あらすじ
人間にとっての「ゆるし」とは何かを問いかけるベストセラー『氷点』のその後。
自分が殺人犯の娘であると知った陽子は、睡眠薬自殺を図るが、一命を取り留める。意識が戻った陽子に、育ての親である啓造と夏枝は、陽子が殺人犯の娘ではなかったことを告げる。だが同時に、陽子は自分が不義によって生まれた子である事実を知るのだった。潔癖な陽子は、実母への憎しみを募らせていく。そんな陽子に特別な感情を抱く兄の徹は、陽子の実母に接近していき……。
1971年(昭和46年)にテレビドラマ化され話題を呼んだ。
「三浦綾子電子全集」付録として、随筆「『続 氷点』を終って」を収録!
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Posted by ブクログ
人気作の続編なんて、たいてい蛇足的なもので面白みは劣るのではないか。
そう思っていたのですが、間違いでした。
相変わらずイライラすることもありました。
しかし、冒頭、徹が夏枝に(私が)言いたかったことを全部言ってくれたり、終盤、夏枝が陽子に謝罪したりと、スッキリすることもありました。
由香子ちゃんも生きてて良かった。辰子さんがついていてくれるから安心。
それにしても、村井だけはずーっと一貫してクズですね!
また、初めて陽子の生みの親が姿を現しました。
彼女は、潔く過失を認めて、それを誰かのせいにしない。夏枝とは、対照的なところが印象に残りました。
何より、この巻には心に響く名言がありました。
「(前略)幸福が人間の内面の問題だとしたら、どんな事情の中にある人にも、幸福の可能性はあると思うの」(p262)
「真の意味で自分を大事にすることを知らない者は、他の人をも大事にすることを知らない」(p332)
「あくせくして集めた金や財産は、誰の心にも残らない。しかしかくれた施し、真実な忠告、あたたかい励ましの言葉などは、いつまでも残る」(p333)
なるほどなあと深く心に残りました。
今は生みの親を許せない陽子が、今後どうなるのか。気になります。
Posted by ブクログ
ちょうど自分が、陽子の年の頃に読み、何度か読み返しているはず。
陽子が茅ヶ崎で書いた手紙が響く。
切なくなる。夏枝の父親の言った「自分一人ぐらいと思ってはいけない」「一生を終えてのち残るのは集めたものではなくて与えたものである」
私の与えたものってなんだろう、思い浮かばない。
原罪、赦しについて考える19歳の陽子はなんと大人なんだろう。下巻を読む。
Posted by ブクログ
【一生を終えてのちに残るのは、われわれが集めたものではなくて、われわれが与えたものである】(ジェラールシャンドリエ)(陽子の茅ヶ崎のおじいさん)
続編があってよかった!一命をとりとめた陽子がどう自分の生い立ちを顧みて悩んでいくか、そして気になっていった元病院事務職員の松崎由香子はどうなったんだろうか?
Posted by ブクログ
氷点が良かったので続編。
氷点の細かい部分忘れていた所もあったけど、冒頭の方を読むことで思い出すことができた。
自殺未遂をした陽子が、また日々の生活に戻るまで。
周りでも村井は妻と子に出て行かれ、高木はまさかの結婚。失踪していた松崎由香子は失明した状態で見つかる。村井と夏枝はまた何だか嫌な感じだなー。
「一生を終えてのちに残るのは、われわれが集めたものではなくて、われわれが与えたものである」というジェラール・シャンドリの言葉が出てきて、とても印象的だった。
Posted by ブクログ
陽子はルリ子を殺害した殺人犯の
娘ではないことが判明した。
だが、陽子はあまり嬉しくなかった。
自分が不倫の末に生まれ捨てられた子供だった
と知ったからである。
陽子は生みの母親を憎み、
育ての母親の夏枝に対しても少し憎しみを抱く。
そして、陽子は北原とも連絡をほとんどとらなくなる。
しばらく失踪していた松崎由香子が見つかる。
目が見えなくなっていた由香子を
辰子が引き取った。
啓蔵は由香子のことが気になりだす。
進学を躊躇っていた陽子だったが、
やがて徹とおなじ北大を目指す。
