【感想・ネタバレ】謎の平安前期―桓武天皇から『源氏物語』誕生までの200年のレビュー

あらすじ

電子版は本文中の写真を多数カラー写真に差し替えて掲載。
平安遷都(794年)に始まる200年は激変の時代だった。律令国家は大きな政府から小さな政府へと変わり、豊かになった。その富はどこへ行ったのか? 奈良時代宮廷を支えた女官たちはどこへ行ったのか? 新しく生まれた摂関家とはなにか? 桓武天皇・在原業平・菅原道真・藤原基経らの超個性的メンバー、斎宮女御・中宮定子・紫式部ら綺羅星の女性たちが織り成すドラマとは? 「この国のかたち」を決めた平安前期のすべてが明かされる。

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中央新書の細かすぎる歴史シリーズは良書が多いとの噂。
一つ前の大河で紫式部やってたと思うけど、本書は平安時代の紫式部前を徹底的に考察する。

桓武天皇の策略やら文官の出世街道、女官の活躍からの衰退といったテーマで、よく知らん話題なのに引き込まれる。大枠としては、天皇系譜との親族になることでいかに政治の中枢に入り込むかを謀るドロドロとしたドラマが垣間見れた。

どのような血筋で氏はどこでとか、でてくる登場人物多すぎて名前はほぼ覚えられない。でも歴史学の最先端に触れることができたようで、良い読書でございました。

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2025年04月27日

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ネタバレ

桓武から枕草子源氏物語まで200年あってその間の話があんまりないということ自体に気がついてなかった。それなりに政変があったりと化してるのだというのを初めて知ったくらい。女官が女房に、荘園が自立し、変化はそれなりにゆっくり進んでいたんだ。

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2024年08月15日

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斎宮歴史博物館の榎村寛之氏による平安前期の概説。「謎」とあるのは、一般にわかりにくい、誤ったイメージを持ちがちな平安前期の認知状況を表現したものだ。他の通史と比べて、女官や斎宮の記述が多く、目を引く。また、現代で言えば〜といった例えが軽妙、ユニークで、読んでいてわかりやすく飽きさせない。下級官人である歌人をポケモンに例え、憐んでいたのは思わず笑ってしまった。9〜10世紀への興味がますますわいてきた。

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2024年01月28日

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紹介される人物があまりにも多く、ふんだんに系図や一覧表が挿入されてはいるが、誰が誰なのか、ほとんどアタマに折りたためないまま読み進む。それでも面白いことこの上なし。今までの歴史解説書とは違う感触を楽しめる。豊饒な世界。

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2025年05月02日

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平安時代前期の歴史を生き生きと記述した一書。平安貴族社会はのぺーとした一様なものではなく、その時時の天皇、藤原家の面々の思惑、天皇と結婚したキサキに男児が生まれるか女児が生まれるか、といった様々な要因で、あれこれを揺れ動いたいた(当たり前と言えば当たり前)。歴史学者はともすれば(『広辞苑』にも載っていないような)難しい漢語を使うこともあるのだが、著者は分かりやすい言葉、しばしば現代のカタカナ語を使い、現代で言えばこれこれこういうことだと説明してくれるのでとても分かりやすい(呑み込みやすい)。たとえば官位の低い歌人が活躍できたさまを「いわば誰でも参加できるカラオケバトルが宮廷で文化として定着した」「ただしカラオケバトルで優勝しても簡単にはスターになれない(つまり官位はもらいえない)」というように。しかし、記述がとても丁寧で細かいので、知識不足学力不足の僕が、何割くらい理解出来たのかは少々疑問。知識が増えればもう一度チャレンジしてみたい。読んで良かった!

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2025年03月20日

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咀嚼できてない部分もあるが、一気に読んだ。とくに第八章の紀貫之の話は、元々古今和歌集の仮名序に関心があったのでとても面白かった。
いわゆる六歌仙の時代は和歌不遇の時代で、紀貫之らによる古今和歌集は和歌復権の旗印だったと。
仮名序で6名の名を挙げながら全然褒めてないとは知っていたけど、貫之にしてみれば、柿本人麻呂や山部赤人の時代が至高で、在原業平らのことは、最近にしちゃマシな方だけど和歌の魅力はこんなもんじゃない!みたいな扱いだったということか。
ただし、なぜそれが後に六歌仙などと呼ばれるようになったのか、の謎は深まった。

また、女性の活躍の場の変遷(というか活躍の場がなくなっていく様)の説明が詳しい。
古来には女性天皇が何人もいたのに平安期には誕生しなくなった。そのメカニズムについて考えたことがなかったので大変勉強になった。

