【感想・ネタバレ】Science Fictions あなたが知らない科学の真実のレビュー

あらすじ

著名な科学実験やベストセラーの間違いを紹介しながら、科学における不正・怠慢・バイアス・誇張が生じるしくみを多数の実例とともに解説。単なる科学批判ではなく、科学の原則に沿って軌道修正することを提唱する。既存の本で知ったウンチクを得意げに語る人に読ませたい、真実の書。

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装丁に書かれている内容から、世の中で信じられている
「 科学的とされているような事実」が実際は嘘でしたと言う軽い告発系の読み物かと想像していたのだが、 実際には想像以上に硬い内容の話だった。

一言で言えば、今の科学研究は様々な理由により再現性がない、 あるいは効果がない研究成果が溢れており、そのような事態が発生してしまうメカニズムと解決するための方法論を提示しているのが本書だ。

どのようなシステムであっても、必ず問題が起こることは避けられないので、 そのような例が少ないのであれば問題はない。しかし本種によれば、分野によって異なるがかなりの事例が歪められているとのことである。かつて大学院まで行き論文なども書いていた自分からすると、身につまされるような内容がたくさんあり、一度メタ的にシステムを認知すると、このような課題があるのかと考えさせられる内容だった。

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2025年05月15日

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著者はキングス・カレッジ・ロンドンの講師(出版時34歳)。専門は心理学だが、生命科学や脳科学から心理学や経済学まで、実験科学における研究や論文の不正をメッタ斬る。若いだけに勢いがあって、解説も歯切れよい。
データの捏造や改竄はもってのほかだが、事後のデータの追加やp値ハッキングはインフォーマルにはよく見かける。これがなぜダメか、そのへんもわかりやすく解説されている。その点でも、とくにこれから研究の道に進もうとしている人には、おすすめ。研究室の悪しき慣習や伝統に染まるまえに(途中で大きくコケないためにも!)、一読しておいたほうがよい。
(蛇足。日本版の帯には、大きく「スタンフォード監獄実験はイカサマだった!」とある。この宣伝文句、原著のカバーには見当たらないし、本文中でも1ページ程度しか触れられていない。スタンフォード監獄実験はNHK-BSではいまだに真実として再放送されているが、イカサマの件はその業界ではよく知られている話だ。)

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2025年05月09日

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本書『Science Fictions』は、科学の世界に潜むさまざまな問題点――特に、研究の再現性の欠如や不正、そして構造的なバイアスについて取り上げた一冊である。私たちが「科学的」と聞いたときに抱くイメージは、客観的で、正確で、信頼できるものというものが多い。しかし著者は、そのような科学の理想像と現実との間にあるギャップを、具体的な事例を通じて明らかにしている。

中でも印象的だったのは、科学的な発見が必ずしも厳密なプロセスを経ていないこと、そしてその中に成果の誇張や再現性のない研究が少なからず存在しているという点である。また、研究成果が評価されるためには注目を集める必要があるという現実が、科学者たちをセンセーショナルな方向へと向かわせる一因となっていることも示されていた。

このような問題の背景には、研究者のモラルだけではなく、研究を取り巻く制度や評価の仕組み――つまりインセンティブの構造が深く関わっている。多くの場合、査読やデータの保存といった地味で重要な仕事には評価が集まりにくく、派手で目新しい成果の方が資金や注目を集めやすい。著者は、こうした構造的な問題が科学の健全性を脅かしていることを指摘していた。

本書を通じて、私自身もさまざまなことを考えさせられた。特に印象に残ったのは、「科学者もまた人間である」という点である。科学者といえば、どこか特別で、間違いをしない存在のように思っていた部分があったが、本書に登場するさまざまな事例を見て、それが幻想であることに気づかされた。科学もまた、人間の営みの一部であり、そこには当然、感情や欲望、判断ミスが入り込む余地があるのだ。

また、科学を支える仕組みにも限界があると感じた。研究資金の配分や成果の評価において、資本主義的な仕組みが働くのは自然なことであるが、それが結果として科学の方向性を歪めてしまうこともある。もちろん、制度を設計する側も悪意があるわけではなく、価値の高い研究に多くの支援を届けたいという善意に基づいている。しかし、その善意が必ずしも良い結果を生むわけではないという事実に、人間社会の複雑さを感じた。

