あらすじ
「この猫が怖くてたまらない」――ポー新訳2冊連続刊行!(2巻は22年3月発売)
おとなしい動物愛好家の「私」は、酒に溺れすっかり人が変わり、可愛がっていた黒猫を虐め殺してしまう。やがて妻も手にかけ、遺体を地下室に隠すが…。戦慄の復讐譚「黒猫」他「アッシャー家の崩壊」「ウィリアム・ウィルソン」「赤き死の仮面」といった傑作ゴシックホラーや代表的詩「大鴉」など14編を収録。英米文学研究の第一人者である訳者による解説やポー人物伝、年譜も掲載。
あらゆる文学を進化させた、世紀の天才ポーの怪異の世界を堪能できる新訳・傑作選!
●傑作ゴシックホラー+詩
赤き死の仮面 The Masque of the Red Death (1842)
ウィリアム・ウィルソン William Wilson (1839)
落とし穴と振り子 The Pit and the Pendulum (1842)
大鴉(詩)The Raven (1845)
黒猫 The Black Cat (1843)
メエルシュトレエムに呑まれて A Descent into the Maelstrom (1841)
ユーラリー(詩) Eulalie (1845)
モレラ Morella (1835)
アモンティリャードの酒樽 The Cask of Amontillado (1846)
アッシャー家の崩壊 The Fall of the House of Usher (1839)
早すぎた埋葬 The Premature Burial (1844)
ヘレンへ(詩) To Helen (1831)
リジーア Ligeia (1838)
跳び蛙 Hop-Frog (1849)
作品解題
数奇なるポーの生涯
ポー年譜
訳者あとがき
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
ポー、生き埋めへの執着がありすぎる(と思わせる収録作品のセレクション)
ブラッドベリ「火星年代記」の一編「第二のアッシャー邸」で引用されているオリジナルを知りたくて読みました ブラッドベリがポーから非常に強く影響を受けていることが文体からさえもよくわかる 全体を通してグロテスクな銀細工のような文章 (「ポオはぼくの従兄弟」とまで比喩するのも納得)
現代のエンタテイメント価値観で読むと「エッ、結末、やさしー!!」と感じる編もあり面白い
「アッシャー家の崩壊」はスティーブン・キング「シャイニング」の元にもなっているのだろうなあ
Posted by ブクログ
ポーの傑作選は岩波少年文庫から出ているものを読んだことがありますが、某有名カードゲームの元ネタである『早すぎた埋葬』が読みたくて購入。
既読の作品も多かったので、訳の違いも楽しみながら読み進めました。
うーん、やっぱり『赤き死の仮面』と『アッシャー家の崩壊』が大好きなんですよね〜。このゴリゴリのゴシック調の雰囲気、たまりません。
楽しみにしていた『早すぎた埋葬』はというと、本書の中で唯一(?)笑ってしまう話で、なんだか意外でした。いや本人は真剣だから笑っては悪いのですが……。
でも、当時普通にあった”早すぎた埋葬”を防ぐための「安全棺」や「生き埋め防止協会」が出てくると、どうしても、ね( ˊᵕˋ ;)
しかし、なすすべもなく生き埋めにされてしまうことの絶望感、恐怖、無力感への衝撃がそれだけ大きかったということですよね。たしか『ボーン・コレクター』でも埋められそうになってたなぁ……。
本書にはポーの詩人としての一面も堪能できる作品もいくつか収められています。
もちろん原語は英語なのですが、訳者である河合祥一郎氏の並々ならぬ努力とこだわりを感じることができました。
ポーを一躍時の人とした『大鴉』なんて、実際は英語で発音するからこそ凄さがわかるだろうに、日本語でもそれを追体験できるのだからすごい。さらに、巻末の解説ではオススメの音源まで紹介してくださっています。
そう、本書の特徴は河合氏による80ページに及ぶ”ポー解説”といっても過言ではないと思います。
ポーが何にインスピレーションを受けてそれぞれの作品を生み出したのか、そして彼自身の数奇としか呼べない人生……。実に読み応えがありました。
角川からは「怪奇ミステリー編」と題した続刊も出版されていますので、これも機会を捉えて読んでみたいなと思います。
怖い話は苦手だけど、ゴシックホラーにはなぜか惹かれるんですよね、ふしぎ。
Posted by ブクログ
