あらすじ
私たち自身を含めたこの世界のすべてが量子力学が扱うミクロな物質から成り立っていることを考えると、ミクロの世界の「真の姿」を理解することは、私たちが日常的に生活しているこの世界を、ひいては私たち自身を理解することにもつながるであろう。本書の目的は、量子力学が私たちに示す世界像についてこれまで提案されてきたさまざまな哲学的議論を解説することである。――はじめにより。
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読みやすく深い
なにを見るかでなにが見えるかが決まる。
月や太陽、そして自分自身、すべて原子からできている。さらにその原子を構成するミクロな世界。そこは、観測することによって状態が変わるという、実にデリケートな、そして粒子と波の二重性といった、なんとも摩訶不思議な世界。でも、次元が上の世界からみれば不思議ではないのだとか。
ミクロの物質に関する様々な学者の考え方が紹介され、所々で「ちょっと難しいなぁ」と思いつつも読み進めるうちに、どこかミクロな物質に愛情すら感じてくる。量子力学に興味がある人にはオススメです。
Posted by ブクログ
《感想》
覚悟はしていたがやはり難しい。量子力学について多少の知見はあるはずだが、それでも読み解くには普段より多く脳を働かせなければならなかった。しかしながら量子力学の様々な解釈についてきちんとまとめられた書籍は多くないだろうし、歴史的な背景や余談も豊富で充実していたように思う。必要にせまられたら再読するという読み方もありか。売ったりせず本棚には残しておきたい1冊である。
《メモ》
①ある出来事が空間的に十分離れた別の出来事に瞬間的に影響を与えることを「非局所相関」という(エンタングルメントのことか)。
②物理学の基本精神は「なるべく少ない仮定で多くのことを説明する」。
③ド・ブロイは「今まで波だと思われていた光が粒子でもあったのだから、今まで粒子だと思われていた電子が波だったりしてね」と言い出し、その後電子に対して行われた二重スリット実験によって干渉縞が観測された。
④「軌跡解釈」とは、光や電子は粒子だがガイド波と呼ばれる目には見えない波に乗って粒子が動いている、という解釈。「存在論解釈」「因果解釈」「パイロット波解釈」という呼び名もある。
⑤量子力学の哲学における4つの課題と標準的な解釈(コペンハーゲン解釈)
(1)測定前の物理量は確定した値をもつか(実在するか)?
┗標準的な解釈:もたない。もしくは、それについて議論することは無意味。
(2)非局所相関はあるか?
┗標準的な解釈:ある。
(3)射影公理をどう扱うか(状態の収縮をどう扱うか)?
┗標準的な解釈:射影公理を認める。
(4)粒子と波の二重性をどう考えるか?
┗標準的な解釈:粒子と波の二重性を認める。
Posted by ブクログ
科学哲学者(そういう人がいるんですね)の筆者が、量子力学の現象の解釈に関する、諸研究について紹介した本。
序盤で、量子力学の標準解釈という、現在実験で確かめられている現象について、世界中である程度の?妥当性が認められている解釈の話が出てきて、その後、その問題点に対し、どういう議論がなされているか、という流れで話が進む。
標準解釈については、読んだら何となく知っていたことが多かったが、そこに問題点があるということは知らなかったし、また、これだけ多くの議論がなされていることも知らなかったので、面白かった。
特に、量子力学というと、測定するまで粒子の物理量が確定しないものだと固定的に捉えてしまっていたが、多世界解釈や、未来からの因果関係を含めて考える理論など、物理量は確定しているという立場もたくさんあることが新鮮だった。
また、実は物理世界は状態が重ね合わされているのが実相で、我々の意識が錯覚しているのだ、という説や、上記の未来の事象に現在の事象の原因を求める説などを知り、所詮、人間の認識などは、ごく限られた範囲にしか及ばないのかもしれない、ということを強く意識させられた。
ただ、難しかった。
前の議論を完全に租借してから次にいかないと、どんどん分からなくなる。
それに、ベクトルとかを懇切丁寧に解説している割に、説明が足りないんじゃないかと思われるところが散見され、新書を読むような一般の読者層をターゲットとしていそうな割に、全体としてちぐはぐな印象を受けた。
ただ、巻末の推薦図書(どれも本書よりも難しそうな感じ)を見て、また唸りながらも量子力学の世界を感じたいという気持ちにさせてくれるのは不思議だった。
次は、もうちょっと腰を据えて読みたいと思った。
Posted by ブクログ
量子力学が何を問題とし、どんなスタンスなのか?
古典物理学とはどのように違うのか?
光とは何であるか?
