【感想・ネタバレ】なぜヒトだけが幸せになれないのかのレビュー

あらすじ

【シリーズ累計25万部突破! 「幸せに生きる」ための生物学講義】

『生物はなぜ死ぬのか』では死の意味を、『なぜヒトだけが老いるのか』では老いの意味を生物学的に考察してきた著者によるシリーズ最新作。第三弾となる本書のテーマは「幸せ」。
生物の中でも、ヒトは「ある変化」を機に幸せに生きにくくなったという。その理由とはなにか。幸せに生きる方法はないのか。生物学から「ヒトが生きる意味」を考える。

生物学的な価値観から「幸せ」=「死からの距離が保てている状態」と定義してみます。この定義に当てはめて現状を考えると、何がヒトの幸せの妨げになっているのかが見えてきました。意外なことにその原因の一つは、私たちの細胞一つ一つに存在する「遺伝子」にあったのです。ーー「はじめに」より

・ヒトだけに見られる「遺伝子と環境の不適合」
・幸せは「死からの距離感」で決まる
・進化的に見た生物の「幸せ」とは
・生物学的視点から考える「リーダーの四つの条件」
・移動をやめて格差が生まれた
・ヒトはテクノロジーの使い方が上手くない
・豊かさと幸せは一致しない
・地方に住むと「幸せ」になれる?
・ため込まないことの幸せ
・「幸せ」は遺伝子に刻まれている
・長生き以外の「幸せ」の要因
・ヒトは絶滅の危機にある? ……ほか

◆おもな内容
第1章 進化からみた生きものの幸せ
第2章 ヒトの幸せとは一体なにか
第3章 「幸せ」は遺伝子に刻まれている
第4章 なぜヒトは「幸せ」になれないのか?
第5章 テクノロジーはヒトを「幸せ」にするのか
第6章 「幸せ」になるために――生物学的幸福論

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Posted by ブクログ

ネタバレ

 現代社会でヒトが「幸せ」を感じくくなっている。その原因を著者は「遺伝子と環境の不適合」と説明する。
 700万年にわたる狩猟と採集の時代の間に、ヒトの心と体はコミュニティの中で他者と助け合って生きるよう最適化されてきた。コミュニティにおける他者との関わりの中で「ヒト」は「人」になっていった。協力、共感、利他性、正義、ベターを目指す性質などは、進化の過程で遺伝子に刷り込まれたヒトの本能。

 「遺伝子と環境の不適合」は「弥生格差革命」に始まる。農耕と定住化は富の偏りや身分格差をもたらし、コミュニティは集団から家族単位へと変化した。テクノロジーが発展し、寿命は延び、物質的な生活は豊かになったが、生活様式やコミュニティのあり方の変化は、ヒトが長い期間を経て獲得した遺伝的な性質とのギャップをさらに拡大し続けている。個人重視での現代社会でヒトは孤立と孤独を強め、「幸せ」を感じにくくなっている。

 自己完結の気楽さ、テクノロジーの便利さ、快楽の消費を知ってしまった人類は、もはや以前のような暮らしには戻れない。ヒトが幸せになる方法とは?

 「幸せ」=「死からの距離が保てている状態」という一貫した定義のもと、ときに自然界の様々な生き物たちと比較しながら「ヒトにとっての幸せ」について論じられている。
 生物学者による幸福への指南書。前々作「生物はなぜ死ぬのか」、前作「なぜヒトだけが老いるのか」と合わせて読むとさらに深く味わえます。

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2025年10月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

狩猟採集の小さいコミュニティで生活していた頃は、その日暮らしであり所有という概念が無く格差も無かった。

また、貢献に応じて分け前が配分されたため、多くの取り分を得ているということはコミュニティに貢献していることになった。そのため、豊かな人がいることは自分たちにも還元されることであり、自慢することは互いに嬉しい行為だった。

他者比較についても、コミュニティ内で貢献度が低い場合はコミュニティから離脱を余儀なくされる。単独の場合、集団でいる場合と比べて生存の確率も跳ね上がる。そのため、死を逃れるために常に自分のコミュニティ内での立ち位置を気にする性質が備わっていった。

自分はどうしても他者比較をしてしまうが、他者比較は遺伝子に刻まれた性質であり不可避であると一定納得できた。意志の力で比較を避けることは無理な話で、比較が発生しない仕組みや比較する性質を受け入れるといった方向を考える必要がありそうだ。

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2025年06月16日

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