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Posted by ブクログ
マイケル・オンダーチェのゴールデン・マン・ブッカー賞受賞作。新潮文庫から版元を代えての復刊。
第二次世界大戦終戦間際のイタリア。ドイツ軍が撤退した後、廃墟となった僧院に記憶がなく全身に火傷を負った患者と、その看護をする若い看護師が住んでいる。そこに看護師の父の友人と、爆弾の解体工が加わり、四人による生活が始まる。。。
美しい。ただひたすらに美しい小説。
詩的な文章により、四人の過去と主に北アフリカ地方の歴史が語られる。北アフリカの話は、描かれるほとんどに馴染みがないので理解できない描写も多いが、砂漠の幻想的な表現が非常に良く読んでいても飽きさせない。
特にイギリス人の患者の過去がほんのりわかり始めてからが面白く、そうかそういう話だったのかと、その悲劇の美しさに圧倒される。
訳者の人も解説で説明しているが、ラスト付近がちょっと駆け足か。余韻は良いのだが、そこだけが少し残念。
また場面転換が非常に多く、読む人を選ぶかもしれないが、ゆっくりと全身で味わう小説なんだと思って時間をかけて読んでみて欲しい。