あらすじ
辺境と蔑まれ、それゆえに朝廷の興味から遠ざけられ、平和に暮らしていた陸奥の民。8世紀、黄金を求めて支配せんとする朝廷の大軍に、蝦夷の若きリーダー・阿弖流為は遊撃戦を開始した。北の将たちの熱い思いと民の希望を担って。古代東北の英雄の生涯を空前のスケールで描く、吉川英治文学賞受賞の傑作。(講談社文庫)
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
並行して読んでいる風の王国は、津軽蝦夷と渤海国の話ですが、これはさらに100年以上前の8世紀末、陸奥の蝦夷阿弖流為(アテルイ)が主人公。前にNHKでドラマ化していましたが、かなり原作をいじってます。原作のほうがかなり出来がいいです。特にアテルイの軍と朝廷軍の戦いの場面など非常に面白いです。総兵力でははるかに劣っても、局地的に数的・戦略的優位の状況を作り勝利する様は、まさにランチェスター戦略の弱者のとるべき戦略。勉強になります。
Posted by ブクログ
ものすごく時間のかかってしまった読書。
時は平安遷都の少し前。奈良に都があったころ。
着々と地方を制定して勢力を拡大していた朝廷からも放っておかれていた辺境の土地。みちのく。
そこに金山が発見されたことから、俄然朝廷の動きが慌ただしくなる。
金に興味のない蝦夷たちは、放っておいてくれさえしたらよかったのだが、金も土地も全てを支配したがる朝廷と、対峙しなければならないことになってしまう。
圧倒的な物量を誇る朝廷の大軍に対して、小競り合い程度の争いしかできない蝦夷たち。
しかし部族ごとにバラバラに戦っていては、いつかは朝廷軍に飲みこまれてしまう。
いくつもの部族を束ねたのは、まだ若いアテルイだった。
歴史の結果はもうわかっているので、この戦いがどのように行われ、決着がついたのかを読むのはちょっとつらい。
何しろアテルイはいい子なのだ。
敵も味方も少ない犠牲ですますことは出来ないかと知恵を絞る。(実際に絞るのは副将の母礼)
朝廷軍を翻弄するために行われるゲリラ戦。
これはちょっと地形がわからないと読んでいてつらい。
というわけで、国土地理院のホームページから地理院地図を開いて、北上川に沿って(作中は日高見川)地名と地形を確認。
その上に空中写真を重ねて透過率50%で見ると、森や山は開発されているとしても割と戦術がわかりやすく、何よりなかなか楽しいので、すっかり読書の方がおろそかになってしまったのだ。
倒叙ミステリのように、『なにをどうして』を楽しむのが歴史小説。
坂上田村麻呂が出てくるまでは、朝廷軍の裏をかく蝦夷たちの闘いを楽しむことにした。
ただ、金銭的な大部分を負担してくれた物部二風という人物。
蘇我氏に敗れて朝廷に追われてきた物部氏という設定だけど、この時点では蘇我氏はもう朝廷にはいないし、物部氏がお金を持っているということは、蝦夷相手ではない金儲けをしているはずで、朝廷相手に戦う(背後に隠れているとはいえ)理由がちょっと弱いかな。
下巻はつらい内容になりそうだけど、坂上田村麻呂がいい人そうなので、なんとか悲劇は最小限に抑えてほしいと思う。
Posted by ブクログ
坂上田村麻呂らへんの時代、朝廷が蝦夷の侵攻を始めた頃の物語。反逆者アテルイの物語。燃えがる蝦夷の歴史のはじまり。
蝦夷の歴史の火種が黄金だったというところがね。金は人を変えてしまうのだ。朝廷が悪いというわけではない。その朝廷に阿った蝦夷の輩が蝦夷のバランスを崩していく。
あくまで蝦夷で燃え上がった炎は、自分たちのうちから燃え出したものなんだな。
しかし、戦闘のシーンは燃える展開で楽しいな。朝廷軍が敗れるのは小気味いい。
あと日本人は昔から水攻めが好きだな。
というか、水害が一番人にダメージを与えるのかもしれない。そう思った次第です。