あらすじ
ぼくは思わず苦笑する。去年の夏休みに別れたというのに、何だかまた、小佐内さんと向き合っているような気がする。ぼくと小佐内さんの間にあるのが、極上の甘いものをのせた皿か、連続放火事件かという違いはあるけれど……ほんの少しずつ、しかし確実にエスカレートしてゆく連続放火事件に対し、ついに小鳩君は本格的に推理を巡らし始める。小鳩君と小佐内さんの再会はいつ?
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Posted by ブクログ
上巻に続く解決編。展開が早いので飽きることなく楽しむことができた。
小市民を目指す2人がスイーツを食べながら話すところを再び見れたのが嬉しい。
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小市民シリーズ第3弾
前回の夏期限定から2人はどうなっていくのかと思ったら、最終的にそういう結末になるなんて!!
米澤穂信先生さすがです!!2人のこんな関係はどうやって小説として起こされていくのか気になります。
日常ミステリーの真骨頂ですね。あ、今回はちょっと日常は少し超えてますが…
栗きんとんがそこに繋がるとは……
Posted by ブクログ
解決編の夜にふたりが本当に楽しそうに話しているのが微笑ましい一方、そりゃあ小市民になれるわけないよと思ってしまうほどの頭脳と行動力で大満足でした......!
ともあれ、終盤の会話劇が好きすぎてかなり深く読み込んだのだけれど、小佐内さん、めちゃくちゃ小鳩くんのこと好きじゃない!? 夏期限定のラストからしばしば思ってたけど、言葉の節々に「小鳩くんしかいない感」が滲み出てる。「次善」も本心はもちろん、小鳩くんの意見を尊重するために1歩引いた表現にしている感じもするし、もしかしたら思っていたよりも小佐内さんは乙女なのかもしれない。
Posted by ブクログ
これまで短編がメインだったこの<小市民>シリーズ、本作が突然長編になったことで、やや戸惑いを覚えた読者も多かったのではないかと思う。実を言うと自分もそうで、特に上巻は木良市内で発生する連続放火殺人事件が少しずつ盛り上がってくるとはいえ、どちらかというと常吾郎と小山内が別れた後のそれぞれの学生生活が描かれていて、冗長に感じる部分もあった。
これまで小市民として生きようとしてうまくいかなかった2人が、バラバラになって突然カップルとなり、それぞれの学生生活をそれなりに過ごしていく……という青春小説としては自然な展開ではあるが、この<小市民>シリーズでそういった展開を読みたかったかと聞かれれば、おそらくNoと答えるだろう。
もちろん米澤穂信のことだから、こういった細かな部分でも手抜きはなく、それなりに「日常の謎」が散りばめられている。とはいえ、これまでは常吾郎と小山内がセットで活動するのが当たり前になってしまっていたせいか、2人が別々に行動することそのものに、物語の流れをスタックさせるような効果があったことは否めない。
また、常吾郎と小山内がそれぞれ付き合うことになる仲丸と瓜野というキャラクターが、いかにも一般の高校生という感じで、2人に釣り合わないという違和感もずっと残ることになる。特に小山内については、瓜野が一つ下の学年で、しかもレギュラーキャラクターの堂島がいる新聞部所属の熱血漢ということで、不釣り合いであること甚だしい。明らかに物語の裏側で暗躍していることはわかるのに、彼女の存在がほとんど表に出てこないこともまた、気持ち悪さを構成する要素となっている。
要するに上巻は、かなり読者にとってフラストレーションがたまる展開を見せてくれるのだが、実はそのフラストレーションこそが著者の狙いであり、下巻のクライマックスに向けての助走期間であったことが、読み進める中で明らかになってくる。そして最後の瞬間には、この『秋期限定栗きんとん事件』というタイトルや作品そのものが、著者が読者に仕掛けた罠であることが明らかになる。
