あらすじ
クロマニョン人とリュミエール兄弟、スピノザとニューロサイエンス、フロイトとiPadが軽やかに結びつく、超時代・超領域の連続講義。やがて聴衆は、人文学と認知科学が団結し、ファシズムに立ち向かう瞬間を目の当たりにする。われわれの認知を、コミュニケーションを、政治行動を、テクノロジーはどのように規定しているのか。インターフェイスに囲まれて生きる現代人の必携・必読の書。
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Posted by ブクログ
東浩紀が師匠の石田英敬の構想をきく形で行われたゲンロン・カフェでの対談講義を書籍にしたもの。最新の知見にもとづいて、「記号論」を構想しなおしており、知的にとても刺激をうける。
特に、脳とメディアの関係性は、自分の問題意識とあっている。
一方、橘玲がかなり否定的に書いているフッサールやフロイトを肯定しているので、考えさせられる。
第1講義 記号論と脳科学
・歴史的には、バロック記号論(ロックとライプニッツ)から現代記号論(パースとソシュール)を経て情報記号論に
・フォトグラフ(光)、フォノグラフ(音声)、シネマトグラフ(運動)のグラフは「書く」ということであり、記号として通底
・ヒトはみな同じ文字を書いている!
・自然と見分ける脳の領域を転用して文字を見分けるようになったという「ニューロンリサイクル仮説」
第2講義 フロイトへの回帰
・フロイトの治療の効果は否定されているが、彼のイメージした「心の装置」は「不思議のメモ帳」をアナロジーとしており、有効
・さらにフロイトの「心の装置」とソシュールの「言語の装置」を対比させることで、無意識に視覚(物表象)が、意識に聴覚(語表象)が対応することが明らかにされる
第3講義 書き込みの体制2000
4つの追伸 ハイパーコントロール社会について
Posted by ブクログ
記号論とはなにか。歴史からここまでの新しい言説までをまとめたものである。知を愛するものであれば必読の書である。
この分野はコンピュータ、AIの発展の礎になっているし、そもそもメディアを探究する場合にも必要になるものである。
本書に「ヒトはみな同じ文字を書いている」、「ニューロンリサイクル仮説」を取り上げた箇所がある。ヒトが進化の過程で森で生活していた時期があるとされる。その森での生活でモノを見分けるのに使っていた視覚に関する身体の部位や脳の視覚野。これを文字を読むことに転用しているのではないかということの根拠にしているのである。
グラフィックレコーディングにおいて、文字を書く、絵を描くということは基本中の基本である。その学びにおいてこの考えは大変大きな示唆となる。