【感想・ネタバレ】アンドロイドは電気羊の夢を見るか?のレビュー

あらすじ

第三次大戦後、放射能灰に汚された地球では生きた動物を持っているかどうかが地位の象徴になっていた。人工の電気羊しか飼えないリックは、かくて火星から逃亡した〈奴隷〉アンドロイド八人の首にかかった賞金を狙って、決死の狩りを始めた! 現代SFの旗手が斬新な着想と華麗な筆致で描く悪夢の未来世界!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

もし唐突に自分がアンドロイドだと告げられた時、またはアンドロイドだと気づいてしまった時自分はどういう反応をするだろうか。或いはこの命題は自分が人間だから行えるもので、アンドロイドはこんな思索も行わない機械に過ぎないのか。
人間らしい人間。人間らしいアンドロイド。アンドロイドらしい人間。アンドロイドらしいアンドロイド。
リックデッカードははじめ、人間とアンドロイドは相容れない物として、簡単に引金を引ける存在だと断言していた。しかし、物語が進むにつれて、考えに確信がもたなくなっていった。死ぬ前に、ムンクの画集を買いたいと言った者、彼が一夜を共にした者、色んなアンドロイドがいた。人間でも、人間らしいアンドロイドに対して簡単に引き金を引ける者だっている。現代でも、自立アンドロイドがいなくても、かなり共感できるテーマ。
読み終わった時の喪失感が忘れられなくて、その感覚に囚われたまま感想を打ってる。デッカードが人間とアンドロイドの差異を見て、残りの賞金首を捕まえに行った時の苦しみは測りきれないだろう。今や、単なる廃棄処理では無く、殺人と変わりなかったと思う。
最後のデッカードが持って帰ってきた電気蛙を大切にしようとするらイーランの描写がとても印象的だった。今までの電気動物に対する感情を見てきたからこそ、この夫婦が共にアンドロイドへの認識を改めるシーンのカタルシスが凄かった。
この本が傑作だと言われていることがわかった。
本当に面白かった。

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2025年11月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

初めてSFを読んだ。誰でも親切心(人間性)と残酷さ(アンドロイド性)を持っている。親切心こそが人間を人間たらしめる。人間性を養うためには、感情移入する力が必要だ。そのために、今後も読書などを通して自分の感性を磨いていこうと思う。

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2025年09月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

人間とアンドロイドの境界はなにか?を非常に考えさせられる面白い作品だった。
これに対して本作では、他の生き物に対する共感性と定義している。
しかし主人公リックは動物を買うために、賞金のかかった人間そっくりのアンドロイドを冷酷に感じながらも殺していく。
この矛盾に対して自分がアンドロイドじゃないのかと自身に疑いをかける場面が印象的だった。
人間とアンドロイド、双方が人間性、アンドロイド性が混在しており、何が人間を人間と決定づけるのかを考えさせられた。
タイトルもこの作品にピッタリだと思った。

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2025年06月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

読み終えて、改めてタイトルがいいなと思った。人間とアンドロイドの境界線は何なのか?これから加速していくAI社会にも通ずる哲学的問いがあったように思う。

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【個人メモ・感想】

SFが苦手な理由として、設定が独特過ぎて世界観に入っていけないというのがある。この作品も最初そうだったが、登場人物などの固有名詞をメモすることで徐々に世界観が分かってきて読み進めることができた。次に読み進めにくい本に出会ったときは、このメモしまくり方式でいこう。

例えばアンドロイドが次のアンドロイドを生み出すという流れが確立され、次第にアンドロイドが増殖されてゆけば、外形的にはそれはもう生命なのではないか?と思った。アンドロイドが生存・増殖のために、資源の確保やテクノロジーの進化をオートマティックに行えるとしたら。太陽系外に知的生命体から見たら、きっと立派な生き物だと思うだろう。

