【感想・ネタバレ】香君2 西から来た少女のレビュー

あらすじ

圧倒的な世界観! 息を呑む展開の第2弾

アイシャは〈香君〉が抱える苦悩を知り、藩王国視察官のマシュウとともにオアレ稲の謎と向き合うことに。だがそれはウマール帝国への謀叛行為だった。そんな中、オアレ稲に虫害が発生してしまう。民を飢えの危機から救うべく、アイシャたちは動き出すのだが……。
植物と昆虫が人々の運命を大きく変えていく、傑作長編第2幕!

※この電子書籍は2022年3月に文藝春秋より単行本上下巻で刊行された作品の、文庫版を底本としています。文庫版は4巻構成となります。
単行本『香君 上 西から来た少女』 → 文庫版『香君1 西から来た少女』『香君2 西から来た少女(ともに2024年9月発売)
単行本『香君 下 遙かな道』 → 文庫版『香君3 遙かな道』(2024年11月発売予定)『香君4 遙かな道』(2024年12月発売予定)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

「香君は、③と④は違うサブタイトルなのに、どうして①と②はどちらも『西から来た少女』なのだろう。」
そんな小さな疑問を胸に、私は本を手に取った。
読めばきっとわかるのだろうと、想いを馳せながらページをめくる。

物語は、オリエが本当の香君ではないことをアイシャが知る場面から始まる。
マシュウの計画、オアレ稲の秘密、香りを感じる力――
その一つひとつが、アイシャの出自の謎へと繋がっていく。
やがて彼女は、初代香君もまた西から来たのだと知り、
その血の流れと、自らの歩む道とが交差していることを悟る。

マシュウたちとともに、人々を飢えから救うために動き出したアイシャは、
祈願の鳩の占い師として、山間の村をめぐり、麦や蕎麦を育てる手助けをする。
けれど、その隠し畑を偶然見つけてしまった同僚のオラムが攫われ、
アイシャは自分の行いを悔いて彼を追う。
そして、オゴダの暁に捕らわれた彼女の前に現れたミリアが見せた光景を残して、
物語は次巻へと託される。

読み終えたとき、最初の疑問の答えが胸に落ちた。
①の「西から来た少女」はアイシャを、
②のそれは、初代香君を示していたのだ。
二人、そしてマシュウに共通するのは、香りを感じ取る力。
彼らは同じルーツを持つのかもしれない――そう思った瞬間、胸の奥が震えた。
皇帝がウマールの帝都からではなく、大崩渓谷から来たという描写。
言葉や葬儀の文言に潜む共通点を手がかりに世界をつなぐ筆致は、
まさに上橋菜穂子さんらしい、世界の深呼吸のような描き方だと感じた。

なかでも心に残ったのは、オリエに促されて、
自分の感じていることを言葉にしていくアイシャの姿だった。
彼女は、難しい言葉ではなく、
自分と相手が分かり合えそうな言葉を選び、
そこに“感じること”の輪郭を描いていく。

私はここ数年、「感じる力」が少し弱まっていると感じていた。
心の奥のさざ波を、うまく言葉にできなくなっていたのかもしれない。
けれど、アイシャを見て思った。
感じることは、失われるものではなく、育てていくものなのだと。

音楽を聴いたとき、絵を見たとき、風に香りを感じたとき――
その小さな“気づき”を言葉にしていく練習をしてみたい。
それが、再び「感じる力」を取り戻す道になる気がする。
自分の中に眠る感覚を少しずつ呼び覚ましながら、
世界ともう一度、やさしくつながっていけたらいい。

0
2025年11月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

良すぎる。あっっという間に読み終わってしまった。。

香使という荘園があった時代の行政制度に似た仕組みや、天皇のように香君を立てていることなど、国の運営におけるシンボルの重要性とストーリーの大切さなど政治の観点を他作品同様に織り混ぜながら、この世界独特のしがらみの中で、大事が起きることを予想して秘密裏に動くマシュウは、江戸幕末の薩長に思えてしまった。
このように、一見オリジナルの別世界の話だと思えるが、日本人の頭にすっと入るように日本史の要素を骨組みに入れていることがとにかく素晴らしい。

これらが本作品の読みやすさとSFファンタジーとしての世界観の構成を手助けしているのではないだろうか。
とにかく面白いからすぐに三、四巻を買います。

0
2025年01月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

アイシャがオアレ稲の秘密を知り、香君と破滅に至る道を避ける為に活動することを決意する前半。
後半は実際の活動を経て物語は意外な方へ展開を見せる。

アイシャが香りで知る世界の描写がとても魅力的。
まるで目で見るように映像が浮かぶ。
例えば嗅覚の鋭い動物たちもこんなふうに世界を認識しているのだろうかと興味が湧く。
物語的にはとにかくオアレ稲の特性がかなり厄介でまだ謎が多く、まさしく物語の鍵を握る存在だ。
ラストに匂わされているものはオアレ稲では?と思ったけれど、さて正解は?