現代は、個人の自由や多様性が尊重される時代であり、「好きな研究をやっていい」という考え方が広く受け入れられている。そうした中で、研究者に特定の行動を求めたり、方向性をコントロールするのは難しい。だからこそ、どのようなインセンティブを設計し、どのように科学の健全性を支えていくかが、これからの課題になるのではないかと考えている。

本書は、科学に対する信頼を失わせるための本では決してない。むしろ、科学という営みをよりよく理解し、その価値を守っていくために必要な視点を与えてくれる一冊であった。私自身も、これからは科学的な情報に対してただ鵜呑みにするのではなく、批判的な視点を持ちながら、より丁寧に向き合っていきたいと思う。

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2025年04月17日

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面白い。ヒ素生命体や、医学に関する知識(ピーナッツアレルギーや双子の帝王切開など)の誤った科学が、なぜ生まれてしまうのか、どうすれば良いのかについて示唆的な論考。

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2025年03月16日

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科学者を取り巻く環境における問題を実例と共に挙げていき、最後に現在改善するために行われている取り組みを紹介した本。
スタップ細胞のようにリアルタイムで騒がれているのを見ていたなら知っていることでも、生まれる前の有名な実験が否定された経緯については驚くほど知らず、読んでいて間違いだったの!?って驚くことも多かった。スタンフォード監獄実験とか普通にまともな実験結果だと思ってたよ。
第二章の再現性の危機の話を読んでるときは、ニコニコ動画の「世界の奇書をゆっくり解説 第6回 「フラーレンによる52Kでの超伝導」ほか」で何で再現できない革新的発見をここまで持ち上げられるんだろう?と思ったのを思い出したな。科学界における再現性の問題を知ったうえで見ると凄く解像度が上がった。 元々若干触れてた部分の解像度を上げる内容もあれば、初耳の話もあり、NULLのデータの重要性は読んで即確かに!と思ったけど言われるまで重要視出来てなかった。無い物を視界に収めるのって難しいのよね。だからこそ、積極的に発信しなければいけないのでしょうね。
p値ハッキングの話で怖かったのは、理解が難しくて統計学入門の教科書引っ張り出しつつ、分かりやすく解説してる動画さがそーってYouTubeで検索した時だったかな。 マジで一桁程度しか出てこない。こんな容易にできる統計データの悪用について解説している動画が殆ど無い。怖かった。
「わかりやすい薬学系の統計学入門 第2版」と「【有意差はつくれる】※本当は教えたくない※エビデンスをハッキングする方法」に感謝。統計学難しいです。
逆インセンティブも含めて、不正が容易なの本当に怖いんだけど。不正はコストが掛かるようなルール構築が理想形だと思う。 最後に近年の科学による貢献や、この状況を打破するための取り組みについて書いてくれたのは正直気分が滅入りだしてたのでありがたかった。

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2025年03月14日

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本書で扱われていたのはアカデミックの世界の不適切な行為が主だったが、会社でもどこでも同じような事は起きてると思う。
筆者が述べているように、システムに課題があり、結果の誇張やp値ハッキングのような手段をすることで得をするままではよくない。
一個人としてできることは、事実を謙虚に受け止め、センセーショナルな結果を無批判に受け入れることを避けることだと感じた。

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2025年01月15日

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ネタバレ

科学論文の衝撃的な不正実態と背景、そして考え得る対策が詳細に解説されている。心理学や栄養学は再現性が難しいと言われているらしいが、経済学、医学、生物学、教育学など、様々な分野で不正が横行しているようだ。
もちろん第一義で責任を負うべきは主たる研究者なのだが、本書を読むと、全て研究者が悪いとも言い切れないように思ってしまう。限られた研究費やポストを得るためにはインパクトのある論文を多数発表する必要がある。悪意がなかったとしても再現性実験やデータ確認に割ける時間は多くなく、グレーな結果が多くなるだろう。また、nullまたはnegativeな結果はインパクトが薄いため、オープンになりにくい、所謂出版バイアスも影響している。
驚いたのは、出版社が引用カルテルによって不当にジャーナルの権威を高めていたことだ。大きな事件もあったようだが、恥ずかしながら勉強不足で全く知らなかった。こうなると、研究成果の評価に使われているインパクトファクターやh指数とは一体何なのかと疑問に感じてしまった。この実態をコルネリス・ベガ作「錬金術師」の絵画に例えている。ベガは金に執着することの無意味さを語っているのだが、この論文至上主義も本質を見失っていると言わざるを得ない。
最終章では対策についても述べられている。中でも、研究のオープン化/チーム化、プレプリントは実効性が高いのではないかと感じた。
スター研究者の牽引によって特定分野が大きく発展することもあるが、殆どは地道に実直に結果を積み重ねた多くの研究者に支えられているのだと思う。謙虚さを失わず、真摯に科学と向き合うことが何より大切だと、改めて気付かされた。