ポーが、あらゆる小説ジャンル(推理小説、ホラー、SF、冒険小説など)の元祖であること『ギンガムチェック塩漬けライム』(鴻巣友季子)を読んで知りました。詩も含めて、短編が本書にはおさめられています。
怖さが迫ってくるだけでなく、何だか面白みもあり、文章表現の巧みさが際立っていました。映像となって出てくるようでした。ポーもすごいけれど、訳者もすごい。ホラーを読むのは初めてで、ポーの作品を読んで良かったです。他の訳者の文章も読んでみたくなりました。
Posted by ブクログ
エドガー・アラン・ポーの「黒猫」は、ゴシック文学の中でも特に傑出した作品です。この物語は、酒に溺れた男が愛猫を殺害し、その後、罪悪感と恐怖に苛まれる様子を描いており、ポー特有の暗く、緊張感あふれる筆致が色濃く出ています。
物語はかつて優しかった男が酒乱となり、愛猫プルートに暴力を振るうところから始まります。彼の行動は次第にエスカレートし、最終的には猫を殺してしまいますが、その行為が彼の運命を狂わせることになります。新たに現れた黒猫は、前の猫とそっくりでありながら、一つ違いがありました。その猫は胸に白い斑点を持っていたのです。
この物語を読む際、私は、主人公の精神の崩壊を目の当たりにして、彼の心理に深く引き込まれてしまいました。彼の罪悪感と恐怖が、まるで自分自身のものであるかのように感じられます。ポーは、心理に巧みに訴えかけることで、恐怖を増幅させる術を見せつけます。そして、その恐怖はただの外的なものではなく、内面から湧き上がるものであることを教えてくれます。
本作の作風は、人間の心理を深く掘り下げ、罪と罰、そして自己欺瞞のテーマを探求しており、単なる恐怖小説以上のものです。ポーは主人公の行動を通じて、私たち自身の内面に潜む暗黒面に光を当てます。そして私たちがどのように自己正当化を図り、真実から目を背けるかを描いているのです。
Posted by ブクログ
昨年刊行されたE.A.ポーの新訳傑作選。3冊シリーズの第1弾にあたる『ゴシックホラー編』。
ポーの語りの技巧、言葉への拘りを訳出することに腐心したと訳者あとがきにあるが、訳自体はとても読みやすく、それでいて軽過ぎない。約80㌻に及ぶ作品解題とポーの生涯についてもかなりの読み応え。
『ゴシックホラー編』と銘打たれているが、収録作を読み進めていくと、ポーが“生き埋め”や“地下への閉じ込め(壁に塗り込め)”、”蘇る美女“といったモチーフを繰り返し登場させていることに改めて気付く。それらはお気に入りであったと同時に、ポー自身に閉所恐怖症なり、何らかのオブセッションもあったのだろうな、と思えてくる。
掉尾を飾る「跳び蛙」は、王様らに虐げられた道化師の復讐譚だが、これを下地に江戸川乱歩が書いたのが「踊る一寸法師」なのは有名な話。だが、乱歩が自分のフリークス嗜好や猟奇趣味全開で書いた酸鼻な残酷譚であるのに対し、ポーも同じく残酷ではありながらどこか冷静な観察者の目を保っているのがわかる。ポーの冷静な目、第三者的な態度、雰囲気というのは、例えば「黒猫」のように一人称で書かれた作品でも(狂気や恐怖にかられている描写ですら)感じられる。これは雑誌編集者としての経験も影響していたのではないか……と先日の読書会で聞いて、なるほど、と納得。
また、ポーの出世作と言える「大鴉」はじめ詩作も3編収録されているが、作品解題では各詩の構成や韻律について詳細に解説されており、「小説は面白いけど詩はどうもわからなくて」という読者(自分含め)にも、ポーの詩の技巧と凝り、味わい方が理解し易くなっている。
ポーは何度も読んでるよ、と言う人でも新たに愉しめる1冊ではないかと思う。
Posted by ブクログ
いろんな人の訳で何度も読み、何度も読みたくなるポー。”お話”の原型が詰まっているように思うんだよね。
巻末の「数奇なるポーの生涯」も力作で、1篇の作品のようですらある。
Posted by ブクログ
エドガー・アラン・ポーの名作が詰め込まれた短編集。今作はあの有名な「大鴉」などの詩も含めたゴシックホラー編。読んだ事のある話もあればタイトルだけ知っていた話もありで、どの話もポーの技巧が凝らされた話ばかりである。「大鴉」だけでなく「黒猫」や「アッシャー家の崩壊」に「赤き死の仮面」も収録されているので、そんなに分厚くないながらも読み応えは抜群にあった。
Posted by ブクログ
青空文庫で読んだペスト王を、もっと新しい訳で読みたくて借りた。収録されてなかったけど。
赤き死の仮面と黒猫とアッシャー家の崩壊は良かった。他は、好きな人は好きなんだろうけど、なんだか付き合いきれない感じがしてほとんど読み飛ばしてた。