イジドア君の献身がただ辛い。また、クモの足の描写は顔をしかめながら読んだ。

荒廃した世界の孤独とはどんなものなのか。

科学技術の進んだ設定だけど、『交換手』や『ホバーカーの窓を"巻き上げる"』という表現が発行時の時代感が出ててよかった。

この物語すべてが1日の出来事。デッカード夫婦は、蓄積された抑鬱や不安を生命体ではない一匹の電気ヒキガエルに救われた。

本を読んでいくことの事の恐怖。
本を読む前はその文章の中に、得体のしれない世界やこの世の真理や神秘のようなものが隠れているのではないかと、宇宙空間に放り出されたり深海に溺れていくような体験をするのではないかと恐れのようなものを感じることが多い。しかし読み終わってみると(自分が文章の多くを正しく理解できているとは思わないが)、全体像が見えてそれが自分が想像していた果てしないものではなく、少なくとも自分の理解が追いつく物理法則の元の物語だったのだとそれに残念とまで言わないが少し拍子抜けの感覚を覚えることがある。たくさん本を読んでいる人は、世界が自分の手に届く半径に収まってしまう事を怖く思ったりいないのだろうか。

人間の想像力の可能性。理解が出来るということは、人間の想像力から生み出される神秘を超えることは出来ないのではないか。

p30.
世界が自分以外の適格者(レギュラー)ためにあると気づき、その中で生きることの恐怖。
p79.
アンドロイドの識別法が、今の感覚からすると少しアナログだなと思った。
p115.
『原子力電池』当書発行から半世紀後の今も一般には使われていないな。
p183.
検査の結果、フィル・レッシュが人間と判明したが、そうなるとp165のガーランド警視が3年前から上司だったというレッシュの証言はおかしくないか?
p228.
抑鬱がアンドロイドへの同情心に関係する?
p234.
『(マーサー)老人が言った。「どこへ行こうと、人間は間違ったことをする巡り合わせになる。それがーーおのれの本質にもとる行為をいやいやさせられるのが、人生の基本条件じゃ。」』
p274.
バスター・フレンドリーが、マーサー教についてすっぱ抜きを行ったが、それが撮影されたものだとかマーサーは演者だったとかは人間にとってどうでもいい事では?と思った。同じ感覚を体験(エンパシー?)出来ることや孤独感を拭えることが人間にとって大切な役割なのでは?アンドロイドに理解ができないものだった?
p278.
マーサー教の墓穴世界の描写が、ジブリみたいだと思った。
p317.
『ときには、正しいことよりも間違ったことをするほうがいい場合もある。』
p322.(あとがき)
『合理的な解決のないままに終わる結末』個人的な感覚としては、大体の物語はそうではないか?と思った。自分にとって物語を見る新しい観点。
p327.(あとがき)
この作品(またはフィリップ・K・ディック)は、どれほど親切かという点で人間もアンドロイドも区別はしていないとの事。アンドロイドは電気羊の夢を見るし、不遇から逃れたいと感じる。そういう点が、他のサイバーパンクSFとは一線を画しているそう。

【登場人物など固有名詞のメモ】
リック・デッカード ー主人公、賞金稼ぎ(警察?)
イーラン ーリックの妻
グルーチョ ーリックが飼っていた羊
ペンフィールド発生機 ー気分を操る機械?
バスター・フレンドリー ーテレビやラジオの会社?通販なども。マーサー教を揶揄。
マウンティバンク ーエイジャックス型鉛製股袋の会社
アマンダ・ウェルナー ーバスター・フレンドリーのテレビやラジオに出演する女優
ビル・バーバー ーリックの住むコナプト(高層集合住宅)の住民
ジュディー ーバーバーの馬
フレッド・ウォッシュバーン ーバーバーの弟の勤め先の工場主
シドニー社 ー動物売買。動物の価格表がある。
マーサー教
共感ボックス ーマーサー教の装置?
ウィルバー・マーサー ーマーサー教の教祖?老人。
マーサー夫妻 ーフランクとコーラ。ウィルバー・マーサーの養父母?
デイヴ・ホールデン ーリックと同地区の賞金稼ぎの元主任
ランド・コーポレーション ー国防省(ペンタゴン)の科学的奴隷?
ジョン・イジドア ー特殊者(スペシャル)。ピンボケ?
ヴァン・ネス動物病院 ーイジドアの勤め先
ハンニバル・スロート ーヴァン・ネス動物病院長
ミルト・ボログローヴ ーヴァン・ネス動物病院の従業員?
ハリイ・ブライアント警視 ーリックの上司
アン・マースティン ー秘書
ミス・ワイルド?
ネクサス6型脳ユニット ーローゼン協会製造
T14型脳 ーズーデルマン社製造
フオークト=カンプフ感情移入(エンパシー)度検査 ーソ連のパブロフ研究所で開発。T14型脳はこれで判別出来る。
マクレー医師 ー電気動物の製造者
●マックス・ポロコフ ーネクサス6型脳ユニット搭載のアンドロイド。デイヴ・ホールデンを出し抜いた。ベイ・エリア清掃公社勤務。
○レイチェル・ローゼン ーエルドン・ローゼンの姪。ネクサス6型脳のアンドロイド。
エルドン・ローゼン ーレイチェル・ローゼンの叔父?
プロキシマ ー移住に失敗した星?宇宙船サラマンダー3号で向かっていた?(p.68)
サンドール・カダリイ ー世界警察機構所属(WPO)のソ連の刑事を装ったポロコフ。
●ルーバ・ラフト ーアンドロイドの2体目。女性。オペラ歌手。ドイツ生まれ。
ハンター武器や道具 ーp115
クラムズ巡査 ー巡査を装ったアンドロイド。
●ガーランド警視 ーアンドロイド。
フィル・レッシュ ーアンドロイドに雇われた賞金稼ぎ。
ジョージ・グリースン ーレッシュの同僚の賞金稼ぎ。
●プリス・ストラットン ーイジドアのコナプトに移住してきたアンドロイド。最初レイチェル・ローゼンと名乗る。
○ハスキング ーアンドロイド?
●ロイ・ベイティー ーアンドロイド。火星で薬局を営んでいた。
●アームガード・ベイティー ーアンドロイド。ロイ・ベイティーの妻。
ホルスト・ハートマン ー火星で切手屋を営んでいた。
●アンダーズ ーホールデンに最初に殺されたアンドロイド。
●ギッチェル ーホールデンに最初に殺されたアンドロイド。

