あらすじ
ドラマ化され、米放送映画批評家協会賞を受賞!
イサクを亡くし、劣悪な環境下で戦中を生き延びたソンジャ。二人の息子を育てた彼女の前にハンスがまた現れる。ハンスは日本の裏社会で力を持ち、陰でソンジャを支えていた。しかし大学生になった長男のノアが実の父について知ったとき悲劇が起きる。国家と歴史に翻弄されながらも生き抜く家族の姿を描いた、比類なき最高傑作完結!
※この電子書籍は2020年7月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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Posted by ブクログ
どの人の挫折も壮絶だった。差別がもたらした失意。挫折や失意などの言葉では足りない。
差別されると、相手をクソと思いつつ、差別からどうしても逃れたいと思う。特に子どもには同じ思いを絶対に経験して欲しくない。
この物語は誰に向けて書かれたのだろう。日本や日本人を単純に糾弾したわけではない。在日コリアンとして生きる哀しみ、苦しさを書いたのだろうか。
ノアの自殺は痛切だった。思い出すだけで息が止まる。涙が滲む。
ソロモンとフィービーの別れも悲しかった。ソロモンの解雇も。
殉教したイサクだけが救いだ。
そして、ハンスを通してある意味カネが全てであることも感じた。
Posted by ブクログ
在日コリアンがベースにはなっているけれども、それはあまり重要ではなく、どちらかと言うとアジア版のアンナ・カレーニナ。燃えるような恋、幸せな家庭、別れ、子供、自殺、死別、といった人生で起こることが詰まっている本。パチンコというタイトルが勿体無い気はする。
Posted by ブクログ
久しぶりに骨太の名作に出会えた。
登場人物が自分の中で今も生きていてフィクションとは思えない読後感。
特に、読者を惹きつけるのはイサクとノア。善人に限って、というか善人だからこそその生涯をあのような形で終えなければならないあたり、悔しさや無力感を覚えた。
Posted by ブクログ
ノア衝撃。
現代では少なくなってきたと思うが、ちょっと昔はかなり、出生に関係したいざこざが絶えなかったんだな。悲しい
ノアの決断が哀しい。
しょうがないよなとも思える。
主人公が変わりすぎてちょっと味気なくもあるが、面白かった。だからパチンコかー。
Posted by ブクログ
祖国にとどまるのも、出ていくのも。
祖国に戻るのも、戻れないのも。
生まれる国は選べないのに、どちらも、貧しく困難な道のりとなる。
それでも彼らは、誠実に生き抜いていく。
ソンジャの母ヤンジンも辛抱の人だ。でも、最後に抱えていた内面を吐露してしまう。そんな親娘の感情のぶつけ合いが印象に残った。
Posted by ブクログ
夫ではない男の子どもを宿し、ソンジャは日本に渡ってきた…4世代に渡る在日コリアン一家の過酷な物語。
大好きな韓国と日本との関係を考えさせられるという意味ではモヤモヤ感がありますが…
とても読みやすく…壮大で救いの物語面白いかったです。
Posted by ブクログ
子の世代ではなんとかこの窮状から抜け出してほしいという親世代の強い願いが何度も書かれていて、子にとっては重責だろうなと思った。そして願いを叶えるのは簡単なことではないのだと、物語の中で示されることになる。どれだけ真面目で優秀であっても、在日コリアンというだけで日本では差別され職がなく、さまざまな場面で理不尽な目に遭ってきたということを、リアルな視点で読むことができた。知らなければ想像もできないことだ。
人種や生まれに関係なく良い人もいれば悪い人もいて、どの国にも色んな面があることが丁寧に描かれていた。一方的に善悪を決めつける書き方はされておらず、登場人物たちがそれぞれの立場でものを考えている。現実の多種な問題に対する読者の意識を刺激し、考えさせられる内容になっていた。
ノアは正当に認められなければと思うあまり、自らも差別をしてしまう状況になっているのが悲しかった。たとえばモーザスの職業についても、ノアは良く思っていないようだった。人並みの日本人になりたがったノアの苦悩は計り知れない。なにか別のものになる必要はなく、自分が自分のまま生きられる国にならなければいけないと思う。
人生はパチンコのようだとはいえ、あまりみんなが運命に振り回されてほしくないと願ってしまった。そんな読書体験だった。
Posted by ブクログ
苦労しながらも、自分の生き方に誇りを持っていて、背筋がのびていた人物の描き方が、平坦になり、特にハンスは、賢くて、自分なりに愛を貫いていたのに、完全にヤクザになっていてとても残念。
波のような歴史の中で、二、三、四代目となってもなっても、在日であるが故の苦悩と葛藤が、とてもしんどかった。 アメリカで暮らした筆者が、在日と呼ばれる多くの人に思いを馳せ、この本が、アメリカて注目を浴びたということを知った時、同じように移民として苦労してきた多くの祖先たちのいる彼らにとつて、心を通わす小説だということに思いが至った。
Posted by ブクログ
《あらすじ》