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2024年12月21日

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一般的になよっとしたイメージを持たれがちな平安時代であるが、有名な紫式部や藤原道長などが活躍したのは平安時代の後半であり、平安遷都からの約200年間=「平安前期」は、時代の転換期で面白く変化に富んだ時代だったという問題意識から、桓武天皇の事績とその後の皇位継承、貴族と文人の関係、宮廷女官、斎宮・斎院、紀貫之を通して見る平安文学など、平安前期の様々なエピソードを解説。
確かに著者がいうように、平安時代としてイメージするのは平安時代の後半期のことが多く、平安前期については、高校の日本史で習った通り一遍のことは知っていても、その具体的なイメージはあまり持っていなかったので、本書の内容はとても興味深かった。「平安前期200年は、奈良時代に作られた律令国家を基盤として、律令国家という外枠を残しながら、古代から中世に向けてのいろいろな試行錯誤が行われた時代」だということがよくわかった。
特に、平安前期には地方出身のインテリが文人として出世する道があったが後期には閉ざされていったこと、また、平安前期までは宮廷女官も政治の中心にいたが、その後女性が宮中で活躍できる場が少なくなり、女房のサロンに能力のある女性が集約されたことで、女性による王朝文学が華開いたということ、あるいは、和歌の名手は出世とは無縁の人が多かったことなどは、目から鱗だった。
また、天皇・皇室に関心が強い自分としては、平安前期の天皇や皇室についての知識を深めることができたのも有意義であった。
著者は、斎宮歴史博物館の学芸員として長年斎宮の研究や普及に取り組んでおり、本書もその研究成果がふんだんに盛り込まれている(斎宮についての記述が異様に充実している)。また、一般向けの展示解説などの経験が豊富なこともあって、ポケモンやコミケなどの卑近なたとえ話が多いなど、文章もとてもわかりやすかった。

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2024年03月19日

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イメージが湧きにくい平安時代の前期200年を天皇、文人官僚、貴族、宮廷女性など多様な視角から描き出そうとする試み。人名などに馴染みがないので読み進めるのが難儀な箇所も多いが、時折平たく噛み砕いて説明してあるので、何とか読み通すことが出来た。

最後の第10章に全体のまとめがあり、これはわかりやすい。序章の年表もわかりやすい。ただ中身はそう簡単に理解できない。とくに第5章、第6章は読み返さないとついていけない気がした。

やや強引にまとめると、中国の律令制を模倣しようとして完コピに失敗した日本があらためて国家目標としたのは、「天皇を中心とした官僚制度」の確立であり、それは桓武天皇から始まりようやく醍醐天皇の時代に完成する。しかし、醍醐天皇の親政時代は同時に藤原支配体制の始まりでもあった。菅原道真排除に成功した時平・忠平以降の「護送船団方式」内の権力争いに最終的に勝利したのが、花山天皇の退位事件であり、新たな摂関政治が始まる。以後の200年近くが平安後期ということになる。

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2024年02月12日

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<目次>
はじめに  平安時代は一つの時代なのか?
序章    平安時代前期200年に何が起こったのか
第1章   すべては桓武天皇の行き当たりばったりから始まった
第2章   貴族と文人はライバルだった
第3章   宮廷女性は政治の中心にいた
第4章   男性天皇の継承の始まりと「護送船団」の誕生
第5章   内親王が結婚できなくなった
第6章   斎宮・斎院・斎女は政治と切り離せない
第7章   文徳天皇という「時代」を考えた
第8章   紀貫之という男から平安文学が面白い理由を考えた
第9章   『源氏物語』の時代がやってきた
第10章   平安前期200年の行きついたところ

<内容>
平安時代。今年の大河ドラマがこの時代だ。そしてそのテーマは『源氏物語』。我々もイメージするのは貴族たちの恋多き時代。しかしこれは11世紀以降のいわゆる「摂関政治」の時代で、平安時代の後半200年の始まりの頃の話だ。784年から1185年まで400年続く平安時代全体が、そうではあるまい。この本はそうしたことを教えてくれる。著者がわかりやすい表現、たとえをしてくれるのでわかりやすいこともあり、日本史教員として少し教えにくいこの時代を楽しく学ぶことができた。これを授業にどう取り入れるかだ…。  

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2024年01月18日

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ネタバレ

知らない事がたくさん。奈良時代と平安時代の違いや女官についてや文学の話が面白い。知らない事がたくさん。

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2025年11月17日

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ネタバレ

源氏物語誕生までの200年、とよく考えたら源氏とは全く関係なさそうなタイトルですね。
でも、桓武天皇時代は長岡京遷都など興味深い事柄が多いので手に取りました。

まず、初歩なのに知らなくて驚いたのは、日本書紀から始まる古代の「正史」は887年までしかないそうです。
日本書紀の他日本後紀など六国史と呼ばれる歴史書が作成され続けなかった理由・・・それは単純に言うと面倒くさくなってしまったからだそう。
中国に倣い正史を作ったが、苦労して編纂した歴史書から学ぶものよりも、行政を行うならそれぞれの事務担当が生の声を残した方が便利、と気が付いて、それ以降は貴族日記として残していったというのは面白いなあと。実資も趣味で書いてたわけじゃないんですね(笑)