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2024年09月30日

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これは根底から認知が変わる。

大体、「論文で査読されててメタアナリシスであれば信じるに値する!大学でも何度も引用されてるから信用できる!」と信じて疑わなかったものが一気に崩れ去り、「あの心理学の講師今頃冷や汗かいてるのかな」「多分その講師も俺も教わったんだから嘘な訳が無い!」とするんだろうなとか色々妄想してた。
自分事だけど「筋肉の超回復を信じていたし、大学の講義でも使われてたのでドヤ顔で言ってた」過去を枕に顔を埋めて足をバタバタする毎日で他人の事は言えない。

結局大人はみんな「星の王子さま」に出て来るビジネスマンやジオグラファーや点燈夫なんだから、制度、金、環境で真実はそれらによって定められるんだろうな。それで賞賛を得て帽子の角度少し変えて喜んで過ごしてるだけだろうし。

で、結局情報って何を信じれば良いのかって言うと、「(意訳ってよりも勝手な解釈)1次情報の論文にアクセスし、尚且つ読む時はそれを疑って読みなさい」と。
言ってる事は至極真っ当なんだけど、疑う材料の情報のストックさえ無かったらもう終了だよね。
何も信じられない。

学校や大学の講義も信じられない。
1192年が鎌倉幕府の始まりなんて誰がそんな後に変えられる征夷大将軍基準で言い出したんだよ!
何でプロテインは運動後30分以内がゴールデンタイムとか言い出したんだよ!本書とは関係無いですが。

所詮論文書いてる人達も清廉潔白な訳じゃなく人間臭い泥臭いし、日本人が圧倒的に論文撤回のエキスパート、つまり騙そうと言う意思で論文書いてる人が居たと知れたのも非常に興味深かった。

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2024年08月09日

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科学における不正・怠慢・バイアス・誇張が生じるしくみ
<目次>
◎第1部「あるべき」と「ある」
第1章 科学の仕組み
科学研究活動の基本の流れ/真の科学が備える価値観
第2章 再現性の危機
再現性が失われた原因/医学における大きすぎる代償

◎第2部 欠陥と瑕疵
・第3章 詐欺
科学の歴史上まれに見る汚点/単純な手口による悪質な不正/
操作された画像/ノイズの消されたデータ/不正な科学の蔓延/
科学者に紛れ込む詐欺師/一度の不正から広がる影響
・第4章 バイアス
発表されないNULLの画像/メタアナリシスで科学を再分析する
「良い値」が出るまで何度もサイコロを振る/
研究成果をゆがめる利害関係者のたくらみ/バイアスは人間の性である
・第5章 過失
数値の誤りをどう見抜くか/サンプルサイズと検定力の関係/
候補遺伝子研究の教訓/謙虚で控え目な科学はどこへ
・第6章 誇張
注目される研究の重要性が誇張を生み出す/ポピュラーサイエンス本の誇張された期待感
科学者が注目を集めるテクニック/栄養学研究の期待と現実/正しさより誇張を強いるシステム

◎第3部 原因と対処法
・第7章 逆インセンティブ
駄論文が量産される2つの原因/被引用回数が自己目的化する
質を低下させるインセンティブ設計
・第8章 科学を修正する
科学を治す潮流/データ・手法から対策する
事前登録の運用と効果/広がるオープンサイエンスの思想
誇張を抑制するプレプリント/科学を修正するためのさまざまなシステム
技術革新により高まる気運/「退屈で信頼できる」科学へ

付録 科学論文の読み方

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2024年05月03日

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心理学者の著者が、心理学・経済学・社会科学から医学・生命科学まで様々な分野における再現性の危機の原因や対策を取り上げる。既存の出版文化をいかに変えるべきか、その中でデジタル技術をどう活用していくかの議論に焦点が収束していく。

