あらすじ
手に掬い取れるものが、星のようにうつくしく輝きを放つものであればいい。
そのひとつに、わたしとの記憶もあったら、嬉しいな。
千鶴が夫から逃げるために向かった「さざめきハイツ」には、かつて自分を捨てた母・聖子がいた。他の同居人は、家事を完璧に担う彩子と、聖子を理想の「母」と呼び慕う恵真。
「普通」の家族関係を築けなかった者たちの奇妙な共同生活は、途中、うまくいきかけたものの、聖子の病で終わりを告げ――。
すれ違う母と娘の感動長篇。
〈解説〉夏目浩光
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
個人的マイベストです。
自分の不幸を他人のせいにしているうちは幸せになれない、ほんとにその通りだなと思いました。当時の自分と重なりグサっときました笑
母と再会した際の母の謝罪一つないあの態度は正しく彼女なりの愛だったと思います。
自分の人生、幸も不幸も自分の選択に責任を持って生きていきたいものですね。
Posted by ブクログ
今回も素敵なお話だった。
52ヘルツのくじらたちのように、全てスムーズに事が進む感じではないんだろうなとは思ってたけどやっぱり弥一が乗り込んでくるとは……しかも岡崎まで……つくづく美保の身勝手さが嫌になったけど、まあこれから色々学んで行って欲しいなって思った。
でも、千鶴も周りの人達に助けてもらうだけじゃなくて自分で自分を変えようと努力して、実際に変わって弥一にも言い返してやったところがすごくスカッとしたし、最初の千鶴と本当に別人に成長していてかっこよかった。
ほんと人とは恐ろしい生き物だと思った、本能のままに生きる人、他人を傷つけて平気な人、それから守る人、努力する人…みんな人間かあ
星を掬うって、すごく素敵なタイトル。
最後まで読むと、タイトルの意味が分かる。
素敵な作品だった〜。
Posted by ブクログ
「娘を捨てる母」何も知らない私たちはきっと
酷い母だと言葉を投げ捨てる人がほとんどだと思う。
でも酷い母だけが全てじゃなく、
母自身にも理由があって、
そんな母と娘が再会することでお互いのすれ違っていた気持ちに理解し合う。そんなお話。
でもそんな簡単になんでも上手くいくことはなくて
再開する頃に母は若年性認知症を患っていた。
物事が上手く整理出来なくなっていたり、
こんな姿に母がなっていると納得したくないのも凄く共感できた。私も同じ立場で母を見たらきっと辛くなる。母もこんな自分を娘に見られるのが辛いと思う気持ちも分かる。最初は冷たい母だと思いこんでいたけど娘を守るために最後に全身全霊かけて戦う姿が
ものすごく感動した。こんな文で纏めるのは勿体ないくらい素敵なお話だった。
どうかまた夏の思い出を二人で味わって欲しい。
Posted by ブクログ
幼少期に捨てられ、確執のある母との再会の話。
単なる再会ではなく若年性認知症を患い、徐々に過去を思い出せなくなる母に主人公の千鶴が自分が捨てられてから歩んだ人生が如何に不幸だったかを訴える姿が継続的に描かれて痛々しい。
気持ちを汲み取れる一方で、親はどこまで子の将来の責任を負うのか、と漠然と考えていたら「不幸を親のせいにしてもいいのは、せいぜい未成年の間だけだ」とか十代で整理しておけと叱る登場人物が現れてすっきり。
「家族や親って言葉を鎖にしちゃだめよ」という言葉がとても印象的。
血縁は常にポジであって欲しい。
Posted by ブクログ
捨てられた娘と捨てた母の物語。
元夫のDVから逃れられない千鶴。自分を捨てた母と再会する機会ができ、それをきっかけに母親の所有するシェアハウスに逃げることになります。
自分の不幸は母親のせいだと思っていた千鶴。
「不幸を親のせいにしていいのは、せいぜいが未成年の間だけだ」と言われ、ハッとします。
自分が不幸のどん底にいると、つい、自分だけが不幸で世の中は不平等だと思ってしまいます。でも、周りをよく見ると、気付くことはたくさんあります。
親子だって別々の人間。
一見身勝手な母親でも、母親側の気持ちを読めば、その気持ちも痛いほどわかります。
娘には自分の人生を生きていってほしい。
自分の母のことを想い、自分の娘のことを想い読みました。重いテーマですが、読んでよかったです。
Posted by ブクログ
苦しみと向き合いながら生き続けることの難しさが痛くて涙が出た。
主人公を含め、過去の鎖に縛られて変われない自分や、未来への不安を抱えたままどうして生きていけるのだろうと思った。序盤は私ならとっくに諦めて死ぬことを選ぶかもしれないとも思いながら読んでいた。
幸せになりたいとか、いつか救われるかもしれないとか、そういうぼんやりとした幸福への執着を捨てきれなくて、だから人間はそう簡単に死なないのだとも思った。
人並みの幸せをとっくに諦め、自分に縁のないものだと手放したつもりだったのに、私の人生の主人公であることをやめられないのだな。
「私の人生は私が最後まで支配する。」格言のような聖子の言葉で心がビリビリと虐められるようだった。
私の大切な誰かが掬った星が、できれば美しく暖かいものでありますように。
Posted by ブクログ
私も10代の時から自分の嫌な部分を全部家族のせいにしてきた。特に母親。捨てられたわけじゃないけど、当時の私の気持ちを大切にしてくれる人があまりいなかったと思う。寂しかったし、自分でも自分を認めることができなかったから苦しかった。
「私が歪ませた人生」という言葉に、そうだなと思った。子どもの時は欲しかった愛情を十分にもらえなかったけど、それを自分の価値と結びつけて性格を歪めたのは私だった。恵真さんみたいに愛情をもらえず育っても捻くれてない人って本当にいるから。私はどこかで解釈を間違えた。
「わたしの望む世界では母が生きられず、母の望む世界では、私が生きられなかった。」という一文が私にとってアンサーだった。
私と母は相性が合わなかっただけだった。
愛されたかった私の気持ちも間違ってないけど、お母さんの人生も尊重されるべきものなんだと気付いた。
そう思うと、寂しかった自分の子供時代を肯定できた。
千鶴さんと一緒で、母親への恨みは愛されたかったの裏返しで、本質的には母親のことが好きだ。
一人暮らしを始めてから母親と仲良くなれたけど、これからも私は母親が大好きだって心から思える。
過去の私に、それはお母さんのせいじゃないよって言ってあげたい。大好きな人を悪者にして自分を不幸にしないでって伝えたい。
Posted by ブクログ
母親に捨てられた娘・千鶴と、娘を捨てて自分の人生を選んだ母・聖子の物語。『捨てた側』と『捨てられた側』の後悔や怒り、悲しみがひしひしと伝わってきた。千鶴と聖子だけではないところでも母娘のつながりが展開されるところも、互いの置かれた立場の輪郭がはっきりしていた。
聖子は若年性認知症を患っていて、頭のなかの『記憶』という大きな海に、今まで経験してきた思い出が制御できないまま沈んでいく。だから千鶴は、母親である聖子が時折そこから掬いあげる記憶が、星のようにキラキラと輝くものであってほしいと願う。なんて美しい表現なのだろう。
町田その子さんの文章はなんてきれいなのだろう。
自分の人生の責任を、他人に委ねてはいけない。
本当に今の私に必要な言葉だった。この本に出会えてよかった。