端的に言ってしまえば、上下巻に分かれた本作は、ストーリーの主要な謎である「木良市連続放火事件」を解くことが目的ではない。著者である米澤穂信が書こうとしたのは、前作で別れを告げた主人公2人の新たな邂逅と再生であり、謎はあくまでお互いの必要性を再確認するためのツールでしかない。劇中で言えば、1年間という高校生活の3分の1を使い、お互いの存在の重要さを再確認する過程を描くこと――それがシリーズにおける本作の位置づけなのだ。
実を言うと、ミステリー的には完全にすべての謎が解けるわけではなく、常吾郎と小山内それぞれのシーンの裏側に隠された部分もそれなりに残っている。例えば仲丸が突然常吾郎と付き合おうとした理由は最後までわからないままだし、小山内がおそらく「何か」をしたであろう生徒指導部教師の転勤についても、結局彼女が何をしたのかはわからないままだ。
また、連続放火事件に関する謎も、ミステリー好きなら途中で犯人がわかるのは間違いないが、劇中での犯人を明らかにする方法は、ややルール違反と言われても仕方がないかもしれない(余談になるが、米澤穂信は本作から時間が経った後に、そのものずばり『可燃物』という作品を上梓しており、彼にとっては何かしらの思い入れのあるテーマなのかもしれない)。
ところが読んでいる間は(正確には聞いている間は)、そういった多少の粗さが気にならないほどに、クライマックスで感動をしてしまった自分がいた。本作のように、何かしらの理由で世界とは愛入れない人間同士が、やがてお互いを支え合うようになるという展開は、自分には非常に刺さるテーマであり、1980年代生まれの自分たちにとっては「セカイ系」の一つの行き着く先でもあると感じている。
青春という期間が「自分を知る時期」だとするならば、本作は紛れもなく青春小説だと言えるだろう。本作とはちょうど裏表の関係にある<古典部>シリーズでは、主人公の折木が持つほのかな恋心がヒロインの千反田にはまだ届いていないのだが、この<小市民>シリーズでは、お互いの重要性をお互いが認識しているという意味において、よりハッピーエンドに近づいているような気がする。
個人的には、こういった作品をもっと多くの人に知ってほしいと思うのだが、おそらく今回のような感動は、春期と夏期を読んでいなければ得られないだろう。そういった意味では、本作という存在は、ちゃんとシリーズを読み続けている自分へのご褒美だったと思える。
最近になってアニメ版も制作されたことだし、これまであまり興味がなかったのだが、やはり配信でもいいからしっかり見てみなければならないという気になってしまった。
Posted by ブクログ
上巻では息を潜めていた小鳩くんと小佐内さんが下巻ではようやく主人公として戻ってきてくれて気持ちよく読むことができた
やっぱり瓜野くんはあんまり好きじゃないから上巻読むのが辛かったんだなと改めて感じた(ただそれも米澤穂信さんの狙いなのかもしれないけど)
二人とも別々の人と付き合ってるのも何だかなあという感じで上巻は読んでたけど、ちゃんと下巻の最後にはくっつけてくれて安心
次の冬季限定ボンボンショコラ事件は小鳩くんの推理と小佐内さんの暗躍に期待
Posted by ブクログ
天才ミステリー作家米澤穂信の人気小説シリーズ。
小市民を目指す、から小市民になりすますへ
小鳩くんと小山内さんは小市民になることなどできず、自分自身を受け入れていく…だとしても冬期以降も二人の人生は続く、二人は今度は小市民になりすまして生きていくだろう。
冬期ボンボンショコラ事件→ヒッチコックの「汚名」とフィンチャーの「ゾディアック」。
事件を通して小鳩くんの「知りたい好奇心」の倫理と感情の核心へ
「知りたい好奇心」を突き詰めることの暴力と害悪についてのこれ以上ないエンタメ的考察?
