【感想・ネタバレ】これが「恋」だと言うのなら、誰か「好き」の定義を教えてくれ。 2のレビュー

あらすじ

互いの孤独を埋めあい、光莉(ひかり)の隣に温かな居場所を見つけた悠(ゆう)。長く続いた冬は終わり──けれど、自身のことを光莉にはまだ打ち明けられないまま季節は巡る。
これからのことを考えるためにも、光莉と初めて出会った公園へと足を運んだ悠。
ところが、舞い散る桜の先にいたのは──
「久しぶり、悠。わたし、ずっとあなたに会いたかった」
高校時代にたくさんの後悔を抱えながら別れた元恋人・白澤春佳(しらさわはるか)で……!?
交錯する過去と今。同じ過ちを繰り返したくない、けれど自分の《好き》の形は──。
「悠さん、あなたは──本当に、私のことが《好き》ですか?」

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Posted by ブクログ

 泣かされました……ほんと、こういう、ヘタレで臆病な男が勇気をだして女を愛する話、大好きなのです……。親友との絆の在り方も含め、激アツな名場面の連続!
 実際にモデル近くの大学に縁がある読者さんには「あるある」が楽しめるおまけつきですし、主人公・悠さんのオマージュネタは、おそらく北条連理さんの趣味で、共感できる読者さんが多いと思います。「笑顔は無敵だから」「トゲトゲぼっち」等  ぜひお楽しみください!


 ※
 以外、ネタバレ、政治的主張を含みます。
 感想以上に、個人的な雑記、散文です。
 時間の許す方のみお付き合いくださいませ。






ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・






 
 冒頭にも書かせてもらいましたように、ヘタレで臆病な男が、今更の後悔に向き合い、どれだけ他人の迷惑になろうが、望んだ生き方を選び、進んでいく覚悟の物語って、大好きなのです。中田永一さん「彼女が生きてる世界線!」城ヶ崎アクトさんや、奈良原一鉄さん「装甲悪鬼村正」湊斗景明さん、など、ああいう男たちが、自分の弱さを認めて、あえて敵役を演じてくれた友の存在に感謝し、成長していく姿が、もう、好きすぎて。笑 悠さんを蹴り飛ばしてでも前に進ませてくれた杉山くんは、まさに景明さんにとっての雪車町一蔵であり、アクトさんにとってのミナトさんでした。いやぁ、ほんと、すきだなぁ………。


 どれだけ自分のことを否定しても、それは、相手を傷つけたくないという美談を成り立たせるための振るまいにすぎず、己を悲劇の主役だと魅せることは、他人の哀れみを請う態度に他なりません。それを「くっだらねぇ!けけけけけ!」と笑ってくれた雪車町のおかげで、激昂の後に、景明さんは望んで自分の生き方を選べるようになりました。悠さんも、アセクシャルの話を、杉山くんには話せたのに、彼女たちには話せないのは、結局、受け入れてもらえない、わかってもらえるはずがないと、彼女たちを信じようとしない、心のどこかで見下したり、諦めているからに他ならないのです。
 2巻では、「俺の気も知らないで酔いつぶれやがって」と、やさしい仕草で春佳さんを見守る杉山くんの様子で確信できました。彼は彼女のことがずっと好きだったんです。そしてその彼女が悠さんを慕っているから、見守っていたのに、当の本人が、どちらも選べず傷つけてばかりで、挙げ句本人が一番の被害者とばかりに哀れみを請うなんて、許せるわけがないでしょう。個人的な義憤はもちろんのこと、恋敵と認めたからこそ、やるなら本気で選べよと怒ったのが一番の理由なのでしょうね。あるいは親友と認める男に、幸福に生きていいんだと伝えるために、あえて争ったのか。どれも真実であり、どれも正解でしょう。


 光莉さんのことが好きすぎるお友だちや、革命思想つよつよおねーさんまで現れて、新たな展開に胸踊らせていたところに、好きすぎる王道の展開で、もう最高でした……。何度でも読み直させてもらいます。


