【感想・ネタバレ】湖の女たち(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

湖畔の介護施設で暮らす寝たきりの男性が殺された。捜査にあたった刑事は施設で働く女性と出会うが、二人はいつしかインモラルな関係に溺れていく。一方、事件を取材する記者は死亡男性がかつて満州で人体実験にかかわっていたことを突きとめるが、なぜか取材の中止を命じられる。吸い寄せられるように湖に集まる男たち、女たち、そして――。読後、圧倒的な結末に言葉を失う極限の黙示録。(解説・諏訪敦)

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良くも悪くも吉田タッチは健在

12月湖西線に乗って曇天の夕暮れが湖面に反射するどこかもの寂しい琵琶湖を見たことを思い出しながら、そして日に日に老いていく母のことを思いながら、偶然手にしてしまった本。吉田修一ならば間違いないはずだったが、読み進めるたびにうんざりするような酷い状況の話で、ますます琵琶湖
の心象が悪くなってしまった。滋賀県に罪はないが事件が起きそうな心象をもってしまった。吉田小説の温度感を感じ映像が浮かぶような描写は健在で、ゆえに気が滅入ってしまった(これでも褒めています)。追い詰められていく人。堕ちていく人。

#怖い #ドロドロ #ダーク

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2025年01月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

最初、読んでるうちは、インモラルな性愛に目が向きがちで、これ、映画化ってどうするんだろう…、みたいな野次馬的な見方をしていたのですが…

吉田修一さんを見縊るもんじゃありませんでした

それは様々なインモラルについての描写の1つに過ぎなかっただけ

この時代に、1番弱く崩しやすい者を追い込み吊し上げる集団
ある一定数の、金と権力を持っている者の振る舞い
戦時中の正誤が歪んだ中での歪んだ行為

そして、終盤に露わになる事実に、やはり吉田修一氏もはたして盛り込んできたかと放心しました

昨年、「ロスト・ケア」が口火を切り、「正欲」「月」とセンセーショナルな映画が公開されました
今まで、見ないように蓋をしてきたけど、それでいいと思いますか?と読者、視聴者に問いかけてきます

作者は全ては詳らかにはしません、朧げに状況を記すのみで、あとは読者に放つだけ

あなたは、どう判断しますか?

警察がある人を犯人に仕立て上げる様は、まるでSNSで私たちが誰かを吊し上げる様のようで
これを記している時、ニュースが流れました

「セクシー田中さん」の原作者で、漫画家の芦原妃名子さんが死去したことが29日、分かった。

今、またその犯人探しが始まってます

なんでわからないの?
わたしたちはいつまでこんなことをくりかえしますか?

この物語を読んで、心に残った文章です

罪を償わなければならないのは、事件や犯罪を犯したからではない。金や権力を自分が持たなかったからなのだ。

幾らパーティーしようが、頭悪いね、と言い放とうが、大統領にだってなれる時代だけど

だから諦めていいわけがない

すみません、もっとまとまった文章を書くつもりでしたが、突然知ったニュースに心が乱れています

まわりが道徳に反していて、それが当たり前になっているからといって、それが間違っていると思ったら、勇気を出して、周りに配慮して、対話すべきだ、話し合うべきだ
責めるんじゃなくて!誰かを否定するんじゃなくて!
諦めて黙ってても、何も変わらない、と強く思います

それはSNSに無闇に書き込むこととは全く違います
SNSに書き込むことはとてつもない責任を伴う行為です
その言葉で誰かが生きるのを諦めてしまうこともあるのですから

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2024年01月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

各々の登場人物が、かわりばんこに登場して、それぞれの物語になり、それが繋がったりして飽きないのだけど、なんとなくオチが弱かったり、盛り上がり過ぎて収束の仕方が弱かったりで。
そこまで、心に残らなかった。

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2024年10月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

国宝読んで吉田修一熱が上がったので読んでみた。やっぱり小説家としての物語の紡ぎ方は上手くて面白いんだけど、題材がいかんせん。なかなか理解がしづらかった。事件の方のプロットは興味深く、面白く読んだ。

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2024年07月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

6月の梅雨のじめじめした雰囲気に何ともまあピッタリ!タイミング加点あり。

湖という、海や川のように流れていくわけでもなく、ただそこにずっとある変わらないその鬱々しさと美しさが、二つの湖と惹きつける人たちを繋げた物語。
老人介護施設、警察、記者、家族でてくるどのコミュニティもなんだか湖と同じ、陰気臭く波も全て飲み込一方で、包み込む受け入れる性質も持っていた。
そんな湖の中の物語で唯一飛び立つ鳥のように、湖から出ようともがいた、もしくは湖の魚を捕獲する鳥のように、そんな陰湿さを壊そうとしたのが野鳥が好きなあの子だったなと思ってしまう。

そしてこの小説自体も中盤までじめじめと何も起こっていないけど、なんだか惹きつけられる空気感があって、終盤のテンポいい展開でなにか変わりそうで何にも変わらないストーリーにになんだか終始ヤキモキして沸々として、欲求不満感が残った総じて6月にぴったりの小説だった。

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2024年07月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

吉田修一を誰かに薦めるとしたら、私はこの本は選びません。もっと面白く、大好きな作品がたくさんありますので...。

なぜそうなった?や、結局なんだった?といった疑問がほとんど解決されないので、読後、あの話はなんだったんだろうというエピソードがいくつも残ります。
さらに、共感できる人物もいないので...なんか全員気味悪いなぁ、と感じてしまいました。
主人公2人の支配・被支配の描写や(それが途中で逆転しているように見えるところも)、旧満州での話など、引き込まれるところもありましたが、結局なんだった?と思う終わり方です。

「どうせ死ぬのだから、何をしてもいい」と人間を非道な実験に利用して虐殺していた人物が、老衰により弱者となったときに、逆に実験に利用され殺された...ということなのかな?
でも、権力者はいかに罪を重ねようとも、さらなる権力を手にしている。鍵になる宮森勲という人物について、もう少し描いて欲しかったです。

731部隊の話は、恥ずかしながらこの作品で初めて知りました。日本人が、これほど恐ろしい人体実験をしていたことや証拠を抹消するために全員を殺していたことなど、衝撃でした。
吉田修一さんは、日本のなかに昔からあった閉鎖性、同調圧力、保身のための隠蔽などを、湖の町を通して描いたのかもしれないな、と思いました。

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2024年06月23日

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