのような歴史に残る出来事には、不思議なことがつきものだと思う。そうでない時も起きているだろうけど。善意の仮面で奈落へひきずり込もうとする「助けてくれた男」。
人が踏み入れてはいけない境界は確実にあるのだ、と感じてしまう「吉野の古家」「お盆の夜」「吉野の探索」「貸した車」。
印象に残った話をつらつらと。
Posted by ブクログ
今回は末尾を中心に「山の怪談」が多い一冊。
吉野・高野山という霊山もあるが、里山(田舎)もあるので、どちらかというと人間の生活圏に近い。
このうち、吉野を著者が探索したエピソードがあるが、そのなかで『山怪』の田中康弘氏との出会いから「山の神」の存在を考えるようになったと書いている。
この本と同年の心霊ドキュメンタリー『北野誠のおまえら行くな。』では、「女の声が聞こえる某トンネル」を訪れた北野誠氏がこの田中氏とこの著者の名前をあげたうえで「これは山の神ではないか、幽霊ではないような気がする」とコメントしている。
このように本書で語られている中村氏&田中氏の「山中にあらわれる女性=山の神」説がほかの心霊番組にも影響していたのは、なかなか面白いものがあった。
山道にあらわられる謎の女性、禁忌をもった川にまつわる白い服の女性、吉野某地域に現れる女性、そして番組でとらえられたトンネルに響く女性の声。山の神とはなにか、共通項のある謎の女性。なかなかゾクリとこわい。
ほかにも、なんだかリズム感のある死神遭遇譚、自然すぎる現れかたをする自死した若奥様、謎の「ラスボス」、などなど。キャラや描写が秀逸な実話怪談が多かった。