 結局、わたしが尊敬する神谷宗幤さんが赤坂ニュースチャンネルで話していた内容が概ねのまとめにふさわいと感じました。
「多様性、自由、何をしてもいいんだよと云われても、大人が子どもたちに楽しむ生き方を魅せていなければ、それは伝わらないし、わからないままです。
 傷ついて、不器用で。それでもがんばって誰かと繋がろうと、あるいはひとりでもやっていこうと、生きていく。その過程で身に付いた縁、絆、勇気は、確実に、その人自身の、生き抜く力になります。
 大人が先んじて、傷つく子どもをかわいそうだかわいそうだと、守っていてばかりでは、いつか彼が、彼女が、私たち大人の手から離れたとき、自分で自分を支えられなくなってしまうのです。
 自分で立って生きていく。そのためにも、親は子を見守り、信じてみませんか。そうして傷ついて、耐えきれなくなったとき、初めて頼られ、助けてあげればいいと、僕は考えています」

 アセクシャルはもちろん、人の性格や考え、心模様はさまざまです。だからこそ、それを無知で傷つけたりしないよう、興味をもつ、知る機会を探すことは大切な努力ですし、尊敬します。けれど、そうした、普遍的な理解とは、ときときして、一人一人と向き合う勇気をかえって損ないかねませんし、「哀れんでいる私はやさしい人だ」と、善行をして「やっている」という、いわゆる善業というカルマに囚われることもありえます。それは本人にとって大変惜しむべきことであり、また傷つけてしまう人にたいしても大変失礼な振るまいと云えましょう。
 あえて、普遍的理解と最も遠く、その人が一番聴きたくないことを、受け入れたくないことを、無礼を承知で踏み込めるのもまた、人間らしい愛し方であると思います。私が好きな作品にInfini-T Forceがあります。あの作品の主人公はガッチャマンだと、私個人的には思っており、彼がヒロインのエミに言った言葉はとても印象的でした。
「私なんかいなくなっても誰も悲しまない!」「なんてことを言うんだ!おまえの友人や家族は悲しむに決まっているだろう!それに、もちろん、俺たちも!」
「そういうのがうざいって言ってるの!」
「うざくて結構!たとえお前に嫌われようと、俺はお前を守るッ!!」
 まさに。土足で踏み込み、価値観を押し付ける失礼極まりない昭和トークですが、昭和らしい、嘘のない、屁理屈のない、分かりやすすぎる愛し方だとも思うのです。嫌われることを恐れない。悲しませてしまう、苛立たせてしまう。なら、それ以上に幸せを、喜びをも産み出せるように、生きていこう……「希望」を人が姿をもって示すなら、まさにそういう言葉になるのではないでしょうか。
 そう思うと、「恥ずかしいに気まってんだろ」と叫んだ杉山くんの様子は、春佳さんへの恋心の自覚はもちろんのこと、悠さんのこと、親友として好きすぎるんだなぁというところもほほえまです。笑 うざくて結構!おまえに嫌われようと俺はお前の未来をあきらめない!ですものね。好きすぎかよ……BL推しの人だったら間違いなくカプ萌えしてそうなレベルですよ。笑



 まだまだ語りたい魅力はたくさんあるのですが、あえて今回はこのあたりで。最後に脳内劇場配役をご紹介。敬称略。第1巻と重複がありますが、若干の変更もあるかもしれません。




 悠:小野賢章   光莉:茅野愛衣


 杉山:細谷佳正  春佳:花澤香菜


 沙奈:戸松遥   理央:愛美


 和田:木村良平





 え?小野さんと花澤さんならご夫婦なんだからメイン二人じゃね?と思ったあなた!私もそう思います!めっちゃ悩みました!
 ですが、やはり、ReLIFE・海崎新&日代千鶴 の関係性にあまりに近しい二人なので、この二人を演じるなら、どうしても小野さんと茅野さんにしてもらいたかったのです。もう、もどかしかわいい雰囲気が最高!
 杉山役には、細谷さん。熱い男芝居といえば文句無しのこのお方。あるいは松岡さんも似合うかも?そうなると、戸松さんとあわせてSAOの主演ですね。笑