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2024年05月02日

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ネタバレ

ノーベル賞に代表されるように、科学という営みは日々進歩し続けている。
分からないことが分かるようになり、出来ないことが出来るようになる…一方で、科学結果自体の正しさ(再現実験)は殆ど重要視されていない、という一冊。

筆者が心理学者なだけあって基本的な例が心理学に偏っているけど、まぁ科学界すべてに言える話だろう。再現実験の必要性は誰もがわかっているけど、時間も資金も限られている中で自分がやる必要はない、という難しさ。
個の最適が全体の最適と逆行するからこういう問題が起きるので、筆者の上げた逆インセンティブは(劇薬ながら)理にかなっているなぁ、と。

スタンフォード監獄実験とか、ほかにもいろいろ自分の話のベースにしていた結果があったので、ここらへんは時代に合わせてアップデートしていかなきゃなぁ、とかなんとか。
レイチェル・カーソンの『沈黙の春』のように、後の時代に評価が変わるものはどうしたって存在する。
大切なのは、その時付けた評価(や正当性)が間違っているかどうか恐れることではなく、時代の進歩に合わせてアップデートし続けるというスタンスそのものなのかもね。
人が知性体である以上、どうしたって「正解」は得られない。私たちにできるのは、そこに少しでも近づくことなのだから。

まぁ、科学に対してこういう意見が出てくること自体が科学の持つ自浄作用の証左なんだけどね。ただ、それがあまりにも弱くなっていないか?というわけで。

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2025年10月18日

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有名実験の嘘や誇張の事例だけをまとめた本かと思いきや、それが「なぜ起こるのか」にまで考察が及んでいる。
入口はポップだが、科学界の暗い部分まで描かれている。
筆者の言葉を借りると『自分が何を知っていて、何を知らないのかについて、謙虚になること』の大切さを再認識できる本。

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2025年07月15日

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ネタバレ

某国(亡国)の大統領は自分に都合が悪い科学的なエビデンスがお嫌いなようですが、本書は科学的なエビデンスに関しての危機に関して説明してくれています。
科学が他の宗教などの思想と異なるのは、実験などにより得られたデータを基に論理的な推論によってエビデンスが語られ、そのエビデンスの再現を誰もが実施できる点にあります。その一連のプロセスが人間的な要因によって捻じ曲げられている実情を実例を挙げながら論じ、どうしたら今の状況が改善できるのかの考察も行っています。
目次は以下の通り。
◎第1部「あるべき」と「ある」
第1章 科学の仕組み
科学研究活動の基本の流れ/真の科学が備える価値観
第2章 再現性の危機
再現性が失われた原因/医学における大きすぎる代償
◎第2部 欠陥と瑕疵
第3章 詐欺
科学の歴史上まれに見る汚点/単純な手口による悪質な不正/
操作された画像/ノイズの消されたデータ/不正な科学の蔓延/
科学者に紛れ込む詐欺師/一度の不正から広がる影響
第4章 バイアス
発表されないNULLの画像/メタアナリシスで科学を再分析する
「良い値」が出るまで何度もサイコロを振る/
研究成果をゆがめる利害関係者のたくらみ/バイアスは人間の性である
第5章 過失
数値の誤りをどう見抜くか/サンプルサイズと検定力の関係/
候補遺伝子研究の教訓/謙虚で控え目な科学はどこへ
第6章 誇張
注目される研究の重要性が誇張を生み出す/ポピュラーサイエンス本の誇張された期待感
科学者が注目を集めるテクニック/栄養学研究の期待と現実/正しさより誇張を強いるシステム
◎第3部 原因と対処法
第7章 逆インセンティブ
駄論文が量産される2つの原因/被引用回数が自己目的化する
質を低下させるインセンティブ設計
第8章 科学を修正する
科学を治す潮流/データ・手法から対策する
事前登録の運用と効果/広がるオープンサイエンスの思想
誇張を抑制するプレプリント/科学を修正するためのさまざまなシステム
技術革新により高まる気運/「退屈で信頼できる」科学へ
付録 科学論文の読み方

