【感想・ネタバレ】華氏451度のレビュー

あらすじ

「本」が禁じられた世界、焚書官モンターグの仕事は、本を見つけて焼き払うことだった。人々は超小型ラジオや大画面テレビに支配され、本なしで満足に暮らしていたのだ。だが、ふと本を手にしたことから、モンターグの人生は大きく変わっていく……現代文明に対する鋭い批評を秘めた不朽の名作。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

「ご存知かな?書物はすべて、ナツメグのように、異国から招来される香料のにおいがします。わしは子供のとき、書籍のにおいを嗅ぐのが大好きだった....」(p.165) ※この一文、自分がナツメグ好きなこともあって、ドンピシャに刺さった。

ディストピア小説で名高いだけあって、文句なしに面白かった!唯々諾々と受動的に生きてきた主人公が、ある少女との何気ない出会いで認識が一変し、自分の正気を保つために行動し...という話。自分が正気=世界が正気ではない、世界が正気=自分は狂気、という0か100かというとんでもない緊張を突きつけられ、人と出会い、一歩を踏み出していく、希望はあるエンディングだった。自分はちっぽけであることを忘れず(「書物のほこりよけのカバーみたいなもの、それ以上、何の意味ももってはおらん」p.307)、自分の中にある疑問や正義を問い続け、他者と協力していくこと、ディストピアに至らないようにというブラッドベリから警句だろうか。

我々の社会に欠けている、(書物はきっかけとなる)本質、閑暇、正しい行動、と言われた時に、今この私がいる社会は既にこの焚書の社会の一形態に突入しているというのが突きつけられる。とすれば、先程の0か100か問題も自分に向かってくるのである...

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2020年12月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

華氏451度とは摂氏233度で紙が燃え始める温度。
この物語の主役は昇火士(ファイアマン)ガイ・モンターグ。彼の仕事は政府が禁止した書物を発見し次第焼きつくすこと。しかし、彼は風変わりな少女との出会いや、本とともに自爆してしまう老女を目撃することで、禁止された本の中には何があるのか興味を持ち始め、こっそり本を集めるようになり、ひいては社会のゆがみを認知するに至る。

焚書が公然と行われる世界、というとどんな強権的な政府があるのかと想像するが、この作品世界の興味深いところは、民衆が自ら本のない世界を選んだことになっている点だ。禁止された本の中には聖書すら含まれているのだが、人の心を思索へ向かわせるもの、目に映る世界の下にもうひとつ、想像力を駆使することでしかたどりつけない世界の存在を示唆するものは、精神的な不快感を与えるという理由で世の中からどんどん排除されていった。詩の朗読によって引き起こされる心のふるえさえも不快感に含まれるというのだ。
結果として残されたのはラジオやテレビによる、人畜無害なドラマ(モンターグによれば、何か言葉はしゃべっているが内容は何もない)や、これまた意味のない音と光の刺激だけ。心のふるえを引き起こすような類の本は見つかり次第すぐに焼却。

1953年に出版されたこの本が想定した「近未来」は焚書のエピソードさえのぞけば、現実のものになりつつある。実際、世の中から本を消そうと思ったら、あるいは目の付かない場所へ追いやろうとするのは難しいことではない。ただ読まなければいいのだ。誰にも読まれない本はすぐに消える。

本が消え去りつつある世界はどうにもおかしい、と気づいたモンターグは、行動に移る。本を隠し持っているとおぼしき老教授に連絡を取り、彼の手助けを得て逃亡し、逃亡先で出版を試みるところまで話は進む。しかし、モンターグはすでに危険人物として上司にマークされており、たちまち追われる身となる。彼は身一つでとにかく逃げた。警察犬ロボットの追跡をまぬがれるため、河(ミシシッピ川)にとびこみ、流れ着いた先で本を記憶する人々に拾われ、彼らと行動をともにするようになったが、その矢先、モンターグが脱出して来た町は戦争のために爆撃されてしまう。

火で本(文化)を焼く仕事をしていたモンターグが目覚めた結果、河(水)に救われ、彼が捨ててきた虚妄の町が戦火で焼き尽くされるところが非常に象徴的で味わい深い。

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2015年08月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

焚書官ガイ・モンターグは密告をうけて本を焼くことを仕事としていた。ある日、隣に住むクラリスという少女と話をする。そこで問いかけられる。「あんた、幸福なの?」と。それ以降、身の回りの出来事に違和感を感じ始める。テレビに夢中になる妻、本のために自殺する老女、現状を肯定し知性を批判する上司、そして戦争に向かいつつある世界。

