あらすじ
三年の月日をかけて中国北部からチベットまで辿り着いた西川は、インドへ向かいそこで日本の敗戦を知る。密偵の任務は失うが、それでも新たな世界への探究は止められなかった。ヒマラヤを幾度も超え、さらにさらに奥へ。しかし旅は突如終わりを告げる。西川が著した三千二百枚の生原稿と五十時間に及ぶ対話をもとに、未踏の地に魅せられたひとりの旅人の軌跡を辿る、旅文学の新たな金字塔。(解説・石川直樹)
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Posted by ブクログ
・あらすじ
第二次世界大戦末期、8年かけて中国奥地からインドまでラマ僧に扮して潜入した西川一三。
彼の旅路を西川自身の著作とインタビューから描き出す。
・感想
西川さんは本当に稀有な人物。
こういう姿勢で自分を生きることが出来る人ってそうそういないと思う。
「自分を生きる」って自分勝手とか身勝手とかではなく西川さんの様な人のことを言うのかもなって思った。
「日本のため」という口実と目的、本人の気性と行動力が噛み合って実現した8年間の旅路は西川さんだけのもの。
私には彼の様な生き方は到底不可能なので、本になることでその8年間の旅路の一欠片でも感じることができて、とても楽しかった。
「自分を低い場所に置くことができればどこでだって生きていける」
「多くのものを貰いすぎ、背中のウーグルに溜め込みすぎるということは荷を重くすることであり、前に進む歩みを辛くする事でもある。それは拓鉢においてのことだけでなく生きていく上での大事な事なのかもしれない」
たくさん心に残った文章はあるけど特にこの二つが沁みた。
欲望にはキリがないからもっともっとと求めてしまう。
社会の発展には人類のそういう性質は必要不可欠なんだけど、進み続ける、上り続けるって疲れることでもあるよなって思う。
行動力と好奇心と忍耐力を持ちすぎて、生物として純粋に強く肉体的にも精神的にも恵まれてるのでどこでだって生きていける。
ただ西川さんの様な人は現代日本のような情報管理社会には適正はない人なんだと思う。
それでも晩年の様にこうと決めたら淡々とした日々を過ごすこともできるんだろう。
そこが彼の「強さ」なんだと思った。
Posted by ブクログ
帰ってきた日本は異国のようだった。懐かしの日本、よき日本は失われ、損なわれ、破壊されていた。人間らしさが失われていた。これまで旅してきた国や地域の「後進国社会」の方がはるかに人間的だと思えた。(下 p312)
徒歩で過酷な旅を行い、いく先々で信頼を得ながらインドまでの路を進む。今ではできない旅かもしれない。驚くべき出会いと年月。紀行文を凌駕して、ドラマにしか思えない。百魔を読んだ時もあぜんとしたがそれ以上。こんな日本人はもういない。
旅をすることで新しい土地に会い人に会い何かを得て何かを無くしていく。人生もそうなのだろうが、日本に帰ってからも本心は旅を続けたかったのだろう。