第二部 母国 1939〜1962(承前)
勤勉なノアとは対照的に喧嘩っぱやく学校が嫌いなモーザスは、靴下屋での警察沙汰をきっかけに後藤のパチンコ屋で働き出し、順調に出世していく。後藤懇意の仕立て屋はモーザスの学生時代唯一の友人春樹の実家であり、2人は後にモーザス退学以来の再会を果たす。また、モーザスは仕立て屋の従業員裕美と恋仲になり結婚する。
ノアは浪人の末無事念願の早稲田大学に合格し、ハンスの金銭的援助の元大学生活を送る。そこで晶子という聡明で蓮っ葉な美人の恋人を得るが、ある日晶子がノアの了承を得ずハンスとの会合に顔を出したことがきっかけで喧嘩が勃発。ノアは彼女のうちに秘めた差別意識に気づき、別れを告げる。また、晶子から「ハンスに似てる」と言われたことで出生の秘密を知ったノアは、絶望から大学を退学して家族との縁を切る。
そしてチャンホは帰国事業の波にのって北朝鮮へ渡り、音信不通となる。
第三部 パチンコ 1962〜1989
大学退学後、ノアは在日であることを隠して長野のパチンコ屋にて経理の職を得、そこで知り合った理佐と結婚。4人の子供を授かるも、ソンジャがハンスに連れられて会いに来た翌日に自ら命を断つ。
春樹は仕立て屋の主任あやめと結婚するが、2人の間に子どもはできなかった。春樹の母の逝去をきっかけに、2人は障害を持つ春樹の弟大介を連れて横浜へと引っ越す。ある日、あやめは散歩の途中で同性愛者の性行為を目撃したことにより、自身の性的欲求を自覚する。そして発展場へ再び赴くことになるのだが、その際春樹が男性と性行為をしているところを目撃する。
モーザスと裕美の間には、2回の流産の末1人息子のソロモンが誕生。しかしソロモンが3歳になった年、交通事故によって裕美は命を落とす。数年後、モーザスは悦子と交際を開始。悦子は自身の不倫によって過去に家庭を崩壊させており、子どもたちとは今も関係が良好とは言えない。唯一口を聞いてくれる娘は10代にして悦子と同じように妊娠し、中絶する。花は母とモーザスの縁で出会ったソロモンに関心を抱き、やがて2人は関係を持つようになるが、しばらくして花は家を飛び出し行方をくらます。
数年後、モーザスと悦子は再婚。その頃花はホステスやソープで日銭を稼ぐ生活を送っており、後にエイズで若くして命を落とす。
ソロモンはアメリカの一流大学から投資銀行就職と出世街道を歩み出し、ガールフレンドのフィービーと共に日本へ戻る。
しかし、投資プロジェクト失敗の責任を負わされて会社をクビになり、フィービーとも別れる。ソロモンは花が死の床で放った「パチンコ屋になれば?」という言葉に導かれるようにして、父のあとを継ぎパチンコ屋になることを決意する。
《感想》
読み出してすぐ、「あ、これは苦手かもしれない」と悪い予感がした。主人公のソンジャはじめ、彼女の一族がまぁことごとく人間ができているかのように描かれているのだ。実際の言動を見れば「ん?」と思う箇所も散見されるのだが(もちろんその時代の朝鮮における倫理的価値観を現代に生きる私が受け入れ難く感じるのは当然のことではあるが)しかし、とにかく作者がこの一族をやけに持ちあげることには、やはりどうしても鼻白らんでしまった。
例えば
「フニは口唇裂と内反足を持って生まれたが、たくましい肩とがっちりした体つき、黄金色の肌に恵まれていた。優しく思慮深い性質は、おとなになっても変わらなかった」p9
「国中のあらゆる家族がこれほど分別のある父母に恵まれたわけではなく」p11
「嫁に与える食事や衣類を惜しんだりなど決してしない義父母だった。無事に育つ跡取りを産めない嫁に、暴力を振るったり非難を向けたりしたことも一度もなかった」p17
「ヨセプはおおらかで心の広い人物だ」p93
といった具合に、ちょっとパラパラページを捲っただけで、こうした褒め言葉にかなりの数遭遇する。もうおなかいっぱいですよ。。
あと、おそらく作者は在日を題材に「抑圧や差別の歴史に翻弄された人々」を描きたかったのではないかと思うが、メインキャラたちの不幸話が「不倫からの妊娠」「事故死」、「自殺」などかなり個人的なもので、歴史の渦に巻き込まれたダイナミックさにいまいち欠けるところがある点にも「うーん…」となった。
ヨセプの被曝や帰国事業の話などをもっと掘り下げてほしかったが、この2つはことの他あっさり流されてしまい、消化不良感が否めない。
それから、日本人女性が皆やけに性に奔放というか、性的倒錯を抱えている点には気持ちの悪さを感じた。しかもこれが揃いも揃って美女揃いで、ソンジャ一族の男たちをホイホイセックスに誘うのだが、この辺りはなんというかすごく村上春樹みを感じる。ノアは早稲田で英文学専攻してジャズ喫茶行ってるし。いや、もう春樹やん。
というか、モーザスの親友の「春樹」とあやめの話、なんやったん…??
あ、そして、ノアは結婚したのに在日って隠し通せているのはどういうこと…??あと父を自殺で亡くした妻と子ども4人を残して自殺するなよ。
と、不平不満をタラタラ書きましたが、とはいえこの四世代に渡る壮大な物語をサクサク読み進めていかせるリーダビリティの高さには目をみはるものがあり、飽きずに楽しむことができました。