【感想・ネタバレ】世界中で言葉のかけらを ――日本語教師の旅と記憶のレビュー

あらすじ

「ぜんぶ英語でいいじゃない」という乱暴な意見に反論し、複言語能力の意義を訴え続けてきた日本語教師が、中国の雲南省、セルビア、フランス、ブルガリア、ハンガリー、エストニアなど、世界の各地を旅して慣れない言葉を使い、感心し、絶句し、立ち止まり、また歩き出す。あるいは日本語を教えていて、慣れない言葉を使う学生たちの日本語の魅力に気づく――そのような、言語を体験した驚きの瞬間とその記憶を読者の皆さんと共有したいという想いから綴られた、言葉をめぐる旅の記録。 【目次】まえがき/第一章 ちがう言葉でおなじ世界を夢に見る──日本語教師としての経験から/1 落ち葉を拾う/2 週末、何をしましたか?/3 いつも、はなちゃんのせい/第二章 どうかあらゆる泉に敬意を──「ぜんぶ英語でいいじゃない」への長い反論/1 君は僕の髄液/2 地図と鉛筆と紙があれば/3 色気あるカミュの声と、「せんせい、まっておれ!」/4 積みあげれば自分の背の高さになるまで/5 おばあちゃんと話したいから/6 ひとつのちから/第三章 そういえば猫さえも国がちがう──三者三様の言語教師/1 良い風が巡っていますように/2 私はワイマールに生まれました/3 ひまわり畑がすごくって/第四章 ぶらごだりや──言葉が通じない場所への旅/1 長く、安く、遠くに/2 季節はずれのサンタクロース/3 みなさまのために歌います/4 レモンをはさんだ枝で/第五章 さえぎらないで、妄想中だから──歩くこと坐ること、食べること着ること/1 行きなさい、迷うことはない/2 あの味を手に入れるために/3 へりに立つ人/4 はじめてのママ友/5 あなたに平安がありますように/6 風をさがす――二〇二〇年/注/あとがき

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

 副題的に添えられた「日本語教師の旅と記憶」に惹かれて読んでみたもの。

 前半、日本語教師として接してきた外国人とのやりとりが面白おかしく描かれている。10年以上前だが、漫画であった『日本人の知らない日本語』(2009)を彷彿させる。

 「ニコラ」という自分の名前に「笑良」と当て字をしたり、勝手に「眠気覚ました」と動詞化するなど、
 「ちょっと日本語母語話者(ネイティブスピーカー)には考えられないルール破り」
 と著者も記すように、まさに、”日本人の知らない日本語“のオンパレードだ。

 本書は、「ぜんぶ英語でいいじゃない」という乱暴な意見への積年の反論であり、複言語能力の意義を訴え続けてきた著者の思いに溢れている。多様性と、昨今、はやりの言葉で片づけることも、それこそ、多様性を欠く気がしてはばかられる。もっと、いろんな言語、その言語を生み出したバラエティに富む思考で、考えたくなる。

 意中の相手に思いを告げることばが、中国では「おまえは俺の髄液だ」と言い、日本語ではと訊かれた著者が「おなじ墓に入ってくれないか」と答え、まわりの外国人から、「それはないだろう」と非難を浴びるクダリも実に面白い。
 漫画で日本語に親しんできたフランス人が、「待っておれ!」(マンガ「NARUTO」のセリフ)と発するなど、こうした逸話は、おそらく枚挙に暇ないことだろう。

 やはり、文化や言語は、多様性に富んでいるほうが面白いし、それを知ることで人生が豊かになる。

0
2024年08月05日

「学術・語学」ランキング