原因としてあげられている、詐欺、バイアス、過失、誇張に分類される人間的な要因を除外するために、オープンな場への論文の事前投稿によるオープンな査読やAIなどによる査読の自動化などが提言されていますが、大学というシステム上のインセンティブが変わらない限り根絶はできそうにありません。
”科学的”という言葉をうのみにせず、データやプロセスを精査して主張されていることに科学的に接する態度が重要であることを竹蔵は学びました。
学問に関わる方には一読をお奨めします。

竹蔵

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2025年06月18日

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シャレが効いたタイトル。普通サイエンスフィクションと言ったら空想科学小説のことを指すが、これは科学(の論文、発表)に関する虚構という意味を持たせている。
科学における数々の不正・怠慢・バイアス・誇張。調査して発覚した、再現性に危機のある論文の割合はなんと半数以上に及ぶ。
科学ってもっと、しっかりとした土台の上に成り立って発表される、確かで拠り所のあるものなんだと思っていたけど、もしかしたらその認識はナイーブすぎるのかもしれない。
またどうしてそのような事態が起こってしまうのか、その裏に秘められた科学者の実態は悲哀を感じずにはいられない。
これは読んで良かった。

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2025年02月03日

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科学研究における「再現性の危機」を枕に話は始まります。従来の宗教とは違い、わたしたちはなんとなく、「科学の無謬性」や「科学者の誠実さ」を「信じて」いる節があります。しかしこの構えは、従来の宗教に対するスタンスと変わらない、ということ。以前読んだ本では、科学の「反証可能性」について強調されていました。この検証と反証を認めるのが、科学が宗教よりも人類を遠くに連れて行ってくれる可能性を高める所以になるわけですが、科学も宗教と同じで、運用するのは我々不完全な人間です。ちゃんと勉強をしてきた科学者も、ヒトの肉体と心の働きからは自由になれません。バイアスがあり、また功名心もあります。そして食べて行くにはお金もいる。不正を働くこともあるでしょう。今から見れば非科学的なな前例にとらわれていたりもするでしょう。資金提供者や、論文掲載誌の編集者たちの思惑もあるでしょう。センセーショナルな成果を求めるマスコミやわれわれ一般人の目もあります。著者はそうした現状を憂い、科学が「よりマシ」な運用がされるよう提言を行っています。しかしそれだけやっても「完全な科学」は実現しないでしょう。現状に甘んずることなく、常に「よりマシ」を求めてバランスを取っていく道しかないのでしょうね。これからは科学系のニュースには眉につばをつけて接するとします。

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2025年01月18日

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科学者の成果とも言える論文に関して、様々な不正があることを綿密に調査した本だが、小生も10本位の論文を投稿した経験からすると、意外な事実に驚いた.ある程度成果が顕在化しないと、研究資金が調達できないことは理解できるが、故意に不正な行為をすることは許されないことだと考える.早速Retraction watch databaseを見てみたが、小保方春子はしっかり掲載されていた.藤井善隆が183本もの撤回された論文を作ったのも驚きだ.最後の章に打開策をリストしているが、プレプリント、オープンアクセス、チームサイエンスなどは有効な方法だろうが、科学者自体の良心が基本だと思う.

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2024年11月23日

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人間に対する味方が更新された。
知力があることと①全体の整合性 ②長期的な展望 ③他との相互性 があることは別なのだと理解できた。
どれほど社会で一般的でも、怪しいものは怪しいのかもしれないと自信を持って疑おうと思う。
本文はやや冗長だが、ユーモアがあるし字が大きいので読み易かった。

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2024年10月10日

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Science fictionsを読ん読み終わった。
調査兵団の「なんの成果も得られませんでした!!」という成果をきちんと認める社会が健全という話。
これを読んだあと行動経済学系の蘊蓄を言いにくくなったし裏取りするようになった。

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2024年09月20日

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帯の煽り文やタイトルから、科学界に蔓延る悪事を暴露する、みたいなセンセーショナルなゴシップ的な内容かと思って読み始めました。
ところが問題提起だけでなく、メタな解析を通して裏にある構造的な問題点を明らかにし、さらに改善の方策や取り組みを示す骨太な一冊で、読み応えがありました。

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2024年09月08日

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創作ジャンルとしてのサイエンスフィクション(SF/化学的な作り話)ではなく、注目や研究費を得るために科学界で行われている不正の話。

