【感想・ネタバレ】MONSTER 完全版 デジタルVer. 18のレビュー

あらすじ

日本漫画界初にして金字塔。大ヒット本格ミステリー!!

※この作品は2008年に、加筆修正のうえ刊行された『MONSTER 完全版』全9巻を、全18巻に再編集したデジタル特別版です。

ドイツのアイスナー記念病院で働く天才脳外科医・Dr.テンマ。院長の娘と婚約し、将来を嘱望される彼のもとに、ある日頭部を銃で撃たれたという少年が運び込まれる。

同時に脳血栓で倒れた市長の手術を優先しろという院長の命令を倫理観から無視し、ヨハンという名の少年の命を救ったテンマ。
しかし、その日から順風満帆だった彼の人生は一変する――18集!遂に完結!

緻密なストーリーテリング、魅力的なキャラクターたちとの邂逅と別れ。

ベルリンの壁崩壊後のドイツを舞台に、歴史の暗部に隠された人間の罪をえぐり出していく本作は、第3回手塚治虫マンガ大賞、第46回小学館漫画賞青年一般部門を受賞。

「ミステリー漫画は売れない」というそれまでの定説に真っ向から挑み、結果 累計2138万部を突破、日本漫画界初の大ヒット本格ミステリー作品となった。

『MONSTER 完全版 デジタルVer.別巻 なまえのないかいぶつ』も同時発売!!

(スーパーバイザー/長崎尚志)

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

匿名

ネタバレ 購入済み

ヨハン

以降ネタバレというか解釈しか書いてません。自分で考えたい人は読まないでください。

テンマに「最後の風景」が見えるのは、ヨハンもテンマも人間の命に優劣はないと、心の底から信じているからです。
だからヨハンは誰でも殺せるし、テンマは誰であっても救います。そこに相手を選別する好き嫌いはありません。
殺すのか救うのかの違いだけです。
だからヨハンにとってテンマは同じ風景が見える人。

それはアリの行列を眺めるテンマの姿からも、作中で暗示されています。
人間社会は人種や階級、職業、外見、ありとあらゆる差異と評価によって成り立っているのですが、2人はそのルールから外れた人間(外れる素因を持つ人間)という意味で同等なのです。
荒野で対峙する2人の絵がそれを象徴しています。対峙する絵はニナの場合もそうですが、入れ替え可能を意味するようです。

テンマが日本社会や病院の権力争いに馴染めなかったのもこの素因が理由でしょう。
人間であるからにはルール=人間の脳が作り出した幻想に生きるしかないのですが、「見えない」ロベルトのように、普通の人間はそれに気づきさえしません。
社会という幻想に生きることを自覚できる人間、「アリの行列を眺める」目を持っているのは、おそらくヨハン、テンマ、ニナの3人だけです。
彼らは同じ種類の孤独を持っているので、ヨハンやニナだけでなく、テンマの自己救済も物語には含まれることになります。

病院のシーンでヨハンが語る最後の記憶。
ボナパルトのことを怪物と呼びます。それまではヨハンが怪物だったのに。
この時のヨハンは、怪物におびえる子供です。最も深く傷ついた記憶だったのでしょう。
テンマに本当の名前を伝えられたこと、本当の記憶と感情が蘇ったこと。
これらの条件から、最後の空になったベッドの意味は「なまえのないかいぶつは消えた」でしょう。
テンマとの交流を通し記憶を明らかにしていくことで、ヨハンの心の救済は成されたと解釈できます。 

もしくは単に私たちの目に見えなくなったのかも知れません。名前のない怪物自体が社会という幻想の産物であるなら、最初から存在しなかったのでしょう。

#癒やされる

0
2023年08月28日

S

ネタバレ 購入済み

ラスト

本当に何人亡くなったんだろう......テンマが助けた命より少なければ良いけれど。
グリマーさんは死ぬだろうと思ってたけど、本当に死んでしまいツラい......
ヨハンはどこに消えたのか。本当の名前で生きていくのか、何とも言えない後味のラストだった。

0
2022年03月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

14-18巻。いやーついに完読。しかし、やっぱ難しいな。すっきりしない。最後の空のベッドってヨハンがまたどっかに行ったってこと?ヨハンの本当の名前は何だったの?お母さんはどうして生きていたの?どうして一人の手を離したの?どうして二人とも女の子の恰好をしてたの?511キンダーハイムにはヨハンはどうして入ることになったんだっけ?何回も読まないと理解できないわ。でも面白かった。ヒトラーがユダヤ人を抹殺しようとしたんだから、こんな子どもを洗脳するような計画があってもおかしくない気がする。あぁ恐ろしい。子どもがかわいそうだ。

