あらすじ
1999年に日本でピルが承認される約30年前に、ピル解禁と中絶の自由を訴える一人の女がいた。派手なパフォーマンスで一躍脚光を浴びるも、その激しいやり口から「はしたない」「ただのお騒がせ女」などと奇異の目で見られ、やがて世間から忘れ去られてしまう――。謎多き女をめぐる証言から、世の“理不尽”を抉りだす圧巻の傑作長篇。
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Posted by ブクログ
事実っぽく感じさせられる。
それはともかくとして、私の親も同世代・同階層だが、理想に走って他人を傷つけることに容赦はないけど、受け身に立ったら思考原理がガラリと変わるのはどういったことなのか。
そういう時代は、通過しなければならなかったものなのか
Posted by ブクログ
中ピ連の代表の女性を下敷きにしたフィクション。
新聞で中ピ連の話を読んで気になっていたところ、母がこの本を読んでいたので借りた。
ルポ形式で語り口調なので読みやすく、それぞれに感情移入しやすい。さらに取材者が女性という設定で描かれているので、女性のほうが自身の思いや背景を素直に語っているような印象を受けた。もちろん全員が「信頼できない語り手」として話が進行するため、各人の口から語られる「塙玲衣子」の姿は断片的かつ主観的ではっきりと像を結ばない。
ある女性の証言から始まる。私としてはそのエピソードは痛快で当然だと思えた。しかし中盤で男性や被害者が語る塙像は憎しみの対象となり、それもまたもっともであると感じさせられる。
まったく違う立場の人たちの視点から塙という人物とその活動を描き出すことで、読者に「自分の頭で考えろ」と啓発しているように思える。
タイトルは結局、オパールに顕著な遊色効果のように彼女を多角的(多色的)に描き出したということのメタファーなのかな。文中では「火」と書いているけど、「炎」としたのは彼女の心に燃えた情熱を指しているのかもしれない。
Posted by ブクログ
ああいましたねえ。まだ子供だったから、ピルがどういうものかわかっていなかったです。なんか女性が騒いでいるなあぐらいしか思っていませんでした。
中ピ蓮をモデルにした活動家の主催者のその後を追う記者が、関係者のインタビューを続けていくという流れです。たしかに彼女は早すぎたのかもしれません。今でも男性優位の社会です。自分らの子供の世代にはやっと実現していくのでしょうか。
日本会議とかさまざまな右翼団体が勢力を伸ばしているような気がする今、改めて考えてみる必要がある問題ですね。
展開としてはちょっと物足りなかったな。なんせ本人がどこに行ったか分からないのですから、想像したフィクションになっています。いっそ彼女を主にして思いっきりフィクションにしてしまったほうがよかったかなあとか。えらそうですが。
Posted by ブクログ
・う~~ん。感想が難しい。とりあえず、ルポ形式?だからしょうがないが、途中でインタビュイーが落語みたいな感じになるのがちょっとわざと臭くて、こういう書き方は自分には合わないなあと思った。「え?○○だって?」みたいなやつ。とはいえ会話形式にするのもちょっと違うというのもわかる。難しい。
・実際にいた方がモデルになっているんだね。作中の話の流れは実際の取材結果に近いんだろうか。ピル愛用者として、ピルを広めてくれて本当にありがとう!という気持ち。ピルはマジで最高。年取って飲めなくなるのマジで嫌だなーの気持ち。生理がいつ来るかもわかるし、夜中に謎の情緒不安定が起きて号泣することもなくなったし、妊娠の不安がほぼなくなったのも最高。ゴムは確実じゃないって頭があるから、その不安を抱えて性交渉するのは本当に不安だった。当然集中も削がれるし、楽しさも半減。「なんで私はこんなに不安なのにお前は呑気に何度もしたがるんだよ?」みたいな気持ちにもなってくる。男性ならエイズに置き換えて考えてもらえればわかるのかなあ。80回に1回くらいエイズにかかるかもしれない機会が週に2~3回やってくる、しかも断ると恋人と険悪になることもある。みたいな。嫌だよね。「子どもができてもいいと思えないならすべきでない」ってのはそりゃそうだが、こんなに科学の発達した社会なんだから、科学でどうにかできることなら科学でどうにかしたらいいじゃないのとも思う。楽しいことなんだし。とはいえ自分の欲望のために安易にパートナーに勧めたりしては絶対にいけないぞ。当然のことながら。
