あらすじ
それでも、この世界で生きる。
バロットは壮絶な闘いを経て、科学技術発祥の地“楽園”を訪れ、
シェルの犯罪を裏付けるデータが、カジノに保管された4つの100万ドルチップ内にあることを知る。
チップを合法的に入手すべく、ポーカー、ルーレットを制してゆくバロット。
ウフコックの奪還を渇望するボイルドという虚無が迫るなか、
彼女は自らの存在証明をかけて、最後の勝負ブラックジャックに挑む。
喪失と再生の完結篇。
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
三部作の完結編です。
前作のカジノシーンはルーレットだったせいか少し退屈に感じたのですが、カードになった途端緊張感がすごくて引き込まれました。
劇場版では尺の問題なのか説明が不充分でなぜそうなったのか分からなかったところがちょくちょくあったのでそこら辺の経緯がわかってすっきりです。
ボイルドが最後ウフコックの温もりと声を思い出すシーンで泣いてしまいました……。
つらい……。
ウフコックの手で殺されるのを望んでいたような……。
ラストでバロットがウフコックもずっと自分の体温を感じていたんだと気づくシーンがよかったです。
あとがきで冲方先生がカジノシーンの執筆に熱中するあまり吐いてしまって笑ったと書いてあってその熱意にまた感動しました。
ボイルド推しなのですがマルドゥック・ヴェロシティはボイルドが主人公??
えっそっちも読もうかな。
Posted by ブクログ
本当にとてもとても面白かった。息つまる緊迫したカジノでの攻防も、その後のボイルドとの死闘もどちらも最高だった。単純に物語としての筋が面白いだけではなく、登場人物の心情やそれぞれの思いが丁寧に描かれていて胸が詰まる。社会機構の中で否応なく奪われ続けた少女、その象徴であるかのようなバロットがウフコックとドクターとの出会いによって死んでから甦り、そして中身を充実させ自らの意思で持って自らを守り自らの意思で歩いて行けるようになった、という事実が希望に溢れて止まらない。社会機構の中でどうしても搾取の対象にされがちな少女という存在が、その存在そのものを理由として奪われることも無く、尊重されているという事実が尊くて涙出てくる。シェルの悲哀も良かった。バロットをすり潰した張本人もまた、かつてすり潰された卵の中身であり、腐った卵であり、そして中身を抜くことで空っぽのまま空虚を量産し続けた、その悲劇の連鎖が本当に辛い。なんで世界ってこんなに辛いんだろう。シェルのことは全く擁護できないが、そんな辛さを生み出して再生産し続ける社会の仕組みに対する怒りと義憤のようなものが身勝手にも湧いてくる。それぐらい心揺さぶられる話だった。
ここ最近、使われる武器に人格があったとして、人間のために作られた武器に人格を持たせるということの歪さや、その人格に人間が彼らを使うことを肯定させる醜悪さということを考えることがあったのだが、その答えのひとつをあまりにも鮮やかに提示されたような思いがある。ウフコックは武器であり、道具である。人に使われることで有用性を示し、それが彼の価値となる。今ウフコックを手にしている少女バロットは、人間でありながらかつて物として扱われ、そのように廃棄された存在である。そんな彼女もまた、ウフコックを手にして濫用してしまった。かつて自分を無造作に物として扱い廃棄した男たちと同じ行動を取ってしまった。バロットはそのことを深く悔い、自分がまた彼を濫用するのではないかと怯える。けれど彼女は最終的に、ウフコックをそのようには扱わなかった。むしろ彼の有用性を信じ、「あなたを使いたい」と彼に対する無上の愛で持って答えた。ウフコックもまた、バロットのそれに「それが俺の有用性だ」と応える。余りにも強い。語彙が死んだ。ウフコックが道具であるということそのものに対する無上の愛と信頼がバロットからは惜しみなく注がれていて、ウフコックもまたそれに全力で答えている。「武器だけど人格があるからそんな風には扱えない」とかいう安直な逃げに至ることなく、人格のやどった武器であるウフコックを尊重し、愛し、その存在そのもの全てを受け止めているバロットの誠実さに本当に胸を打たれた。キスもハグもセックスも無いけれどそんなもので表現しなくたって愛は書ける。強い。すごい。そして人格のある武器だからこそできた、ボイルドの最期の瞬間のウフコックの優しさ、本当に本当に胸が詰まる。どうしてそんなに優しいんだお前もうやめてくれ…。バロット一生ウフコックのそばに居て欲しい。引き金のない銃、バロットにボイルドを殺させない、ボイルドの思いもその全て、ウフコックが全部を受け止めて、お前…お前…。とにかく本当に良かった。落ち着いたらちゃんと感想を描きたい…。
Posted by ブクログ
この本はマルドゥック・スクランブルシリーズ3部作の最後である。
勝負や戦いが満載だった。特にブラックジャックのシーンは凄かった。派手な戦闘ではなく、静かで動きが少ない戦闘だったが、その激しさが伝わり、手に汗握った。
Posted by ブクログ
バロットのような境遇の少女の心理描写がよく描けている…と思える。そういう経験ないのであくまで想像だが。
ブラックジャックでは、クライマックスの《イーブンマネー》で「は?何それ?」と置いてけぼりを食ったのが残念だった。
総じて、面白かった!
Posted by ブクログ
文体はいかにもハヤカワSFなんだけど、内容はとっつきやすいラノベのようなお話。カジノシーンは、重要なのはわかるけど3分の2ぐらいにしてくれたらよかったかな…
Posted by ブクログ
2と3の感想。
合本版を読んでいたら、いつのまにか3になっていたらしい…
「楽園」とかが出てきて、これはどこへ話が転がっていくんだろうとわくわくしたけど、カジノのターンがとても長くて、結局バロット個人の事件で終わってしまった。うーん次に期待…
カジノのゲームは、ルールがよく分かってないので雰囲気で。ハリウッド映画っぽいかんじの…を想像…。ルールを理解して読むともっと楽しいのかもしれないが。
あとは、ドクターの過去編があったらぜひ読みたい。