あらすじ
3.11以降、原発を絶対悪と決め付け、その廃絶こそが「正義」という論調がマスコミでは吹き荒れている。しかし、この世にリスクのない技術は存在しない。原子力を代替するはずの「自然エネルギー」の実力のみならず、転換するリスクや懸念材料を冷静に見つめるべきではないだろうか。そんな感情論を超えた議論のために、原子力技術、放射線と健康被害、経済的影響を検討し、将来を見据えたエネルギー政策を提言する。
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Posted by ブクログ
原発問題は原子力工学の専門家、放射線医学の専門家、エネルギー政策の専門家や原発設置地域の行政、住民などが関わっているが、全体を俯瞰する総合的な専門家はいない。(本来なら政治家や官僚がそうあるべきなのだろうが…)
その中で経済学やリスク分析の専門家であり、物理学の博士号を持つ科学者である著者がフラットな立場で原発問題についてデータに基づき評価した本。
こういったデータ分析的な話は個人的に好きなこともあり大変面白かった。発電のための人的犠牲を減らし、地球環境を守り、日本の財政を持続させるためにも原発の再稼働、増設がされることを期待します。(増設に関する合意形成の難しさは途方もないと思いますが)
以下抜粋
代表的な発電方法における1TWhあたりの死亡者は
化石燃料21人
ソーラー0.44人
原子力0.03人
となっている。これは大規模な採掘や造成、パネルの取り付け作業に伴う事故が起因する。
また、化石燃料は大気汚染により年間100万人の死者を出すため、その他の発電とは比べ物にならない犠牲のもとに成り立っている。(大気汚染は直接の死因ではないが)
さらに言うと化石燃料はCO2の排出量も多いため、地球温暖化によるリスクの将来世代への先送りも無視できない。
放射線被曝による健康被害は福島、チェルノブイリの事故で超低リスクなことが判明している。要は実際のリスクではなく感情論が先行している。チェルノブイリ原発事故があったウクライナは原発を推進。
クリーンエネルギーについて、そもそも太陽光や風力は化石燃料や原子力(放射性ウラン)のエネルギー密度に対して圧倒的に低い密度のため多少の技術革新などがあっても発電効率の悪さは変わらない。
日本のエネルギーポートフォリオの中で原子力を全て止めるとなると追加の化石燃料の購入のため約4兆円の出費が増える。(日本の税収が40兆円程度)
一度臨界に達した原発は連鎖的な核分裂反応が継続するために40年ほどは閉鎖できず、管理を続ける必要がある。どうせ管理するならエネルギーを取り出す方が得。
Posted by ブクログ
日本の発電は、火力、原子力、水力、太陽光、風力などがありますね。
本書には、各発電方法の比較、地球環境問題、放射線、原子力の仕組み、将来のエネルギー開発について書かれています。
個人的には、地球環境や原子力の仕組み、次世代原子力発電に関して大変参考になりました。
地球環境問題に興味がある方にもオススメしたい1冊です。
この本を読んで思ったことは、今まで東日本大震災時の原子力発電所の事故はテレビや新聞からの情報に対する第一印象で感情的に判断していた事に気づきました。
大気汚染に関しては、やはりもっと問題視するべきだと思います。2015年末にフィリピンに行きましたが、首都マニラの大気汚染はひどかったです。交通量の多い道の歩道を30分ほど歩いただけで、ノドの調子がおかしくなり咳が止まりませんでした。
将来を見据えると、開発途上の国が発展するのに、必然的に大気汚染問題を向き合う事になると思います。日本は世界の船頭に立ち、安全かつスマートに地球環境汚染を対処・解決していってほしいです。