・まあ、塙さんのやったことは過激だし、家族をめちゃくちゃにされた側の気持ちもわからんでもない。「本妻なんだからどーんと構えとけよ」という気持ちも、ちょっとわかる。でも不倫するやつの自業自得じゃんって思う。自分たちの関係が他人を傷つけてるって明確に分かっているのに、どうして何も清算しないまま一緒にいられるんだろう?どうせ火遊びだから楽しいだけなのに、そのスリルに安易に堕ちるなんて本当にダサいよ。ガキの面倒も見ないならせめててめーの下半身くらいちゃんと操縦しなさいよ。そういうのが男の矜持だった頃もあるんだろうね、島耕作的な。自分なら『自分はダサい人間だ』っていう自認、烙印が一生付きまとったまま生きていくことに耐えられないよ。もっと大人になったら気持ちが分かる日が来んのかなー。ま、でも結婚してずっと同じ人といたら飽きるだろうね。もっとフランスみたいな感じになればいいんじゃないのという感じはする。事実婚で子供を育てるみたいな。子供がいてもちゃんと育てられる体制、支援があれば何の問題もないと思うけどね。
・まあでも、自分は結婚するにあたって、私の人生は一度ここで終わるのだという気持ちがある。隷属人生のはじまりだ!くらいに正直思っている。私がそう感じるだけで、みんなもそうあるべきとも、そう考えるべきとも思ってないけど、考えれば考えるほど「嫁って夫の家に世継ぎをもたらすマシーンだな」と本当に思っちゃう。自分が個として生きられる人生はここで終わり、自分の存在価値はどんどんそういう風になっていくんだ、って思う。相手の親も相手もそんなことはつゆほども思っていないかもしれないが。だから、自分は子供ができなかったら嫁失格だと本気で思うタイプだろうなと思う。なんか、夫側が「夫失格だ」と罪悪感を持つような機会ってあるのかね。当然だけど、子どものいない人をそういうまなざしで見ているわけじゃないよ、あくまでも自分が自分を見るまなざしの話。まあでも、全般的に、自分は男尊女卑の過渡期の波を都合よく乗りこなせていると思うけど。
・めちゃ話が逸れた。話として面白かったかと言われると、まあ……な部分はあるが、総じて、並大抵の覚悟ではできないこと。過去戦ってくれた塙さんみたいな人にはありがとうを言いたい。
Posted by ブクログ
(2025/05/23 2h)
ルポルタージュ風の小説、モキュメンタリー。
塙の話はどうしてもフィクションと思えず、女性運動やピル解放について調べてみたくなった。
表紙が強烈。でも好きな絵。
この過激さは塙の活動にも近いような。
オパールの話も示唆に富んでいて素敵。
塙自身が語らず(ほんの少しの手記はあるものの)、彼女自身のことを周囲の人びとの取材からぼんやりと浮き上がらせる構成。
榎美沙子を知れた
初・桐野夏生でした。長年気になってはいたものの、きっかけがなく。
榎美沙子のノンフィクションを書こうとしてこういうもっていき方にするところに凄みは感じました。
読後感としてドロリとしたやましさのようなものが残り、
苦しかったです。
Posted by ブクログ
1970年代にこのように中絶やピルについて主張している人がいたことを知らなかった。
この作品では塙玲衣子を様々な人の視点から描いていて面白かった。賛同する人、批判的な人、恨んでいる人。初めは過激な人物像を思い浮かべていたが、だんだんと、「孤独」な生涯のイメージが強くなった。
最後が印象に残った。「ほんの少し前まで、いや今でさえも、女性は将来母となることを周囲から期待されて育ってきました」「『産めよ殖せよ』という言葉があります。国の反映のために、女たちは多産を奨励されました。そのため当然のように、国が女の身体と心を管理してきたのです。そんな時代は終わったはずなのに、今現在、少子化対策のために、またもや母親となることを期待される時代になりつつあるように思います。」「女たちが自分の身体を取り戻し、自分で管理できる社会に、という塙玲衣子の主張は正しかった。そして、塙は女たちがずっと闘い続けていかない限り、それはすぐに奪われてしまう大事なものなのだ、と警鐘を鳴らしていたのだと思います。」