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Posted by ブクログ
研究者を目指す者にとっては必読書と言える。不正にもさまざまな形態があり、ときに意図的に、またあるときは意図せず、こうした不正が起こってしまう。その背景には、研究資金の獲得や利益相反などがある。対策としては、研究の事前登録など、いくつかの仕組みが既にあるものの、その機能は十分とは言えないようである。論文の考察において、結果を必要以上に印象的に見せようとする心性は読んでいて興味深かった。
論文ほ成果は、単なる自己満足で終わることなく、社会に還元されること必要がある。おそらく研究者の中には、その気持ちが強すぎてバイアスに支配される人もいるのだろう。成果を批判的にみるうえで査読は欠かせないシステムであるが、どれだけインパクトファクターの高いジャーナルでも査読の不正がある以上、プレプリントのようなシステムがもだと広まればいいなと思う。
Posted by ブクログ
この本でセンセーショナルに語られる斬新さを求めた結果の捏造、紹介する程度に書かれている意図しないミス、あるいは定期的に成果をアピールしなければならないプレッシャーなど、私は数十年前に研究者をやめて会社勤めになったが今でも同じように感じる現場はある。結果を捏造しない矜持はあるが、大げさに使われる物を体を張って止めるようなことは出来ない。チャレンジして何も成果が無ければ、たとえマイナス評価を食らわなかったとして反省し次は成果を出す事を求められ、いずれ捏造に手を染めてしまうのではないかという恐怖がある。
著者の言う通り 何も無い という結果に対する見方が変わって欲しいと願う
Posted by ブクログ
私も科学者の端くれなので、といっていいのか正直一般の人の科学や科学者への信頼度、というのはよくわからない。自分はどうかといえば、科学への信頼度は高い。
もちろん当事者だからというのはあるけれども、例えば論文は一定のお作法に乗っ取り書くし、統計をきちんとして、条件整理したうえでの有意差を出して自分の研究結果をまとめていく。⋯とここまで書いて、そう、有意差ってのは操作しうるものなのよねえ⋯だからイカサマか、という言えばそんなことはないんだが、しかし操作できるというのは捏造と紙一重的な部分ではある。
科学の世界に入り込むと最も大事なのは論文を出版していくことだが、実はその過程に様々な欺瞞が入り込む余地があるのは内部の者であれば誰でも知っている。いや純粋な大学院生の頃は知り得なかったりすることもあるけど、科学者なら誰でも少なくても一片の誤魔化しもなく結果をまとめることはあるだろうか??いやある人もいるだろう。そこは内部にいても厳密な、とても厳しいお人にも会うので信じられるところ。でもそうでもないことも経験するので、私たち科学者の科学への信頼度は、条件付き、と言っていいだろう。
さてさて、この本は、科学の再現性への疑問に焦点を当てる。特に心理実験の数々には再現性の問題があることは時折報道されるようにもなってきた。わけても、帯に書いてあるスタンフォード監獄実験は有名な実験。学生たちを囚人と看守に分けて役割を与えると、自然に看守たちは残酷な仕打ちを囚人役の者に与えていく。その程度があまりにひどいので実験は中止された。このショッキングな実験は何度も何度も記述され、映画化(確かドイツ映画)もされて、私もほんとについ最近まで信じていたけど、再現性など無いんですよねえ。。オリジナルの実験では実験者に双方にこう振る舞えとか教示があったそう。他にも再現されない有名な心理実験は数多く。近年では様々な文脈において、行動経済学的思考がもてはやされて、その応用が唱えられるが、実際には元になる実験はそれほど再現性があるわけでもない。もはやそこは面白い結果が常に成り立つと信じられているフィクションでありファンタジーなのに…って自分も講義で言っていたじゃんと、本書を読んで来年度の講義は、自分の講義を疑えと学生たちに言うことに決めました。
それはさておき、小保方さんまでフォローされていてにんまり。一般の人が本書をもとに科学論文は全然信用できない、となってしまうのはとっても心配だが、本来はスタンフォード監獄実験にしても、「科学者の言う事を鵜呑みにする科学部の記者さんたち」の責任が私は大きいと思うのですよ。実は私もそうだが、科学論文というのは常に出版バイアスに晒されている。そう、有意な結果が出ないと基本的には出版されないから、こうした結果これは何の意味もありませんでした、という知見が溜まりづらいのよね。。そういう場合多くの科学者は、あぁもうこれは結果でないんだな、と白旗上げて、別な設定をしたり、テーマを変えたり。だって出版できない結果にこれ以上携わったって時間の無駄なんだもん、と。
でも、出版にこぎつけた論文から、頭のいい記者さんなら、あれ?別な条件だとどうなんだろう、とか、ここは上手く誤魔化していないのかと気づいてほしいのよね。そうすれば、科学者だってあぁそこは弱い点なんですよ、とちゃんと言うのだから。
