あらすじ
致命的な心の傷を、人はいかにのりこえうるか?
ささやくような美しい声で、答えてくれる物語。
(川上弘美 / 作家)
旅をするとき、人は同時に、命を見つめているのではないか。
(西加奈子 / 作家)
この“旅”の体験と記憶は、いつまでも失われない。
自分もいつかは“最高の旅”を誰かとしてみたい。
人生に終わりはないのだ。
(小島秀夫 / ゲームクリエイター)
あらすじ
「若年性アルツハイマーと宣告された男性、26歳。人生最後の旅の道連れ募集」。エミルは病院と周りの同情から逃れるため、旅に出ることにした。長くても余命2年。同行者を掲示板で募集したところ、返信が届いた。「高速道路の三番出口で待ち合わせしよう。こちらは、つばの広い黒い帽子にゴールドのサンダルに赤いリュック。どう?」。現れたのはジョアンヌと名乗る小柄な若い女性。自分のことは何も語らない。2人はとりあえず、ピレネー山脈に向けキャンピングカーで出発することにした。それは、驚くほど美しい旅の始まりだったーー。
爽やかな筆致で描く、命と愛、生きる喜びについての感動大長編。
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Posted by ブクログ
読み応えがありそうなページ数なので、
数日に分けて…と思っていたら物語に引き込まれて一晩で読み終えてしまいました。
瑞々しい風景の描写、懸命に生きる人々の美しさや愛。旅先で出会うひとの暖かさ。
私の琴線に触れました。彼らの旅に自分も加わっているような、そんな錯覚を覚えます。
エミルの生きた軌跡を読んでほしい。
記憶を失っていくエミルのそばに居続けた
ジョアンヌのことを知ってほしい。
エミルは記憶を失っていきつつも、ジョアンヌに大きな力を与えた。それはジョアンヌの希望となり生きる糧となっただろう。願わくばジョアンヌが幸せに暮らしてほしい。読み終えてそう思いました。
Posted by ブクログ
若年性アルツハイマーと診断された26歳の男性エミルと、彼が募集した「人生最後の旅の同行者」であるジョアンヌの旅行記。フランスの雄大な自然と、そこに暮らす人々の温かさに包まれるような物語。
エミルが掲示板に書き込んだ一文をきっかけに出会った二人。余命2年を宣告されたエミルと、口数の少ない謎めいた女性ジョアンヌ。行き先も計画も決めていないまま、互いのことをほとんど知らない二人が、息をのむような自然や文化、人々との出会いを通して、少しずつ心を通わせていく。私はフランスに行ったことはないが、まるで同じ景色を目の前にしているかのような錯覚を覚えた。
旅の始まりは穏やかだったが、やがてエミルにブラックアウト(記憶喪失)が訪れる。かつては「恋人のことを忘れたい」と願っていた彼が、次第に「忘れることが怖い」「何も忘れたくない」と変わっていく姿は、読んでいて胸が締めつけられた。記憶を失うとはどのような感覚なのだろう。ただ思い出をなくすだけでなく、経験そのものが存在しなかったかのように感じてしまう。その苦しみと悲しさが痛いほど伝わってくる。
そんな中、どんなときでも寄り添い続けるジョアンヌの温かさに、エミルも、そして私たち読者も救われる。やがて彼女のことさえ忘れてしまう日が来るのだろうか。そう思うと切ない。
どうか二人の旅が、最後まで安らかなものでありますように。