あらすじ
手に掬い取れるものが、星のようにうつくしく輝きを放つものであればいい。
そのひとつに、わたしとの記憶もあったら、嬉しいな。
千鶴が夫から逃げるために向かった「さざめきハイツ」には、かつて自分を捨てた母・聖子がいた。他の同居人は、家事を完璧に担う彩子と、聖子を理想の「母」と呼び慕う恵真。
「普通」の家族関係を築けなかった者たちの奇妙な共同生活は、途中、うまくいきかけたものの、聖子の病で終わりを告げ――。
すれ違う母と娘の感動長篇。
〈解説〉夏目浩光
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Posted by ブクログ
私はセンチメンタルな気分になると本を読みたくなるだが、そんな時にちょうど心に響く良作だった。
主人公の千鶴とその母親である聖子。2人を取り巻くそれぞれ複雑な境遇の恵真と彩子。少しずつ背景は違うもののお互いの足りない部分を補い合って共同生活を始める。一つ屋根の下、同じ時間を共有することで心を通じ合わせていく展開に心温まった。
主人公と母親のすれ違いにより、自分の不幸をその境遇のせいにし続ける。どうしようもないことなのかもしれないが、いつかはその呪いから解放されなければならない。辛くても自分の人生は自分のものだ、と聖子の言葉が思い起こされる。
また、聖子は認知症患者であり、「かえりたい」と口にする。「かえりたい」とは場所だけではなく、時間でもある。昔のあの時に戻りたいのだ。
自分の半生を顧みた時、両親の「かえりたい」ところを作ってあげられているだろうか。過去を取り戻すことはできない。今できることを一生懸命に取り組んでいくしかないのだ。
Posted by ブクログ
「美保ちゃんの苦しみは、彩子さんのせいじゃない。あなた自身の責任だよ。」
わたしの不幸は、母に捨てられたことではない。他でもない、わたしのせいだ。
抱えていた母への憎しみはただただ「愛されたかった」「寂しかった」とか、そういう気持ちが内側で腐ったり、歪んだりしたものなんだと思った。
それに気づけた主人公は本当に良かったと思う。
私もかつて親を憎しみ、恨んでいたからとても心に沁みたし、「私の人生は誰にも縛らせない!」って言葉も心にグッときた。
内容がとても重たいけど、また再読したい本です。
Posted by ブクログ
親に捨てられた女性が人生を取り戻す話。めっちゃ良かった。
主人公は幼少の頃母に捨てられた。そのひと月前に二人で行った小旅行の思い出をラジオの賞に応募すると、母と同居しているという女性からのコンタクトがあり、主人公は母と再会を決める。しかし、対する母は若年性認知症を患っており、みたいな話。
小旅行を美化していたことに気づく描写が良かった。序盤の恵真の無遠慮な行動と、結城が主人公(初対面)に正論くらわせすぎなシーンと、美保が急に感情移入しやすいキャラになったのが少しあれだけど、他はすごく良かった。序盤の恵真はやばい。
面白かった。
Posted by ブクログ
記憶が自分の底に沈んで自分でも手で掬えなくなるのが認知症っていう表現が良すぎ。
色んな傷を負った4〜5人の女性が同じ屋根の下でぶつかり合い、苦しみながらも少しずつ溶け合う感じが好きだった。
Posted by ブクログ
前作の52ヘルツのクジラから続けて読みました。
個人的には前作よりも好みでした。
前作の琴美視点で書いてみたのが今作らしいですが、今回の作品も、世間から弾かれた人・自分の価値をゼロにしてしまってる人を掬うような内容で良かったです。結末や構成は普通ですが、そこに至るまでの感情の出し方などが上手くてとても読みやすかった。
被害者だけでなく加害者の背景や心情も重要であることに気付かされました。また、辛いことに自分が被害者であっても、そこから自立しなければいけないのは自分であることも痛感させられました。
被害者に対して多くの人は慰めや可哀想な目を向けますが、それこそその人を傷つける行為になるかもしれない。
なにがあっても、その人の人生はその人のものであり、だからこそ、自分のせいで人の人生を引きずりたくない。
Posted by ブクログ
誰かを恨むとき、人は知らぬうちに自分の人生へ呪いをかけている。
些細な親の言動が、いつしか見えない鎖となって心に絡みつく。
それでも——自分の人生の責任は、自分が引き受けなければならない。
Posted by ブクログ
捨てられた娘と捨てた母の物語。
元夫のDVから逃れられない千鶴。自分を捨てた母と再会する機会ができ、それをきっかけに母親の所有するシェアハウスに逃げることになります。
自分の不幸は母親のせいだと思っていた千鶴。
「不幸を親のせいにしていいのは、せいぜい未成年の間だけだ」と言われ、ハッとします。
自分が不幸のどん底にいると、つい、自分だけが不幸で世の中は不平等だと思ってしまいます。でも、周りをよく見ると、気付くことはたくさんあります。
親子だって別々の人間。
一見身勝手な母親でも、母親側の気持ちを読めば、その気持ちも痛いほどわかります。
娘には自分の人生を生きていってほしい。
自分の母のことを想い、自分の娘のことを想い読みました。重いテーマですが、読んでよかったです。