科学者が言っているのだから正しいと盲目的になるのではなく、十分な査読や検証がされているかを確認することが大事。

表紙はポップだが、研究者向けの内容。

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2024年09月03日

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あまりのボリュームに斜め読みしてしまったけれど、それでも興味深い内容だった。普段からエビデンスがあるか気をつけるようにはしているつもりだけれど、権威ある科学者が書いた論文や一流の科学誌に査読を経て載っている論文でさえ信用ならないとなると素人にはその学説の正しさは判断できない。一応、判断方法も書かれてはいるけれど実践は難しいかな。
帯にもなっているスタンフォード監獄実験が否定されていることは知っていたけれど、「ファスト&フロー」のプライミング効果やNASAのヒ素生命体が後に訂正されていることを知らなかったし、目新しさや説の面白さだけに飛びついてその後は調べもしていないことは多そうで反省。その他、我が家に身近な話だと自閉症に腸内環境が関わっているという説。これは以前から疑っていたけれどやっぱり根拠は薄そう。
科学や医学に対してできるだけ落ち着いて接したいものだ。

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2024年07月02日

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学歴の高い人が出版している論文。しかも格の高い権威ある学術誌で取り上げられれば、それはもう間違いないと思っていたが、結構うそが多いということを、様々な視点で具体例(日本ではSTAP細胞小保方氏の事例あり)を述べて説明している。どの分野でも不正(詐欺)、バイアス、過失、誇張による間違いがあり正直何を信じたら良いのか分からなくなってしまった。当たり前と言えば当たり前だか!どの分野も光と影が存在しているのだと再認識した。

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2024年06月16日

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大学生のとき卒論を考えるにあったって薄々感じてことが、本書のp値ハックにあたるものであった。
科学屋ではない自分の立場からすると、本書の主張をそのまま受け取るならば、巷に溢れている研究たちは、話半分に受け取るのが良いと思う。自分の中の主義主張をしっかりとメタ認知し、大事にしたいことを揺らしすぎないようにしたい。

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2024年04月05日

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傍目から見ると神聖で厳格な科学の世界も、人間の欺瞞に満ちている、ということがあらゆるフェーズで発生していることを示しています。
著者の深い見聞によって、歴史的事実や分析が体系的にまとめられていて、不正やこうやって起こっているんだなと勉強になりましたし理解もできました。

一方で、そうした歴史的背景や事実などを大量に並べて深堀りしているため、とにかく分量が多く、単なる事実と主張だけであれば相当コンパクトになるであろうにも関わらず、なんでこんなに同じ(ような)主張をずっと読み続ければならないのだろう…というのがとにかく大変でした。
本当に事実だけ知りたい、要点だけ知りたい人には全くの不向きで、そもそも読書が苦ではない人、読み物として楽しめる人であれば問題ないと思います。

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2025年05月02日

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面白そう!と思ったらチョー分厚かった!

科学に起きる不正、バイアス、怠慢。

お金やエゴにより捻じ曲げられる真実。
今の科学がこんな危うい状態とは知らなかった。
人々の命や生活にも関わるので透明性、正当性を取り戻してほしい。

そのための検証プロセス、大事!

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2024年11月24日

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心理学や社会科学では論文の研究結果の再現度はとても低い。

プライミング効果は再現できなかった。
パワーポーズ効果は再現できなかった。
スタンフォード監獄実験は再現できなかった。

社会科学の論文の研究結果は約半分は再現できなかった。

心理学の権威ある学術誌から100件の研究を選んで再現を試みたところ、再現率はわず39%だった。

統計的検定で用いられるp値とは、結果が正しい確率を示すものでも、結果の重要性を示すものではない。「あなたの仮説が正しくない世界で、純粋なノイズがあなたの結果と同じような結果や、それ以上に大きな結果をもたらす可能性はどれくらいか」という問いの答えである。
そのためほとんどの場合p値は低ければ低い方が好ましい。ロナルド・フィッシャーは閾値を0.05に設定しようとした。これは検定で偽陽性のエラーが発生する確率を5%いかに抑えるという意味である。

いかに科学の世界に誇張が多いか。
サンプル数が少なかったり、統計をいじったり

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2024年10月16日

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科学者の研究、論文についての歪み。

詐欺やバイアス、誇張などの原因を、わかりやすく説明してくれる。

簡単に言えば、科学者も人の子、間違いもするし、思い込みもあるし、自分だけは、と思うし、お金は欲しいし、認めて欲しいし、負けたくないし、自分の見つけたものは真実だと思ってるし、目的のためには手段を少々歪めたってそれは使命の範囲だと思っちゃうし。