1
2014年09月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

◆思いっきりネタバレがありますので未読の方はご注意ください


冷戦下の東欧の「闇」が舞台というのがあまり馴染みがなくておもしろかった。グイグイ引っ張っていくストーリーテリングやその間にインサートされる本筋とは直接は関係ないサイドストーリーもさすが。とくにテンマが銃を習う元傭兵と少女の話や殺人を犯した息子に面会するための旅を続けている老夫婦の話など。

キャラクターではなんといってもルンゲ警部がいい。冷徹なコンピューターそのものといったかんじ(カタカタと指を動かすあたりもいい)ながら、徐々に事件の真相に迫っていく。最初はヨハンはテンマの頭の中にしか存在しないと思っていたのが、最後には「ヨハンはどこだ!」と絶叫するところがなんともいえずよい。テンマへの謝罪も顔を会わせない分、背中が語っている。

絵本が重要なカギとなるというギミックもおもしろい。絵本の雰囲気が東欧などにありそうな暗い内容なのがよけいにそこはかとない怖さを盛り上げている。

ただ赤いバラの館での「朗読会」のあたりからギミックがギミックとして見えてきてしまったように感じる。すべてのカギを握る闇の人物フランツ・ボナパルタも、それまでに出てきた敵方キャラクターに比べて人物造形的にもストーリー中の役割的にも弱い。

最後にテンマがヨハンをもう一度手術するのは予想できた、というかそうなるはずだろう、この設定だったら。となるとヨハンを撃つのはテンマではないだろうということもなんとなく推測できた。アンナが撃つのではないかとも思ったのだが、それだと物語のエンディングがむずかしくなってしまうし…。それではボナパルタか?と思っていたらああいう展開だったのでちょっと意外(というか当然の展開か)。

最後のほうになると謎が謎のままで終わってしまっているところがいろいろとあってすっきりしない。なぜヨハンはあの街を大量殺戮に陥れようとしたのか? それをなぜ他の人間がわかったのか?(とくにルンゲ警部とグリマー) フランツ・ボナパルタが行っていた実験とはどんなものだったのか? なぜ双子のうちのどちらかを連れ去ろうとするとき、ヨハンは女の子の格好をしていたのか?(ストーリー構成上は「おかえり」「ただいま」の逆転のために必要なのだが) アンナが帰ってきたときになぜ母親はいなかったのか? なぜアンナはヨハンを許そうとしたのか? 「終わりの風景」がなぜテンマにだけ見えたのか? 結局ヨハンはなにをしようとしていたのか? ラストシーンでヨハンのベッドが空だったのは何を暗示するのか? などなど…。

謎が謎を呼んで展開していくストーリーだっただけにそのあたりがはっきりしないところが今ひとつカタルシスを得られない原因になっている。まあ人物の心の動きなどは僕がつかみ切れていないところも多いのだろうが。

いずれにせよ非常におもしろかっただけにそういう部分が気になってしまったというところか。ヨハンという怪物が作者の手さえ離れてストーリーを闇の中へ拡大していったのかもしれない。

-----
今?〜?を読み直してみた。やはりストーリーとしては細かい部分で辻褄が合っていないところがいくつかある。また「怪物が生まれる」「本当の恐怖」「本当に恐い話」など言葉が一人歩きをしている感は否めない。ただそれはよくわからないものに対する漠然とした恐怖から生み出されたものであり、作中の登場人物も読者もそうした恐怖に惑わされていったのである。さらには作者自身をも惑わしていったのではないか(もちろん週刊誌連載なので読者を引っ張り続けなければいけないという現実的な理由もあるのだが)。それが最後に来てこれまでの伏線をすべて結びつけてしまうことができなかった理由ではないかと思う。

たしかにミステリーとしてみた場合細かい部分ではスッキリしないところもあるが、人間ドラマとしてみると非常によかった。とくにやはり一番惹かれたのはテンマとルンゲ警部の関係である。二人が長い旅の果てに最後に顔を合わせたのは雨のルーエンハイムでのほんの数分間である。だが別れ際にルンゲが背中越しにテンマに告げた「すまなかった」の一言はすべての感情が凝縮されていてこの作品のひとつのクライマックスといえるだろう。

それに比べるとヨハンを軸にしたテンマ、アンナのストーリーは、ヨハンという人物の目的や感情の動きがはっきりしない分、人間ドラマよりは「怪物」「本当の恐怖」とは? の謎の解明のほうにどうしても関心がいってしまう。

ヨハンとアンナのストーリーでは「ただいま」「おかえり」のところがひとつのヤマになっていたが、さすがにこれは途中で気がついた。そのことについてのアンナの告白が、ヨハンが別の風景を見るようになり崩壊へと走らせるきっかけとなったのであれば、ヨハンの凶行の原風景は「赤いバラの屋敷」での折り重なる死体(のイメージ)だったのか?

