あらすじ
伊豆湯ヶ島の小学校を終えた洪作は、ひとり三島の伯母の家に下宿して沼津の中学に通うことになった。やがて上級の不良がかった文学グループと交わるようになり、彼らの知恵や才気、放埓な行動に惹かれていく――。
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上巻の洪作はまだ子供のように感じる。英語の宿題をやったか?と増田に聞かれるだけで不安になるし、鞄をなくしてびくびくする。三島のいとこたちに会えばどぎまぎする。美しい従姉ではなく、きつく当たりつつも心の優しい従妹のほうに好感を持つのもなんだか身に覚えがあって気恥ずかしい。
若い時代の心情を鮮やかに描く井上靖の技術に読み返すたびに引き込まれる。
上巻のうちに金枝たちとの出会いがあるのもいい。金枝のグループが目立っていたことを暗示する。冒頭の金枝達の行動と会話は、やはり大人びて感じられる。
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「しろばんば」の続編。
子どもの頃に読んだときは、続編があるとは知らなんだ!
中学生になった洪作の生活を描いています。
「しろばんば」と同じく、大事件が起こったり手に汗握らせたりすることなく、淡々と日常を描いているのに、次が読みたくてたまらなくさせる! 名作だー!
キラキラと眩しい先輩たち、仲はいいけど脱皮しきれない子どもっぽさが鼻につく同級生、美しいけれど性格の悪い親戚の女の子…
そんなものたちに翻弄されながら、少しずつ成長していく洪作。
あぁ、おぬい婆さんにもこの成長を見せてあげたい!
「子どもを産むなら女の子!」と思ってたけど、この洪作の青くさい、成長っぷりを見てると「男の子もいいかもなー」なーんて思ってしまった。
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『しろばんば』の続編。ちょうどこの作品の洪作と同じ年頃に、読んだ以来だと思う。複雑な家庭環境で繊細に立ち回っていた湯ヶ島時代の洪作に比べ、思春期を迎えちょっぴり”坊”の道をそれ始めた洪作に、当時はあまり魅力を感じなかった。オトナになり、今回再読して、物語の中の洪作が引き起こすあれこれを、まるで姉のような・・・母のような?・・・広い心持ちで受け止められたことで感慨にフケたのであった。
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井上靖自伝3部作の2番目。中学時代の多感な年頃が舞台。
女性というこれまで道の生き物への接し方と刺激的な友人との出会いは、主人公を少年時代からぐっと成長させるが、オトナになりきれないココロとのギャップがまた切ない。
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耕作の中学時代が書かれている。
鞄をなくした時の表現が的確で、読んでいるこちらもはらはら。出てきてほっとしました。
かみきの家の姉妹の描写が印象的。
正月に帰った耕作が、叔父より読書感想文の宿題をもらうが果たして達成できるのか、次巻がたのしみ。
日常を描き出しているが、その表現が素晴らしく、ストレスなく読み進める。何気ない日常が過ぎる中で、次はどうなるのかと先を続けて読みたくなる希有な本。
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30数年前に読んだ。今回再読。ほとんど内容を覚えてなかった。
淡々としていて山場もないけれど、瑞々しい。人物描写も味がある。
久々の文学作品。後編も読みたいけれど、いつになるかな・・・
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読んでいると「礼も言わない」「挨拶もしない」といった
ことが原因の批判非難中傷がずいぶんたくさん出てくる。
人のうわさ話ばかりで物語が進んでいっているようで
本作は「しろばんば」ほど愛着を感じはしないのだが
それでもサクサク読み進められるのは
なんだかんだいいながら日本人の原点的な感覚に
馴れた心地よさを覚えるからなのであろう。
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「しろばんば」の続編。
中学生になった浩作が描かれている。
田舎では優等生で、勉強がよく出来た彼が
都会で揉まれつつ様々な経験をしていく思春期小説。
大正時代の地方都市の、遠く薄く、それでいて生々しい世界が描かれている。
おぬい婆さんと過ごした日々が全てだった幼少期に比べ、浩作が大人になり世界が広がった反面
色あせていく思い出のもの悲しさ。
旧制中学の雰囲気や友人とのかけひきなど、経験してもいないのに懐かしい気持ちにさせられる。