あらすじ
塩が世界を埋め尽くす塩害の時代。塩は着々と町を飲み込み、社会を崩壊させようとしていた。その崩壊寸前の東京で暮らす男と少女、秋庭と真奈。世界の片隅で生きる2人の前には、様々な人が現れ、消えていく。だが──「世界とか、救ってみたくない?」。ある日、そそのかすように囁く者が運命を連れてやってくる。『空の中』『海の底』と並ぶ3部作の第1作! 番外編も完全収録!!
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Posted by ブクログ
✶印象に残った言葉↓
「誰もいなくなっても__毎日。世界中のすべての人がいなくなっても。海も空も太陽も、誰かに見せるために朱に染まるのではない。綺麗な景色に意味などなく、それはただ綺麗というだけのことだ。美しいと誉めそやすのは見ている側の勝手な評価で景色は美しくあろうとして美しいわけではない。」
「元々世界なんかお前が思ってるより適当でいい加減なもんだぞ。」
「何とかなるのかどうかは分からない。だが、少なくとも自分が手を伸ばす自由はある。手は動くのだ、自分が伸ばそうとさえ思えば。たとえ、それが届かなくても。__恋は恋だ。」
「誰かを片側から思う時間は苦しくて楽しい。あの人はこちらを振り向いてくれるだろうか、笑ってくれるだろうか、自分をどう思っているだろうか、自分があの人を好きなように、あの人も自分を好きになってくれるだろうか。その人の仕草、言葉、表情__すべての端々に一喜一憂して、一喜一憂することが苦しくて、楽しい。いつか想いが叶うといいなんて夢をあてどなく見ながら。」
「きっと、最後の瞬間まで恋をしていた人たちはいっぱいいる。そのうちの一つの恋が、世界を救ったのだ。世界を救うなんて大上段な使命感ではなく。
ただ好きな人を守りたい、という願いがきっと一番強いのだ。きっと世界を守りたいなんて思って世界を守る人はいない。好きな人がこの世界にいるからだ。好きな人を守りたくて、守り切ったらついでに世界も救っていた。きっとそんなものだったのだ、この世界が救われたのは。」
「寒いと思っただけで温めにくる恋人とはたぶんいろんな呼吸が合っているし、愛されているとも思う。」
Posted by ブクログ
明日、急に大切な人がいなくなるかもしれない…
恋人、夫婦…片割れを失っては生きていけない、失うのがこわい…倫理観もなくただ、ひたすらに、一緒に
生きていたい。そんな世界で人々は出会い、その中で恋をした。たった1つの恋が世界を救った。秋庭さんカッコよかったなあ〜笑 塩害中に出会ったタカハシノブオが最後に書籍出してるところ、その記事を読んだ時に、なんかすごい感動というか込み上げてくるものがあり号泣しました
Posted by ブクログ
前半を読み終わった時は、「こういう展開なの…?」と少々困惑した。話の内容的に、恋愛より世界情勢について書かれると思っていたから。
しかし、最後まで読むと前半までの展開に納得した。あまりこの本のような展開は他にない気がするが、この方がキャラクター達をより好きになることができると感じた。
秋庭さんの不器用だけど真っ直ぐなところも好きだし、真奈ちゃんの芯の強さも好きだった。
大好きなお話。
大好きで何度も何度も何度も読み返しています。いつでも読めるように電子でも購入しました。
優しくて不器用な自衛官と強くてか弱い女の子のお話。真奈の軽い荷物であろうとする姿にとても非常に共感します。
世界の運命をかけた大恋愛。大好きなあなたしかいらない、という真っ直ぐで熱い気持ちが響きます。
Posted by ブクログ
・一本の映画を観たようだった。
・塩の結晶によって「塩害」になり死んでしまう世界で出会った、主人公の高校生真奈と、自衛隊員秋庭の物語。
・本編は塩害被害を食い止める話で、その前後談として高校生が自衛隊基地?で出会った女性隊員と夫、自衛隊員のサイコパス同級生、ルポライターを目指す中学生との出会い、自衛隊員の父などが登場する短編集で構成される。
・この話は2004年刊行とのことだけど、東日本大震災やコロナ渦を思い出してしまった。ガラッと変わってしまった環境や大事な人を失った世界で、新しい大事なものができたり、改めて大事なものに気づき、今度こそは後悔しないように行動したり。
・大事な人を大切にして、最期の時は安心の中で過ごしたいと思った。
・文庫本版とハードカバーで描かれたりそうでなかったりがあるよう。今回ハードカバーで作戦実行部分が端折られてるとのことなので、いつか文庫本バージョンで読んでみたい。
Posted by ブクログ
巨大隕石(塩の結晶物体)により人々が塩化する災害にみまわれた世界で、元自衛官と彼に助けられた女高生を中心に彼らに関わる人々と世界を災害から救う物語。
序盤は塩害によって人生を翻弄される「終末のフール」(伊坂幸太郎著)を思わせる切ない話だった(涙涙)。
その後は何となく恋愛小説的なお話となりちょっとだらけたけれど、天才科学者が登場すると話が面白くなった。私は、中学生の頃、よくSF小説を好んで読んでいたから。
主人公(彼)が、命をかけて塩害の元となるものに立ち向かうのだけれど、天才科学者曰く
「彼が作戦を成功させるとしても、彼は世界なんか救ったんじゃない。君が先に死ぬのを見たくないってだけの、利己的な自分を救ったんだ。そしてその感情の先に繋がってる君を救う。僕らが救われるのはそのついでさ。君たちの恋は君たちを救う。僕らは君たちの恋に乗っかって余禄に与るだけさ。」
これっていいよね!