色々身につまされれることは多いけど良い本でした。ちなみに科学出版界もこの問題にはどうにかしようと試みていることはあり、そこも記述されています。
本書でもっとも恥ずかしいと思うのは、世界一の捏造論文大賞が日本の麻酔科医ってことかな。頼むぜ。
Posted by ブクログ
装丁に書かれている内容から、世の中で信じられている
「 科学的とされているような事実」が実際は嘘でしたと言う軽い告発系の読み物かと想像していたのだが、 実際には想像以上に硬い内容の話だった。
一言で言えば、今の科学研究は様々な理由により再現性がない、 あるいは効果がない研究成果が溢れており、そのような事態が発生してしまうメカニズムと解決するための方法論を提示しているのが本書だ。
どのようなシステムであっても、必ず問題が起こることは避けられないので、 そのような例が少ないのであれば問題はない。しかし本種によれば、分野によって異なるがかなりの事例が歪められているとのことである。かつて大学院まで行き論文なども書いていた自分からすると、身につまされるような内容がたくさんあり、一度メタ的にシステムを認知すると、このような課題があるのかと考えさせられる内容だった。
Posted by ブクログ
著者はキングス・カレッジ・ロンドンの講師(出版時34歳)。専門は心理学だが、生命科学や脳科学から心理学や経済学まで、実験科学における研究や論文の不正をメッタ斬る。若いだけに勢いがあって、解説も歯切れよい。
データの捏造や改竄はもってのほかだが、事後のデータの追加やp値ハッキングはインフォーマルにはよく見かける。これがなぜダメか、そのへんもわかりやすく解説されている。その点でも、とくにこれから研究の道に進もうとしている人には、おすすめ。研究室の悪しき慣習や伝統に染まるまえに(途中で大きくコケないためにも!)、一読しておいたほうがよい。
(蛇足。日本版の帯には、大きく「スタンフォード監獄実験はイカサマだった!」とある。この宣伝文句、原著のカバーには見当たらないし、本文中でも1ページ程度しか触れられていない。スタンフォード監獄実験はNHK-BSではいまだに真実として再放送されているが、イカサマの件はその業界ではよく知られている話だ。)
Posted by ブクログ
本書『Science Fictions』は、科学の世界に潜むさまざまな問題点――特に、研究の再現性の欠如や不正、そして構造的なバイアスについて取り上げた一冊である。私たちが「科学的」と聞いたときに抱くイメージは、客観的で、正確で、信頼できるものというものが多い。しかし著者は、そのような科学の理想像と現実との間にあるギャップを、具体的な事例を通じて明らかにしている。
中でも印象的だったのは、科学的な発見が必ずしも厳密なプロセスを経ていないこと、そしてその中に成果の誇張や再現性のない研究が少なからず存在しているという点である。また、研究成果が評価されるためには注目を集める必要があるという現実が、科学者たちをセンセーショナルな方向へと向かわせる一因となっていることも示されていた。
このような問題の背景には、研究者のモラルだけではなく、研究を取り巻く制度や評価の仕組み――つまりインセンティブの構造が深く関わっている。多くの場合、査読やデータの保存といった地味で重要な仕事には評価が集まりにくく、派手で目新しい成果の方が資金や注目を集めやすい。著者は、こうした構造的な問題が科学の健全性を脅かしていることを指摘していた。
本書を通じて、私自身もさまざまなことを考えさせられた。特に印象に残ったのは、「科学者もまた人間である」という点である。科学者といえば、どこか特別で、間違いをしない存在のように思っていた部分があったが、本書に登場するさまざまな事例を見て、それが幻想であることに気づかされた。科学もまた、人間の営みの一部であり、そこには当然、感情や欲望、判断ミスが入り込む余地があるのだ。
また、科学を支える仕組みにも限界があると感じた。研究資金の配分や成果の評価において、資本主義的な仕組みが働くのは自然なことであるが、それが結果として科学の方向性を歪めてしまうこともある。もちろん、制度を設計する側も悪意があるわけではなく、価値の高い研究に多くの支援を届けたいという善意に基づいている。しかし、その善意が必ずしも良い結果を生むわけではないという事実に、人間社会の複雑さを感じた。
現代は、個人の自由や多様性が尊重される時代であり、「好きな研究をやっていい」という考え方が広く受け入れられている。そうした中で、研究者に特定の行動を求めたり、方向性をコントロールするのは難しい。だからこそ、どのようなインセンティブを設計し、どのように科学の健全性を支えていくかが、これからの課題になるのではないかと考えている。
本書は、科学に対する信頼を失わせるための本では決してない。むしろ、科学という営みをよりよく理解し、その価値を守っていくために必要な視点を与えてくれる一冊であった。私自身も、これからは科学的な情報に対してただ鵜呑みにするのではなく、批判的な視点を持ちながら、より丁寧に向き合っていきたいと思う。
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