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村井の嫌味がさらに増してきた。
嫌な奴すぎる。
夏枝も相変わらずだし、
啓蔵も今度は由香子かぃ!呆れるー。
陽子は変わらずに清い心を持っているなぁと
つくづく思う。。
Posted by ブクログ
【ネタばれあり】
氷点の続編。
前作ラストで死を選んだ陽子は一命をとりとめ、自分が殺人犯佐石の娘ではなく、全く別人の不倫の末生まれた娘だということを知らされる。その事実は潔癖な陽子をより一層苦しませる。
前作ではいかに夏枝が陰湿ないやがらせを繰り返そうと陽子の芯の通った強さと明るさに救われたしその昼ドラ的なドロドロ展開が面白かったわけですが、続編では陽子がブレブレになってしまい、なんだかすっきりしない。そんな中、兄の徹が陽子に黙って陽子の実母の三井恵子と接触したことから物語が展開していく。
辻口家と三井家、失踪した松崎由香子との意外な形での再会、高木の結婚、順子→徹→陽子←北原の恋模様などが描かれ、ゆっくりと物語が進む。
感想は下巻にて。
Posted by ブクログ
一生を終えてのち残るのは、我々が集めたものではなくて、我々が、与えたものである。(ジェラール シャンドリ)
「おもしろいものだね。あくせくして集めた金や財産は、誰の心にも残らない。しかし、かくれた
ほどこし、真実な忠告、あたたかい励ましの言葉などは、いつまでも、残るのだ。」
夏枝が、「生きてる、って、寂しいわね」って、ラストに言ってる…。
それに、対して、啓造が、つぶやいた、
「そうか、夏枝も、淋しいのだ。
その寂しい者どおし、なんで、つまらない争いを繰り返すのか。淋しければ、肩をよせあって、仲良く生きるべきなのだ。」
当たり前かも、知れないけれど、なかなか、
出来ない事。
しみじみと、夫婦とは?家族とは?何か、考えさせられました。
Posted by ブクログ
氷点の続編だ。陽子が助かり、それからまた、苦悩の日々が始まる。死ぬよりも生きることの方が困難なときもある。それでも陽子は名前のごとく、明るく生きようと頑張る。人間の幸福は、結局は自分自身の内部の問題だ。生きる意義や目的がつかめないうちは、空虚であり、虚無的である。満たされないということだり、幸福感が無いのである。ただ、不幸を知らない人には真の幸せは来ない。幸福が人間の内面の問題だとしたら、どんな事情の人であれ、幸福の可能性はあるのだ。
自分ひとりぐらい死んでも構わないとは思ってはいけない。その一人ぐらいと思っている自分に、たくさんの人がかかわっている。ある一人がでたらめに生きると、その人間の一生に出会う人全てが不快になったり、迷惑をこうむったりする。そして不幸にもなる。真の意味で自分を大事にすることを知らないものは、他の人をも大事にすることを知らない。
極道者や大悪人はいちばん救いやすい。自分で本当に極道者と思い込んでいれば、神様の前に頭が上がらない。これは、一番手がかからない。手のかかるのは、人の前にも、神の前にも、何一つ悪いことをしていないと思っている人間だ。
一生を終えて後に残るのは、我々が集めたものではなく、我々が与えたものである。と、ジェラール・シャンドリという人が言った。あくせくして集めた金や財産は誰の心にも残らない。しかし、かくれた施し、真実な忠告、温かい励ましの言葉などは、いつまでも残る。
続編では、許す、とはどういうことか、という話が中心になる。罪は、自分が考えているよりももっと深く、大きい。たとえ、人間の命をもってしても根本的に償い得ない。だから、罪は許される以外にどうしようもないのだ。罪をはっきり許す権威が必要なのだ。本書では、ありえないような偶然が重なり、そんなことはありえないだろう、と思うが、著者は読者にそのような物語として本書を書き記したのではないであろう。そのストーリーから浮かび上がる、人間の内面の問題や人間関係が引き起こす問題、嫉妬や欲望など、人間はわがままで身勝手で、自己中心的なものであると、語りかけている。
全2巻。続々編を期待したいような終わり方でもあった。