 それにしても、作中、トゲトゲヒロイン描写がありましたので、北条さん、露骨にガルクラに影響されましたね。笑 沙奈ちゃんの名前の響きがもう完全にニーナですよ。笑 ニーナご本人にお越しいただくのもありなのですが、あえて戸松さんをお招きしました。同じくReLIFEから狩野さんの印象です。好きな人に一途すぎる噛みつきガールなの、いい感じ!
 理央さんは革命ガールなので、山手響子さんのような、色っぽい雰囲気で、愛美さんに来てもらいました。少数派の思想を社会の多数派に染め上げようというのは、正直、フランクフルト学派で既に失敗された理論ですし、倫理的ではないし、実現不可能なレベルですが、やりとげようという覚悟が、利権欲しさの専門家もどきとは一線を画しているあたりは尊敬出来ました。
 わたしにとっては、結局、前述の、土足で踏み込む、一人一人と向き合う不器用な愛し方が好ましいので、やはり、社会を変える必要はないと思います。社会が変わらないと愛せない、守れない、は言い訳なのです。そのことを、やさしい形で伝えているのが本作であり、また、マイノリティの幸福をずっと描き続けてきた都築真紀さんの「ExtremeHearts」はまさにそれでした。ロボットのマネージャーの契約満期が訪れたとき、仲間たちは喜んで契約更新し、これからも彼女の友人であることを誓ったのです。もちろん、社会的に人権や参政権は与えられません。けれど、それでも彼女たちは友人に、仲間になれるのです。思い出を育てていけるのです。社会が恵んでくれないから人間じゃないなんて、そう言ってる人たちの方がむしろその人の人間らしさを信じようとしていない……あるいはそう受け取られても仕方のないことを言ってしまってるじゃあありませんか。
 社会や法律や倫理は変えられなくてもいい。自分の覚悟と勇気が試されているだけ。その上で、強く、賢くなって、やさしく、愛するだけでいいのでしょう。


 きっと、北条さんは、哀れみを訴えるのではなく、まさに、あなたが勇気をもって誰かを愛せるように、あなた自身の自己愛に気づいてくれますようにと、祈って、この作品を描いてくれたと、私は直感しています。



 改めて、最後にこのひとことで。



「うざくて結構!たとえおまえに嫌われようと、俺はおまえを守るッ!!」



 その勇気ひとつ、あればいい…………





 ここまで私の散文にお付き合いいただきまして、ありがとうございます。


 あなたのこれからの日々が、あかるく、やさしく、おだやかなものになりますように______

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2025年07月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

いやあ辛いね。読むのに体力がいった。

前巻で傍にいる事を選択した悠と光莉。
だけど悠は自分が一般の人と異なる性的感覚を持つ事を光莉に告げられずにいて、だからそのままうまく行くとは到底思われなかったのだけど、さらに悠の昔の彼女が現れるという、ある意味恋愛物語の王道展開。
しかもその彼女に大きな罪悪感を持っているという、いやまあ、そりゃこうなるよね。

でも根本のところは結局悠がヘタレだという事だよなあ。
何をやってるんだろうね。一度ならず二度までも同じ事を繰り返して大切な女の子を泣かせるなんて。
親友の杉山君じゃないけどそりゃ文句の一つも言いたくなる。
けれど彼にはこのどん底が必要だったのかもしれない。
底についたら後は這い上がるしかできないのだから。
それでも春香ちゃんというどん底に差し込む光がなければ蹲っているだけだっただろうけど。

次巻、悠がどんな行動を取るのか、いや取れるのか、期待したい。

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2025年09月26日

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