あらすじ
青春の息苦しさとまばゆさを描く社交ダンス部群像劇、いよいよ完結! 社交ダンス部に入部した、元気女子・夏(なつ)とネクラ男子・端場(はば)。ソリが合わない2人だが、ペアでしか味わえない楽しさを知っていく! 新入生歓迎公演に向けて練習を始めた夏たち。ある日、夏はネット上に文化祭公演の動画がアップされているのを発見。そこには嘲笑の言葉が書き込まれていた……。悪意を跳ね返して、今度こそ本気の踊りを披露できるのか!?
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いまやすっかり人気マンガ家、ヤマシタトモコの名を一躍世間に知らしめた作品。
絡まる人間関係、毎日の中に息づくトラウマ、空回るプライド。楽しいことだけじゃない、かゆかったり苦しかったりを繰り返す「青春」を、痛々しいほどリアルに描く。
高校生活が始まり、憧れのヒップホップデビューに胸を躍らせダンス部に入部した主人公・夏。しかしふたをあけてみるとそこは「社交ダンス部」だった…。筋トレ、合宿、文化祭、コンクール…「本気」とは何かを考えながら日々奮闘するダンス部。コミュ障男子、ヅカオタ男子、無気力女子、メガネを取ると実は美少女などなど、一癖ある部員たちのやりとりがじんわり沁みる。特にマジメ部長高岡のもどかしい恋の行方は必見!
男性・女性問わず、社交ダンスを知らない人にも楽しい。バターになりそうなほどぐるぐる踊りながら成長していく、夏たちの成長ストーリー。今一番映像化してほしいマンガ!
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Posted by ブクログ
最終巻……でした!
唐突に終わってしまったような気がして、あとがきで目ん玉飛び出ましたが、最終巻です。
タイム・トゥー・ゴー。最終話、英語なんてわからないけど、夏とか端場くん、げっつに掛井くん、引退しちゃったけど二宮先輩と高岡先輩がはじめてくれた明彗学院高等学校のダンス部の幕開け。
物語はこれからも続くんだろうなあと思わせる終わり方でした。
一巻一巻の題材がそれぞれあまりにも些細なリアルさと訴えかける鋭さをもった最終話みたいな深い話だったから、驚いてしまったけれど、あの卑屈系男子の端場君があんなにかっこよくなって、同じ卑屈系としては大変腹立たしくて悔しいところでした。なんだよ!お前成長したな!かっけーよイケメンだなちくしょう!って感じです。
戯言はさておき。
ヤマシタさん初めての続刊連載ということもあって、もう終わっちゃったのかと少し寂しい気持ちでしたが、胸の奥のずくずく響いた素敵な作品でした。
夏の晴れやかなまでにあけすけな言動と気持ちだとか、げっつの自尊心塗れの震える勇気とか、掛井君のどうにもならないことへの苛立ちとか優しさじゃない遠慮だとか、端場くんの劣等感と情けない自分への吹っ切れだとか、書きたいけど書ききれないくらいその他脇役の人もきらきら光っている群像劇でした。
二宮先輩の頑張る・頑張らないの話もそうだけど、最後のシーンの新歓ステージで「楽しく!」って夏と端場くんが言い合っていたことも、結局楽しいことなんて一瞬で、それのためだけに頑張れるんだよなあと考えさせられました。
なりたい理想の自分に成るためでもなく、誰かに指図されて他の人がそう言っているからでもなく、自分がやりたいとかそれで楽しいって思える気持ちが頑張れるっていう原動力になるのかもしれない。
実際社会人の方からすれば仕事だとかも楽しくなんかないって思う方もいらっしゃるかもしれないけれど、結局その楽しいを見つけたり、自分が当たり前にただこなしていた仕事でも「よくできた」「良かった」って思えることを見つけていくからこそ、必死になったり、気持ちぶつけたりできる。
二宮先輩みたいに必死になる・努力することは報われない可能性があることは怖いし無駄になったりそれを否定されたらとても傷つくのは当たり前で、でも誰かの悪い評価とかもあるからといって、それが今まで必死になったり努力したりした自分の否定ではない。
それでこそBUTTERになるほど蕩けて溶けてしまいそうな自分の肌で感じた感動はそんなもので差し引きできるものじゃない。
最近勝手な言い分ですがそう思います。思っていることを形にするために言葉や口があるけれど、それにしないからって形にならなくて無駄っていうものあまりにも味気ないし、その気持ちや想いや思考が存在しないとは絶対に言い切れない。
上手くまとまりません。ここまで徒然書いていると、また信者かよ、だとか、腐女子乙とか思われるかもしれないけれど、そんな偏見なしに見てほしい作品です。もったいない。
脱線しますが、個人的な意見としては、腐女子だからっていうわけじゃないけど、そういう人が描く女ってすごく醜いけど最高に素敵だったり、男は情けなかったりどんな人でもイケメンにしちゃえるからすごいと思うし大好きです。ヤマシタさんの作品ならHERはリアルな女性の本音を切り取ったあの作品は有名ですしね。
三巻の帯にもあった「青春はうまくできない。だから、とびきりいとおしい」っていうは本当に秀逸だと思います。誰が考えたんだこれ天才だろ、と世界の隅っこで感動してました。
とびっきりの、いとおしい青春、きっとヤマシタさんも憧れたのかなあとか思ったり、誰もが憧れてるよなあと思ったり、もちろん私だってこんな青春送りたかったなあとか思ったり。
いつだって青い春への羨望は人間の心に棲みつくものですね。未成熟だからなおのことあけっぴろげの感情と態度や、ままならないながらももがく若々しさとか。きっと自分にも少なからずあったはずなのに、隣の青い芝のように遠くから見ると眩さがよく見える。
続刊連載は終わってしまいましたが、久しぶりによい青春モノに出会えた気がします。次の作品も楽しみにしたいな。