あらすじ
永井荷風(一八七九―一九五九)は,三十八歳から死の前日まで四十一年間,日記『断腸亭日乗』を書き続けた.簡潔な文章の奥から,時代が浮かび上がる.全文収録.(ニ)は,大正十五年から昭和三年まで.初めて詳細な注解を付した(「注解」「解説」=中島国彦)(全九冊)※この電子書籍は「固定レイアウト型」で作成されており,タブレットなど大きなディスプレイを備えた端末で読むことに適しています.また,文字だけを拡大すること,文字列のハイライト,検索,辞書の参照,引用などの機能は使用できません.
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Posted by ブクログ
今年(二〇二五年)の初めから第二巻を読み始め、読み終わったのは三月の終わり。赤の他人の日記、しかも百年近く前のものを読むのは、面白いんだけど、途切れ途切れに数ヶ月かけて読むくらいでちょうどいいのかも。さてこの第二巻は大正十五年から昭和三年まで。荷風四十八歳から五十歳にかけての日記。約百年前と考えれば、まあそうか、とも思うけれども、荷風はやたら死を意識している。そのくせ、自分でも認めているように、これといった症状は特になく、せいぜいタンパク尿を指摘されているくらいだ。そして、やたら死ぬ死ぬといい、自分の若い頃の原稿を川にわざとらしく放り投げてみたりするくせに、自分よりもはるかに若い女の子たち(春をひさぐ女の子たち)を囲い、抱いている。はっきりいって、とても気持ちの悪い男だ。けれどこの日記が面白いのは、そんな気持ち悪い最低男の荷風が、その最低さを最大限に発揮して、同時代の人々の批評をしているところ。菊池寛を徹底して嫌ってたり、山田耕作の醜聞をねちっこく書き留めたり(pp39-40)。あなたもとことん最低な男だけどね、と思いながら、荷風の同時代批評を楽しみました。