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2025年09月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

環境汚染が進み、灰の雨が舞い生物が生きられなくなってきている地球。動物や虫までもが命を失い、ほとんどが人口物と化しているため命ある動物の希少価値もかなり高くなっている。そんな中、アンドロイド狩りのリックは火星から逃げてきたアンドロイド狩りをおこなうが、アンドロイドの製作技術も発展しており、もはや人間とアンドロイドの区別をつけるのも難しいほど。
最終、アンドロイドと人間の境界線とは何かわからなくなり、リックにとっても何が正しいのかもわからなくなる。。

私はあとがきのフィリップ・K・ディックが「人間とアンドロイドの境界線とは”親切心である”」と語っている言葉がとても好きで、この物語でディックが伝えたかったことはこれに尽きるなと感じた。

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2025年10月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

今まで人間だった存在がアンドロイドと分かった途端に、「彼」から「それ」へと表現が変わるのが興味深いです‼︎原書で読んでみたくなりますね〜! アンドロイドと人間を識別する尺度として、物事への感情移入度が使われているのも面白いと思いました! この作品に登場するアンドロイド達はとても人間っぽく描かれているので、感情移入度検査で彼らがアンドロイドだと判明する度に驚き、同時に人間とは…?とどんどん疑心暗鬼な気持ちになっていきます笑 昔に書かれた小説ながら、現代でも十分通用すると思いました!

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2025年12月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

アンドロイドは電気羊の夢を見ない… よね? でもきっと、黒山羊の夢は見るだろう。人間とその世界の仲間=自分たちアンドロイドとは相容れないモノとして。だから、それらの存在を消して(命を奪って)も何とも思わない。
「100%は解らなかったなぁー」と字幕のない映画を観終わって思うソレ。日本語訳で読んでいるのに、どこか未消化な感じが止まない。また、長編とされるのに、彼らの日常のうち数日を切り取っただけのようなストーリーだからなのか、ほんの少しだけ読んだような後味。

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2025年11月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

人間とは一体何か?
この本の著者ディックは、人間とはどれほど親切であるか、だと説いている。つまり、アンドロイドであろうと、親切さを持ち合わせた者は人間であり、人間であろうと、冷酷さを持ち合わせた者はアンドロイドなのだ。
主人公のリックは、妻を愛し生き物の命を慈しむ本物の"人間"だが、アンドロイドの意識を奪うことに容赦はせず、その上にあろうことかアンドロイドと性行為にまで及ぶ描写もある。一体、人間とはなんなのか?

無駄のないシンプルな語り口が特徴的だが、それがまた何十年も前に描かれたとは思えないほどの鮮やかな近未来描写を映えさせていた。
映画も観てみたい。

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2025年09月27日

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