出版する方も結果の出なかった論文なんか載せないし、載せた論文が間違ってるなんて思いたくないし、たくさん引用して欲しいし、お金儲けたいし。

それに加えて、いろんなことを利用したいいろんな勢力もあるわなあ。

それを是正しようとする動きと、著者自身の提案もある。

我々に必要なのは、健全な懐疑能力と、「常識」やな。

撤回論文数世界ぶっちぎりNo.1が日本の麻酔医師だとは思いもしなかったです。
後、当然だがSTAP細胞の研究で死者が出た件も、取り上げられていた。

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2024年08月06日

Posted by ブクログ

科学において不正が起きる仕組みを解説した本らしい。
日本人がよく知っているのは、理研の「STAP細胞」の件だ。
本書でも取り上げられていたが、この論文発表で不正に至った経緯や理由は述べられていなかった(ガッカリ)。
著者は心理学者で、精神医学・神経科学・科学的心理学という、何を研究しているのか分からない人だった。

日本の研究者は有期雇用が多いので、短い雇用期間内で成果を出さないと職を失うプレッシャーが大きい。
だから、有益な研究をしていることを示す実験結果を成果物として示す必要に迫られる。
本書を読まなくても、私はこれが「科学において不正が起きる仕組み」だと感じている。

本書を読んで、より理解が深まったのは、科学に携わる人たちの想いだ。
・研究者を有する大学や研究所
 インパクトのある論文を多く出したい。
 不正調査などに巻き込まれたくない。
・資金提供者
 質の高い研究を支援していると見られたい。
・学術誌
 インパクトの大きい論文を載せて信頼度を向上させたい。
 薄っぺらい研究ばかりを掲載し笑いものになることは避けたい。

日本だけでなく世界中どこでも、研究機関は資金繰りに苦労している。
そこで利害関係者間でWinWinの体制を作りやすくなる。
例えば、製薬会社が資金を提供する臨床試験ではポジティブな結果が数多く報告される。

「STAP細胞」の論文は、世界でも権威のある『サイエンス』や『ネイチャー』に掲載された。
両学術誌は厳しい審査が行われていると思っていたが少し認識を改めることになった。
不正な論文だと見抜く"査読"というチェックシステムが機能低下しているのではと思った。

掲載後に誤りが判明した場合は、撤回という処置が行われる。
不正ではなくても後に誤りだと分かれば撤回するが、その論文の内容に信頼性は無いということだ。
素人は論文なんか読まないが、グーグルに学術論文検索サービス「グーグル・スカラー」があることを知った。
撤回されても削除されず、撤回されたことが示されるようだ。
多くの人に読まれる研究論文は優れていると評価される。
「グーグル・スカラー」は被引用回数もチェックできる。
そこでSNSの"いいね"のように、引用回数を増やす悪事をはたらく輩もいるようだ。

研究者として仕事を続けるためには論文数と、どの学術誌に掲載されたかが判断基準となりがちだ。
そこで不正を行う科学者が出てきてしまうわけだが、中国やインドのように科学的不正の法的罰則が甘い国でその数が多いらしい。
科学者は物事を広く受け止め他人を信頼しやすいという気質があるらしく、共同研究者の不正に気付かず不正論文を発表してしまうこともあるようだ。

バレなきゃいいと問題行為をする"人間"は、政治家や資本家に限らず一般市民でも存在する。
科学者が不正をしやすいということではなく、科学者も"人間"であるということだ。

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2024年07月12日

Posted by ブクログ

2024-06-16
科学には、こういう側面があるからまだ信頼できると安心させてくれる本。もちろん巷に拡がる汚染された結果に基づく言説は問題だけど、こんな形で自浄しようとする動きがあることがひとつの希望。

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2024年06月16日

Posted by ブクログ

話題になっていたので読んでみたけど、知っている内容が多かったかも。この手の本を読んだことない人にはおすすめ。
研究の世界は性善説がほとんどだけど、それが出世欲や金銭欲と結びつくとろくなことにならない。
分厚いけれど、引用が多いのでさくさく読めます。

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2024年04月10日

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