あらすじ
【通信支配を左右する最重要インフラ】
19世紀半ば以降の電信と大英帝国、20世紀半ば以降のインターネットと米国――。それぞれの時代の国際政治の覇権国は、電気通信ネットワークの発達に深く関与してきた。その重要インフラストラクチャとして200年近くにわたって君臨しているのが、海底ケーブル。その切断はたびたびニュースとなっている。本書は、地政学の観点から海底ケーブルの現代における意義を解明。さまざまな情報の断片を掛け合わせることで知られざる実態に迫る。
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Posted by ブクログ
海底ケーブルの敷設について、その歴史、技術的変遷の概要、地政学的な観点を紹介する本。
現在のインターネット社会において、島国の日本にとっては経済的にも地政学的にも、海底ケーブルが非常に重要な位置づけであることを認識した。
■日本の最初の海底ケーブル
1871年に長崎〜上海間に敷設。敷設事業者はデンマークの大北電信だが、大北電信の大株主がロシアであることから、安全保障の観点で後々まで問題になった。
■国際通信網の技術的変遷
同軸→人工衛星→光ファイバー
■サイバーセキュリティ
ケーブルが同軸だった時代は、ケーブルからの微小電流解析で通信傍受が行われていた。
同軸の時代が終わると、陸揚局が攻撃のターゲットとなる。
物理的切断の課題は今も昔も。
■日本の主な海底ケーブル関連企業
システム:NEC
ケーブルメーカー:OCC(NEC系)
端局設備:NEC、富士通
ケーブル敷設:国際ケーブルシップ、NTTワールドエンジニアリングマリン
Posted by ブクログ
あまり話題に登ることは少ないものの、現在最も重要なインフラストラクチャーの一つ、海底ケーブルとそれをめぐる国際競争についての本。
銅線ケーブル→人工衛星→光ファイバーという通信手段の変遷があり、その中でアメリカがイギリスからシェアを奪った歴史については全く知らず、素直に驚いた。またケーブルと戦争の関係性も非常に興味深い。
現代ではケーブルの切断をめぐるいざこざが絶えず、当たり前に使えているものがいきなり無くなってしまう日も来るのかもしれない。
Posted by ブクログ
インターネットを支えるインフラとして海底ケーブルの重要性を認識している人は意外と少ない気がします。島国である日本と国外とのネットのやり取りは現在は海洋底に敷設されている光ファイバーケーブルによって支えられています(実は、私もその事実を知ったのは大学生の時で、それまでは国際間通信の主役は人工衛星だと思っていました)。
本書は電信・電話時代の同軸ケーブルが主役だった時代から、現代に至るまで世界の覇権が海底ケーブルの覇権といかにリンクしてきたかを解説しています。
第一次世界大戦、第二次世界大戦期まで、海底ケーブルの覇権を握っていたのはイギリスでした。インドなど世界中に存在した植民地との通信を確立するため、主要国経由の海底ケーブルを支配し、第一次世界大戦では敵対国のドイツへのケーブルの切断、ドイツへの通信の傍受などを通じて戦争を有利に進めました。
第二次世界大戦後、一時的に人工衛星による通信が主流となり、時代遅れとなった同軸ケーブルによる海底ケーブル網は国際間通信の主役の座から降りることになります。しかし、光ファイバーの技術が登場すると、遅延のない通信、莫大な通信容量というメリットから瞬く間に人工衛星から主役の座を奪う存在となり、その覇権を握ったのはインターネットの発生国であるアメリカでした。
日本も太平洋戦争期まで、東南アジア諸国に点在した拠点間の通信などを確立するため、東アジアに広範な海底ケーブル網を確立していたことが述べられています。
本書は海底ケーブルの歴史、現状を地政学的な視点で解説している稀有な1冊です。この様な視点だけではなく、海底ケーブル敷設に伴う技術の紹介、海底ケーブルが切断される要因は何か(漁業や自然災害によるものが意外と多く、東日本大震災の際にも太平洋経由のケーブルが切断され、放射線の危険が残っていた洋上においても復旧作業は継続されたとのこと)、日本や韓国に存在する陸揚局(海底ケーブルが陸上に接続されるポイント)の紹介など、海底ケーブルを多面的な切り口で解説しています。
Posted by ブクログ
海底ケーブルについては、その重要性を感じながらも具体的な部分をあまり知ることがなかったので手に取ってみた。
予想外で驚いたのは海底ケーブルが想像以上に古くから存在したことである。
とはいえ現在の光ファイバーケーブルではもちろんなく、電報などの電信用。
その時代から既に敷設、活用、さらには傍受から切断まで、有事を中心に世を賑わせてきたようだ。
第三次世界大戦については、いつ始まってもおかしくないくらい世の中はピリピリしている。中には既に第三次世界大戦は既に始まっているとの言説もある。
そんな世相の中でも、確かに海底ケーブルはちょくちょく切断される。やはり容疑者はアウトローの代表国達であるわけだが、こうした微妙なラインでの切断は、テストというか、予行演習のようなものなのだろう。
日本は今のところはアメリカとの紐帯が太いし、間にある多数のケーブルを切ろうと思うなら、その際は太平洋まで出張る必要が生じる。しかもめっぽう深い。
最近では中国の空母が太平洋を不審に徘徊しているというのもあって、防衛省が異例の情報公開をしたニュースが出てきた。
これまでは直接的な攻撃のためかと想像していたわけだが、海底ケーブルという新たな視点が入って来ると、他国の一挙手一投足に別の仮説が立てられる。
衛星もあればドローンもあり、陣取り合戦は複雑な様相を呈している。
多くの変数が絡みあう中では、一事業者であっても、地政学、大局的な目線での行動が求められるのだろう。
Posted by ブクログ
クリントン=ゴア政権のゴア副大統領が1994年の演説で言った「経済発展の欠如が貧弱な通信の原因だと言う人々がいます。私は、それは因果関係が逆だと信じています。原始的な通信システムが貧しい経済発展の原因となっているのです。」という一説は通信技術が発展しインターネットが各国にとっての最重要インフラとなった今日この頃とても説得力を持つと感じた。
ハワイのカラカウア王が1881年に日本にとって歴史上初めて国家元首として来日した時、既に海底ケーブルのトップセールスを行っていたことは驚いた。
OCCという古河電気工業、住友電気工業、フジクラの3社が設立し、今はNECの子会社である企業が海底ケーブル製造において世界三強の一角を担っていることは初めて知った(残り二社は米サブコムと仏ASN)。
端局設備だとかネットワーク中立性とかの解説がもっと欲しかった。通信に関する用語の事前知識があればもっと分かりやすかったかも。
あまり論点が体系的でないことに加えて筆者の同じ主張が繰返し記載されていたので、これまでの出版物の継ぎ接ぎのように感じた。
また、序盤は日本各地の陸揚局を筆者が訪れる描写が長く読み飛ばしてしまった。