米澤穂信は「知る好奇心」を誰よりも追求してきたミステリー作家。この人には天地がひっくり返ってもこのテーマで競い合っても勝てない、といつも驚嘆させられる存在。
「古典部シリーズ」では探偵役の折木幸太郎と「知る好奇心」役の千反田えるに分けてキャラクターを立てることで「知る好奇心」の邪悪な側面が見事に薄められていて且つ青春ドラマとしての味わいが際立っていた。構成力、キャラクター造形とセリフの掛け合いの妙、エンタメとしての魅力がありすぎて表現者としては天才としか言いようがない。その上で今追求するにはかなり勇気がいる「知る好奇心」を突き詰める作家であるということが驚愕なのだ。
「好奇心」とは若さである。若いからこそ無知であり、無知であるが故に渇きがある。知りたいという欲望は若い人間に必ず訪れる。この若さは無論物理的な年齢だけがものさしではない。高齢でも若い、ということは有り得る。つまりそれは頭の柔らかい、固いという言葉で言い表わされる概念のことである。
歳を重ねると初体験という経験はどんどんなくなり、物事に対する新鮮さを失う。それだけではなく、体力もなくなりリスクを避けるようになり、狭い世界でルーティンをただ繰り返すことが自然になる。
それら全てが「好奇心」と相性が悪く、新しい世界に飛び込むことより狭い自分の世界を守ることが合理的にならざるを得ない。
「知る好奇心」に取り憑かれた人間のリアリティに踏み込んだ表現は稀だと感じている。それはあまりにもマニアックだし、ドラマになりづらい。そして何より救いがないが故に読者の心を引き裂く。フィンチャーの「ゾディアック」。
「小市民シリーズ」は取り憑かれた二人の天才の空中戦であり、この秋期はシリーズの中で最もカタルシスに満ち、小山内さんのフェチズムを堪能できる傑作である。
Posted by ブクログ
小市民に俺はなる!!と言っておきながら、相変わらずどう見てもその気が感じられない小鳩、小佐内コンビ。
学校に名を残したい小佐内さんの彼氏とそれを操って悦にいる犯人、承認欲求という自意識の葛藤という共通のテーマが(たぶん)ありました。
「コケティッシュ」というこの小説ではじめて知ったワードの自分の中での代名詞が小佐内さんになりました。
コケティッシュ小佐内。ズルいなこのキャラ。(アニメでも存分に発揮されてましたね)
このシリーズ、なんでスイーツを絡ませるんだろうと思ってましたが、大抵ビターな感じで着地する謎解きをスイーツを食しながら行うアンバランスさがミソなのだと勝手に解釈しました。
Posted by ブクログ
怒涛の解決編だった。あまりの面白さにイッキ読みしてしまった。上巻から丁寧に紡がれて来た様々なことが収斂する快感⋯!
連続放火の思いも寄らない真相が残す、ちょっとした苦味によって、とある人物のことが心配になった。立ち直れるだろうか。
このシリーズはとにかく、事件解決後の後日談的なエピローグで、もうひと驚きあるのがステキなのだが、本作の締めのシーンもまた良かった。秋期限定栗きんとんもとてもおいしそうである。小鳩くんと小山内さんの関係性からますます目が離せなくなった。
Posted by ブクログ
小市民になりたい小鳩くんと小佐内さんのお話し
人が死なないミステリーだから心が重くならずに読めて良い
瓜野くんはずっと掌の上で転がされてるなーってことがわかるからちょっとかわいそうにもなってしまう。。。
小鳩くんと小佐内さんの組み合わせが大好きだから
とっても嬉しい終わり方でホッとしました。
最後の火災現場での2人の出会いと、その後の公園でのやりとりの情景は美しいなと思うと同時に木の後ろで「もういいかい」をして待ってる小鳩くんを想像すると笑えてしまう。
「糠に釘、「他愛無い」で声をだして笑ってしまった 笑
Posted by ブクログ
小市民シリーズはそういえばミステリー小説でもあったんだというのを再認識させられた。連続放火魔を捕まえるために動いていた、小鳩くん。小鳩くんに放火魔だと疑われ、彼氏の瓜野くんからも犯人はお前だと言われたけど、実際は犯人を探している側だった小佐内さん。
まず、私自身が完全に小佐内さんが犯人だと思っていたから完全に騙されたし、小鳩くんの推理力や小山内さんが実は瓜野くんに対して自分自身が完全に無能だと思わせる完全な復讐をしていたところを見て、小市民の志からかけ離れた本性を見れて面白かったし、なんだかぞくぞくした。
最終的に、私たちは2人でいるべきだねと、2人がまたペアを組むことになるのだが、やっぱり2人でいるからより良いんだよなと思った。
Posted by ブクログ
前作の続きとなります。
やはり小佐内はブレないということを感じながらも面白く読むことができました。
結局環境は変わりながらも根本は変わらない2人でしたが、安定しながら面白く読むことができます。
Posted by ブクログ
放火犯の正体は読んでいて分かっていて、動機は瓜野を学校新聞で有名にしてあげたかったのかなと思っていたのですが、ただ馬鹿にしていただけとの事。残念でした。
結局、小佐内さんと小鳩くんは仲直りで栗きんとん食べれて良かった。
あと二作あるみたいですね、絶対読んで見届けようと思います。