老女のもとから本を一冊だけ持ちだしたモンターグは元大学教授フェイバーに会いに行く。フェイバーは過去、政府による焚書に至る経緯におもてだって反対しなかった。結果、現在の状況を激しく後悔していた。そこで、モンターグに協力し焚書係の力を削ぎ、ほんの印刷を始めることに協力することにした。しかし、モンターグは妻や知人に自分が本を持っていることを明かしてしまう。その結果、妻の密告をうけて同僚に本を焼かれてしまう。

自宅の焚書の現場で上司のビーティ署長を焼き殺し、逃亡したモンターグはフェイバーから聞いていた浮浪者グループのもとに向かう。彼らは元大学教授などで、政府の方針に逆らう人たちだった。その頃、遂に戦争が始まり街にいた人たちの多くは死んでしまう。そしてモンターグらのグループは自分の知識をこれからの社会に役立てようと乗り出していく。

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2015年07月04日

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ネタバレ

本を読むのはもちろん、持っているだけでもダメ、本があるのが見つかったら全て焼かれてしまう、そんな世界を描いたディストピアもの。

ジョージオーウェルの「一九八四年」も同じような世界観だが、読者の掴み方はブラッドベリの方が上では、と思うぐらい一気に引き込まれる。

今のネット社会からすると、禁書の世界はあまり共感できる世界観ではないかもしれない、本好き以外は。

本を焼く側の主人公が本の素晴らしさを知り、追われる身になり、迷う、これにドキドキさせられながら、主人公に気持ちに入り込んでいく。

感情のなかったところに感情が芽生えていく様に心動かされたからだろう。

ただ少し残念だったのは、ラストの展開がグダグダだったなぁ。

もうちょっとスッキリしてれば。

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2014年07月21日

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ネタバレ

ALTER EGOのエスが勧めてくれたので読んでみた。

本が禁止され焚書される世界の話で、紙の発火温度がタイトルになっていることにセンスを感じて読み始めた。

正直物語は面白くない。描写が詩的で仰々しいため進むのが遅い。350ページ近くあるが短編小説でも消化できるほどの物語しかない。しかも最後は戦争がすべてリセットしてぶん投げエンド。

ただ問題提起は凄まじく正しい。現在の人々の殆どが直面している課題に直撃している。
受動的にダラダラとインプットされる情報、思考する暇のない絶え間ない情報とそれに対する中毒、人生において死ぬまでにすべきこととはなにか。
まさしく今私がどうにかすべきと思っていた課題であり、その解決策として本を読むことと記録を付けることが提案されている。

私はまずは読書を始め、簡単なアウトプットを行うこととする。

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2023年01月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 西尾維新『恋物語』の新聞全面広告から。『ひたぎサラマンダー』の「サラマンダー」のわけも読んでみて分かった。しかしガハラさんの言う通りこれをボーイミーツガールとは読めない。クラリスは凄く好きになっただけに出番が序盤だけだったのが残念。
 焚書について扱った小説。『1984年』、『沈黙の春』とかと同じ系統になるのか。1950年代から見た未来で現在だと違和感があるところも。管理体制が甘さが現代からみると考えにくい。車の延長線上の高速マシンはあるが、監視カメラがまったくない。携帯のような端末もなくラジオがポータブル化したものがあるだけ。これは作者の予想が間違っていることを指摘するものではなく現実における社会の変化の激しさに驚くもの。今から50年後の未来も想像とは全然違ったものになっているだろうし。
 舞台となっている場所が地理的にアメリカなのは分かるが政府の存在が薄い。また戦争をしている相手もよくわからない、解説では内戦と書かれていたが詳しい説明は無かった。西暦にすると何年になるのかも分からない。
 焚書の対象がほぼすべての本というのも謎。特定の思想や民族に関する本だけというのなら歴史上あったことがだ無差別に全てが禁止ということはあり得るだろうか。学校は映像教育のようで本を書くことも禁止。そうなると高い文化レベルを維持しているのがなぜかという疑問が出てくる。
 実体のない映像を写し人々を骨抜きにする作中の「テレビ」は現代のテレビやゲームに当てはまるところがある。それを見ているときは楽しいが裏返すと考える時間を奪われ現状に満足してしまう。本を読む大切さは現代においてますます増していると思う。
 最後に、文の中に現実と夢の区別が付きにくかったりして読みにくい個所があった。また訳が変にひらがなが多いのも気になった。

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2014年09月04日

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