あとは、桓武天皇の時代あたりは、血統ではなく学者が政治に関われる時代だったそう。貴族でなくても自らの学識を生かして出世が出来たそうで、この時代なら為時も出世できたのになーなんて思っていたら。。それどころか女性も奈良時代の女帝が多く輩出された時代は、尚侍や尚蔵が天皇の伝宣など大事なお役目があり、才能があれば立身出世していったというのだからそれこそこの時代に紫式部や清少納言がいたら・・・なんて考えちゃいました。
それが、男官の中に「蔵人」という職務が生まれ、尚侍や尚蔵が天皇の伝宣をする役目を奪ってしまったそうです。(この初代頭が冬嗣ね)
藤原氏恐るべし!です。

本書は全体的にそんなに難しい文章ではないのだけれど、それでも幅広い基本的知識がないと読みこなせない所も多数あり・・・
もう少し知識を蓄えてから再読したい本です。。

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2025年03月14日

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非常に情報量が多く、頭にすんなり入っていかなかった部分も多々あったが、面白かった。
護送船団で固めた嵯峨体制、それを摂政へと塗り替えた藤原良房。伊勢、賀茂、春日の斎宮の話。奈良時代に比して女性のステータスが下がり、政治に参加できない分、サロンを作り、そこから本名さえ残されていない清少納言や紫式部が現れたり、男性貴族が力を見せびらかそうと十二単へと極端化していく。

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2025年01月04日

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400年続いた平安時代の前半200年で生じた政治や宮廷の変化を丹念に書かれていた。奈良時代には女性も政治の表舞台に出て、名前が残っているが、平安時代になると稀になり、今の大河ドラマで出ていた高階貴子以降、名前すら残りづらくなってくるという。また、中央と地方の関係も変わり、中央から派遣されることが減り、中央と地方でそれぞれのヒエラルキーが生まれていく様子も興味深い。200年の間に貴族の役割や体制が徐々に変わってきた要因も推測されて理解しやすい。

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2024年08月02日

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今年の大河ドラマがらみで読んでみた。
著者がなるたけ面白く書こうと努力しているのは伝わるが、如何せん私の知識不足でなかなか読み進まず、意外に時間がかかってしまった。
家系図、血筋の話がほとんどなので、もともとよく知らない人たちの話になると……。
後半、古代女官の話などは興味深かった。
新書は、すいすい読めるやつと、学術書に近く読み応えのあるものとの落差がはげしい……。

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2024年06月25日

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書店で目次を開き面白そうと思い購入。以下にまず目次を記します。

はじめにー平安時代は一つの時代なのか?/序章 平安時代前期二〇〇年に何が起こったのか/第1章 すべては桓武天皇の行き当たりばっかりから始まった/第2章 貴族と文人はライバルだった/第3章 宮廷女性は政治の中心にいた/第4章 男性天皇の継承の始まりと「護送船団」の誕生/第5章 内親王が結婚できなくなった/第6章 斎宮・斎院・斎女は政治と切り離せない/第7章 文徳天皇という「時代」を考えた/第8章 紀貫之という男から平安文学が面白い理由を考えた/第9章 『源氏物語』の時代がやってきた/第10章 平安前期二〇〇年の行きついたところ

平安時代というと、煌びやかな王朝文化が花開いた割合安定した時代というイメージがあるが、なんとも漠然としており自分な中ではっきりとしたイメージが持てない。平安時代ってほぼ400年続いているわけですが、それすらあまり意識しておらずこの時代を描いた歴史小説をあまり読んでないのもあって、なんとなく安定したいい時代くらいの認識しかなかった。

で、本書だが、目次を紹介させていただいたが、中々面白げな章題が並んでいる。いざ読むと歯応えがあり、夥しい人名の渦の中で理解が進まず途中からは斜め読みになってしまった。それでも、第10章に辿り着き、ここに著者の言いたい事はコンパクトに集約されていた。

一番の驚きは、女性の地位が奈良時代に比べて、大きく低下していると著者が認めていること。宮中(政治)の中で能力のある女性の活躍する場が減ったことが、サロン化された後宮の中で花開き、女流文学の隆盛に寄与しているという見立て。現実に紫式部も和泉式部、清少納言も本名すら伝わってないと言う。日本の女性問題には長い長い歴史があるんですね。

参考文献も沢山紹介されているのも親切だが、果たして自分の理解出来る本がどれくらいあるだろうか。

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2024年03月24日

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