よし次に行こう。

0
2025年02月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

登場人物同士の葛藤、対立。
全ての関係が複雑に絡み合って、揺らいでいる。
主要登場人物の三人だけでも、立場や気持ちが一言では割り切れないので、物語をするすると読み進めてしまった。

0
2024年12月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

おぉ・・・
この「2」はとっても気になるところで終わってしまいました。

オリエに「香君」として、自分と同じ特殊な能力がないことに薄々気づいていたアイシャですが、ムチヤリの幼虫による害から回復したオリエと、マシュウにそのことを含めた多くのことを教えられることになります。この、マシュウから綿々と語られる過去からの話に、時折ぼうっとして話がこんがらがってくる自分の貧相な脳が悲しい・・・。
マシュウの出自や自分との関係の可能性、それから、マシュウたちがこれからやろうとしている危険で重大な計画が知らされたとき、アイシャはマシュウたちとともに生きていくことを決めます。
マシュウが成し遂げようとしていることに対する協力者はアイシャとオリエのほかに、タク一家5人、ウライリ、オロキ、ミジマ、ラーオ師だけ・・・それだけ危険だということでしょうか。
それにしても、その「計画」の、途方もなく時間がかかることに、眩暈がするような思いがしました。タクおじさん一家はアイシャがやってくるまでにどれほどの長い時間をかけて苦労して実験に実験を重ねるようなことをしてきたのでしょう。自然と向き合うということは、こういうことなのだとあらためて思いました。急速に進んできたテクノロジーなどどは違うのですね。

さて、それから数年後、マシュウが心配していたことが現実となります。オゴダ藩でオオマヨが大量発生し、オアレ稲を広く焼却せざるをえなくなり、多くの民が飢餓で苦しむことになってしまいました。オアレ稲は、一度育ててしまうと、土をごっそり入れ替えない限り他の植物が育たないのです。オアレ稲は奇跡の稲でありながら、とても恐ろしい植物だったのです。

オゴダの民を救うべく、帝国に対して隠密に、アイシャは「密使」としてその身の上を隠して、ヨギ麦やヨギ蕎麦をオゴダの山間部の村々に植えつけるよう働きかけをしていました。当然、オアレ稲だけに頼っていなかった村では民が餓死することがないのです。タクおじさんたちが一生懸命やってきたことが少し実を結んだということでしょうか。しかし、当然ながら、ウマール帝国はそのことに疑念を抱き、香使オラムに調査を命じます。

そんな矢先、そのオラムが「オゴダの暁」という武人集団に攫われることになってしまい、オラムを助けに行ったアイシャも捕えられてしまいます。2人はオゴダ藩王の母ミリアが領主として治めるギラム島に連れてこられ・・・

というのが「2」のあらすじ。

これからアイシャとオラムが目にする驚きの光景というのが、何なのか・・・気になる~。

これはファンタジーですが、現実世界を反映しているように感じられて仕方ありません。ウマール帝国はオアレ稲で属国を鎖につないでいますが、現実ではそれが権力であったり武力であったり。オアレ稲もその特性を考えれば、現実の色々なものに置き換えて考えられそうです。

しかしながら、オアレ稲は、人々におなか一杯食べられるという豊さを与えてきて、長い目で物事を判断してそのオアレ稲をなくし、それと引き換えに民が飢餓に苦しむことを、一時的であったとしても、耐えなければならない、というのは、アイシャがいうように無理なことだと思いました。未来の国の繁栄がどうであろうと、ひとりひとりの民の命はひとつ、一度きりなのだから。
アイシャが、祖父がしてしまったことに対する責任を少なからず感じていることがわかります。

続きが気になりますが、文庫本「3」はまだ発売されていないよう・・・それまでに私の頭からこれまでのあらすじが消え去りませんように・・・!!(切実)

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2024年10月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

すご〜く読みやすい。
ファンタジーだけどファンタジーの一言で終わっていいものじゃない気がする。

帝国はオアレ稲で諸国を支配しているという構造が、改めて面白いなと感じた。
古くからの規定を変えることで、その支配に綻びが生じていく。
その綻びが国の危機に繋がっている。それを防ぐためには、帝国の支配の構造を根本から変えていかねばならないという……
このようなことは決して遠い出来事ではなくて、会社で古くからあるルールをしっかり検証もせず変えてしまって、それによってさらに歪なルールが生まれたり…といった、組織運営で必ず直面する出来事を描いているなあと感じた。

最後にアイシャがオゴダの人に捕まってしまうけど、アイシャはいろんな人たちに会って、いろんな視点でこの国の構造改革に向き合っていくことになるんだろうな〜と思った。

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2025年03月12日

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