なぜヨハンは殺戮を繰り返すようになったのか?「三匹のカエル」から逃げ出した双子は野原で老夫婦に食事を与えてもらい、別れ際にその老夫婦をヨハンは殺害している(このあとチェコ国境付近で倒れていたところを拾われる)。とすると彼が殺人をおこなうようになったのは511キンダーハイムに入る前であり、この老夫婦が第一の殺人となるのか? となると殺人のきっかけは絵本「なまえのないかいぶつ」とアンナから聞いた赤いバラの屋敷での殺戮を自分の体験だと思ってしまったことなのか? 老夫婦を殺害して野原を去るときにすでに「いい計画があるっていったろ」とアンナに告げているがその「計画」とはなんだったのか?

物語の後半でヨハンは「怪物は僕の外にいたんだ」という。リーベルト夫妻が殺されたときも「今夜は特別だ。怪物が迎えに来た」といっている。またラストでもボナパルタがアンナを連れ出した日のことを「あの日、怪物がぼくらの前に現れた」といっている。ヨハンがいう怪物とはボナパルタのことなのか? 絵本の怪物はヨハンの中に入ってきたが。

最後のヨハンの告白はテンマの夢か現実か? ベッドが空っぽなのは物語の冒頭でヨハンが病院を抜け出したことと重なりもするが、それではあまりおもしろくない。それよりも名前のない怪物だから?

ヨハンが薬物を投与され質問に答えるテープの中で「一番怖いのはアンナのことを忘れてしまうこと。ぼくらは本当に世界に二人きりなんだ」というところがいい。511キンダーハイムでの授業(=人格改造)で、自分の名前さえ忘れてしまいそうになる中で、薬物によって導き出された言葉。もしかすると作品中で唯一ヨハンの本当の気持ちが表れているのかもしれない。チェコ警察の若い刑事とその母親のエピソードの中で、自分の記憶が混濁していく母親が「神様、この子のことだけは忘れさせないでくれ」と涙するのが伏線になっているが、これはなかったほうがヨハンの告白が活きたのではないか?

サブキャラクターではやはりエヴァが際だっているが、彼女のボディガードを任されたマルティンのキャラクターとエピソードがいい。

アンナは兄を殺すための長い旅の果てに「すべてを許す」と言ったが、その理由がわかるようなわからないような。ただ最終話でテンマが帰ってくることは気にしているが兄のことについてまったく触れられていないのは、この物語のラストとしてはちょっと物足りない。

余計なことだが、2度目の銃弾に倒れたあとずっと眠ったままなのなら、ラストのヨハンがヒゲも伸びていないし髪型もあのままというのはおかしいぞ。ん?もしかするとそれとラストでヨハンがベッドにいないというのが何か関係があるのか?そもそもヨハンは本当に助かってこのベッドにいたのか?白昼夢?イメージ??名前のない怪物???

と、まあいろいろと書いているが、つまりはそれだけいろいろと書いておこうと思わせるほどおもしろかったということ。これだけ長い作品を読み直すということはそうはないので、とにかく感じたことをなるべく残しておきたい。

0
2019年04月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ラストのページ(コマ)を見たときはゾクッとした。
生命は取り留めたけど、本当の名前を誰も知らないまま、人々の記憶から消えていくことで、ヨハンの「完全な自殺」は完成したのかも知れない。
本当の名前は分からないのは同じでも、生命を落としたグリマーの方が多くの人の記憶に残ることになったのは、皮肉というか、随分と対照的。

全巻を通して、「計算」とは呼びづらい都合の良い展開やこじつけも多いように感じる。
まぁそこはフィクションということで目をつぶれば楽しめるけど、読む人によっては気になるんじゃなかろうか。

0
2012年10月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

全巻を一気に読んだ。日本のドラマと言うよりもFOXあたりのドラマを見るような構成にどんどん引き込まれる。
ただ、最後クライマックスはちょっと物足りなさがある。何故、一番復讐したい人物がいるからと言ってあの村全体に511のような殺戮が必要なのか。
この他にもどうにも謎がある。
どうして母親が生きているかもしれないのにヨハンはその存在を探そうとしなかったのか。
どうやって双子が生まれてから親子は怪物から逃げることができたのか。
どうして双子は選ばれた子どもであると思われたのか。
どちらかといわれどちらかを差し出したのに何故母親も連れて行かれ、その後一人子どもが残されていたのか。
そのあたりの肝心な謎がやはり曖昧になっている気がする。
まあ面白かったんだけどね。
これは映画よりじっくりドラマにして欲しい。

0
2011年08月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

絵本作家・フランツ・ボナパルタを追って始まる最後の殺戮。
 
テンマの誤解が解け、謝罪するルンゲ警部の姿が印象的。
 
本当の怪物の正体は・・・!?
 
最後にテンマが会話したヨハンは幻か?
悲劇が繰り返される余韻を残し物語は終わる。

0
2013年04月06日

「青年マンガ」ランキング