あらすじ
人はなぜ、身に余る位や物を望むのか。
「この者は、〈またうど〉の者なりーー」
徳川家重の言葉を生涯大切にし続けた老中・田沼意次。
彼は本当に、賄賂にまみれた悪徳政治家だったのか?
【またうど】愚直なまでに正直なまことの者
全てを奪われても、志を奪うことは誰にもできない。
いつか必ず、次の一里を行く者がある。
財源としての年貢が限界を迎え、江戸税制の改革者として商人にも課税。
身分の低い者も実力さえあれば抜擢し、交易に役立つ俵物のため蝦夷地開発を決定。
前例や格式にとらわれず、卓見と奮迅の働きで日の本を支えた田沼意次は、
なぜ突如老中を罷免され領地を失ったのかーー。
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Posted by ブクログ
大河べらぼうと合わせて読みました。ドラマだけではわかりにくかったところ(田安の養子縁組や一橋家の関係など)が理解できた。白眉毛の武元がいい人だった。全体的にいい人が多い、最期もハッピーな感じだった。
Posted by ブクログ
「まいまいつぶろ」「御庭番耳目抄」に続くシリーズ物3作目。今回の主人公は田沼意次。学校教育では「ワイロで腐敗した政治家」と教えられるも、剣客商売では美冬殿の父親であり賢政家と描かれる、歴史上の有名な人物。
この作品でもド正直者(タイトルのまたうどとはその意)の政治家として描かれる。前2作まででも、主要な登場人物からも慕われており、若いころからその天才ぶりを表かれていたままの展開が続くが…。
家治の引退に伴い、一挙に権力を奪われるだけでなく、増税や天災の責任までも擦り付けられ、悪政の評判を押し付けられる。意次自身も予想してたとはいえ、そのはしご外しっぷりは悲愴なもの。
今の時代もそういうことをしていないか?今悪者として色々と叩かれている人々は本当に悪いだけなのか?必要悪を背負う立場にあっただけだとか、何かを隠すためスケープゴートにされているとか、そういう情報操作があって踊らされているだけではないか?
明確に悪いヤツを作って、そいつのせいにしておくのは凄く楽な考え方で、悪を叩く正義の立場に身を置くのは甘美な体験なのだが、立つ土台が間違っているかもしれないという危機感は持っておかないと、愚かなだけでなく騙されて危険な道を歩む第一歩にもなりかねない。
Posted by ブクログ
まいまいつぶろの続編
徳川家重公に仕え、またうど、と称された、田沼意次の物語
まいまいつぶろで涙した後に、また心が揺さぶれるた
当時の侍というのは、主君によって生き方が大きく左右されるのだから、良い主君に恵まれるのか否かで、人生が変わるのも無理はない
しかし、田沼意次のような実直で聡明な家臣をもった家重、家治も、幸せものだろう
この主従関係は、殿様と老中という役割を越えて、人生の友、と呼ぶにも相応しい、心の通わせが随所に見られた。なぜなら、この主従は人生の岐路で何度も苦難を一緒に乗り越えてきたからだ
それは身分の違いを超えた、同志のようであった
意次が肌身離さず持ち歩いた、手足が不自由な主君家重の書、「またうど」は、意次の生きる支えだったに違いない
人生で、会うべく人には会えた
意次の最後の言葉にしんみりした
こんな風に、自分の人生を悔いなく歩んでみたい
Posted by ブクログ
賄賂にまみれた悪徳政治家といわれた田沼意次も、村木嵐さんの手にかかると、政治的手腕だけではなく、老中としての誇りや、亡き家重と忠光への深い忠義を忘れない人間味あふれる人物として描かれる。
読んでいて驚いたことが二つ。
一つは、深い信頼関係を築いていた家治と意次が60歳を過ぎてから長男を亡くすという胸が締め付けられるような共通の悲しみを持っていたこと。
もう一つ驚いたことは、革新的な財政改革を猛スピードで推し進めてきた意次が、天候不順による不作や、浅間山の噴火に対して決定的な対策が打てなかったこと。
どんなに優れた人でも、何年も続く天災に対しては手も足も出ず、多くの民を失い、食糧難や一揆を止めることはできなかったんだなぁと思うと、もし今の時代、同じような天災が起こったら日本はどうなってしまうのかなぁと、ふと重ねてしまった。
物語としての感動があるだけでなく、過去の災害や政治を通して今の時代についても考えさせられる作品でした。
Posted by ブクログ
「まいまいつぶろ」の続編。
簡単にいうと田沼意次の話。
世代的に「田沼意次=賄賂」という認識だし、
基本的な日本史の知識も無いので展開について行くのが必死。
さらには、
経済構造の変化や、天災や飢饉に対する政策の話が主で
あまり面白くないのもかなりつらかった。
「賄賂」の先入観だとはわかっているが、
田沼意次の人物設定がしっくりこないのもある。
ちなみに、現在のNHK大河ドラマも同じ時代だが、
こちらも将軍周りの人間関係についていけていない。
どうしたものか。
Posted by ブクログ
前著『まいまいつぶろ』の続編と言えます。前著の主人公は、第九代将軍・徳川家重と彼の言葉を解する大岡忠光が中心でしたが、本書はこのときに登用された田沼意次を軸にしています。
「またうど」とは、「愚直なまでに正直な信(まこと)の者」の意。家重が田沼意次を表したとあり、家重亡き後、第十代・家治に仕える田沼意次の行動が書かれています。本書を読むとこれまでの田沼意次像がガラリと変わってきます。「田沼意次≒賄賂」というイメージがありますが、本人は贈り物を見ることもなく、むしろ「金子が流れ、工人どもも潤う」と気にせず国富向上に邁進。米の増産を図るため、印旛沼、千賀沼、蝦夷の開拓を図り、賄賂に至っては、清廉派と目される次の松平定信が田沼意次に渡していたともあります。
前著より、小説として起伏があって面白いと思いました。田中角栄を彷彿させますが、恐らくは今の永田町の動きにも通じのではないでしょうか。次作があるとすれば、田沼意次を放逐し、次を担う松平定信の改革の行方について、是非書いて欲しいと思います。
Posted by ブクログ
田沼意次と言えば三冬のおと…じゃなくて賄賂政治の老中さま。と言う印象しか持たなかったが、さぁ、果たしてどうだったのか。
白河の清きに魚も住みかねてもとの濁りの田沼恋しき
昔の人の言葉のセンスは本当に素晴らしい。
それでもって、昔も今も、庶民の政治に対するスタンスって変わらんなとも思う。基本的に感情で判断する。
印旛沼開拓と蝦夷開拓に力を入れていたというのは史実なんだろうか。在任期間や、場合によっては人の寿命をも超えて取り掛からないといけない事業には、ビジョンを持った人でなければ立ち向かえない。政治家は清廉潔白も良いけれど、そう言う大局観を備えた人にやってほしい。
ものすごく感情を揺さぶられる展開は無いのだけれど『まいまいつぶろ』の家重公と忠光のエピソードがちょこちょこ出てきてほっこりする。
もう一つスピンオフがあるはずなので、楽しみに音声化を待つ。