Posted by ブクログ
2025.08.12 (火)
優しい…甘くて痛い。
秋庭さんがメロい。こういうぶっきらぼうで雑な人が、これみよがしな気遣い方をせずに、大事な人には頭があがらないの図がだいすき。10歳も離れているなら尚更。
30手前の男がこんな時世で未成年を守り抜くなんて並大抵ではないと思う。原動力は失われつつある世界で出会った彼女。自分が明日どうなるかも分からず、他人の心配までできる人はそんなにいない。世界に真奈ちゃんがいたから秋庭さんは救いたかった。自分より先に塩になる彼女を見たくなかった。なんてわがままな愛情なんだろう。
秋庭さんには2度目の世界では、彼女が世界になった。
あとがきも良かった。わたしは割とあとがきにワクワクする人間なんだけど、結構すき。
「この人たちがこの人たちの世界で幸せであってくれたらいいと思います。もうちょっと上手に書いてあげられたらなぁ、とはもう言わん。元気でいてください。」
作者の中にはもう登場人物に会いたくない、やっと決別できる。なんて言う人もいるけれど、わたしはやっぱり本1冊を通してそれなりの愛着を持つ人間だから、作者自身が登場人物に思いを馳せ幸せを願っているのが嬉しくてたまらなかった。
Posted by ブクログ
これもとても泣いた作品。あ、こんなにも心が締め付けられる恋ってあるんだなって、改めて気付かされました。この本のような素敵な恋に巡り会えたら幸せなのかなと思います。まっすぐなハッピーエンド
一つの恋に世界があやかっただけっていうのが好きすぎました
Posted by ブクログ
面白い!
秋庭さんめろ
納得いかない設定もちょこちょこあったけどまあファンタジーなので
あと意外と呆気なく塩害が解決したのは動揺した笑
Posted by ブクログ
自衛隊三部作の1番目の物語。なんと著者のデビュー作というのを読み終わってから知りました。
地球に、飛来した塩の結晶が感染性伝播して、見てしまうと塩化して死に至る。スーパー災害で、日本だけで数千万人の被害を受ける。
これを解決できたのが、自衛隊の秋庭。ちょっと危険な友人入江がたてた作戦を実行する。その前から両親を塩化で亡くした真奈と暮らしていた。この2人の恋模様がとても良い。
世界を救いたいから命をかけるのではなく、真奈をたすけることだけに命をかけるのがカッチョいいです。
無政府状態になると、やはり女性は危険な思いをするなと思い知らされました。
個人的には、後日譚や前日譚のお話のほうが面白かったです。
特に、野坂夫婦の缶コーヒーの話は好きでした。
阪急電車や植物図鑑などが好きでしたが、著者のこういった話はあまり読んだことがなかったので、新鮮でした。
三部作全部読破したいです。
Posted by ブクログ
あらすじの印象だとSF小説かなって想像していたけど、思ったよりも恋愛要素が強かった。
なんで真奈が秋庭に拾われるに至ったかの話は読んでて辛かった。
最初は他人だった2人の距離がだんだん近づいていく感じが良かった。
本編も良かったけどその後のお話が特に好き。真奈も秋庭もお互いの事を信頼していて、とても大事にしているのが伝わってきて良かった。秋庭が父と仲直りする話はめっちゃ泣いた。キッカケがなかっただけで2人とも相手の事が好きなのが微笑ましい。
人を好きになる事の尊さを感じた。
Posted by ブクログ
突然宇宙から塩の塊が飛来したことをきっかけとして、人間の体が塩になって死んでいく「塩害」が蔓延した世界を救うカップルの話。と、規律を失い荒廃した街で強くしぶとく生きる人々の姿を描いた後日談。
有川浩先生のデビュー作であり、いわゆる「自衛隊三部作」の第一作であり、3作の中で一番甘くロマンチックでメッセージ性が強い。「人間の原動力は『世界を救う』なんて壮大なものではない」というのがストレートに伝わる。展開がちょっと甘すぎて読んでいて気恥ずかしくなってしまうほどだが、突き抜けた恋愛成就はやっぱりいいもので幸せな気分になれる。そして終盤挿絵のF-14 トムキャットがここぞってところに出てきてものすごくカッコいい。