非局所相関。隠れた変数理論。タキオン … …
原因があって結果が生じる、という因果律をも相対化し得る量子論の不思議とロマンが詰まっていました。
我々にはまだやるべきことが沢山残っている。
仮構的で暫定的な常識を生きているだけなんだな。
Posted by ブクログ
序盤は分かりやすかったが、後半から非常に難しかった。
前半の内容を人に説明できるくらい噛み砕いてから後半に挑むべきだったのだろう。
量子力学の描く基本的な世界を説明した後に、その謎を解く数多の「解釈」を提示する内容。
パラレルワールドという言葉で有名な「多世界解釈」など、物理学と一般的世界観との差を楽しめる。
ただし、やっぱり難しいというのが正直な感想…。
Posted by ブクログ
途中中断したので、読み終わるのにかなりの時間を要した。
凡人の僕が量子力学系の本を読むと頭の中が混乱してそれが良い。マクロの常識ではミクロの世界は頭の中で想像することがうまくできない。それでもこの本ですこし理解が深まったように思える。
それでも3次元に住む人が4次元をビジュアル化できないのは変りないので本の後半はスッと入ってこなかった。きっと天才と呼ばれる人たちはこれが出来る人なのだろう。
それでも未来と過去が現在を決定するという考え方は多世界解釈よりも概念が面白い。建築を考えるときも気づかないうちにそうしているし。
Posted by ブクログ
原子や電子という極小レベルの世界では、存在そのものが安定しておらず、何をどう観測するかで何が存在するのかが物理的に変わってきてしまうという世界を解釈するのが量子力学という理論だということらしい。aでもありbでもある状態が「重なった状態」であるものが、観測によってaもしくはbに「収縮」してしまうということが、実際に実験で結果として出てしまい、それについてどういう理論なら筋が通るのかというさまざな思考の試みが紹介されているが、読んだことの半分も理解できていない。
Posted by ブクログ
魔眼『リーディングシュタイナー』が疼いたため購入。ページ数は多くないのでわりかしすらすら読める。が、ちゃんと理解できているかと問われたらry
有名な『シュレディンガーの猫』や『多世界解釈』などについて噛み砕いて説明してくれているので、今まで曖昧だった知識が若干強化された感(人に説明できるかどうかは別)。他に光の性質(粒子なのか波なのか)や量子自殺の思考実験、量子ゼノン・パラドクスなど面白い話が沢山ありました。
これらをソラで友人などに語って聴かせることができたらかなり格好良さそう(かなり鬱陶しそう)。
言うまでもなくシュタゲやオルタに影響を受けたクチなのだけど、こういう楽しい話に興味が持てるのだからやはり読み物ゲーはやめられぬぬぬ。
Posted by ブクログ
量子力学の哲学をわかりやすく説明することは難しい。本書でもそれが成功しているとは言い難い。ただ、色々なアイデアを簡潔に紹介していて非常に勉強になった。むしろ数式を示した方がわかりやすいのではないかと思ってしまうが、それだと入門書としてはだめなのだろうか。
Posted by ブクログ
「本書では、量子力学のさまざまな解釈を紹介する。これらはいずれも「解釈」であるから、量子力学が経験的に正しいこと(実験事実をうまく予測したり説明したりすること)を認める。つまり、実験的に確かめることができるものについては、どの解釈も一致しているのだ。それゆえ、どの解釈が正しいのかを実験的に確かめることは、いまのところできない。だから、これは「科学」ではなく「哲学」なのである。(p.7)」
量子力学の非-常識的な性質は、それこそ量子力学が提唱された黎明期において既に指摘されていた。それというのは、本書の副題にあるように、「非実在性・非局所性・粒子と波の二重性」のことである。以降、不可思議な量子の世界を何とか人間が分かる形で言語化しようと様々な「解釈」が考案されてきたが、残念ながら未だ、物理学者や科学哲学者の皆が同意するような解釈には至っていない。
量子力学に対する批判として最も有名なのはEinsteinらによるEPRパラドックスの議論だろうが、量子力学の非-常識さを定量的に表現できたのはBellの定理が最初らしい。本書も、このBellの定理から始まる。
Bellの定理の主張は、「(B1)量子力学系における物理量はいつでも明確な値をもっている (B2)量子力学系において局所的な相関しかない (B3)量子力学は経験的に正しい の三つが同時に満たされることがない(p.120)」というものである。現在の標準的な解釈(コペンハーゲン解釈)は、(B1)と(B2)を諦め、状態の収縮を認める射影公理を導入するというものであるが、この「諦め方」は他にも色々な可能性が考えられる。本書では、その様々な解釈がパターンごとに整理されて紹介されている。名前だけ列挙すると、GRW理論、デコーヒレンス理論、軌跡解釈、多世界解釈、裸の解釈、多精神解釈、単精神解釈、一貫した歴史解釈(多歴史解釈)、様相解釈、交流解釈、時間対称化された量子力学…。こうして改めて並べてみると当然というべきか結構沢山あって驚くが、Bellの定理やKochen-Speckerの定理などのNO-GO定理のために何かを守るためには何かを諦めねばならないので、そこに解釈の「個性」が生じるわけだ。
筆者の一推しが、「時間対称化された量子力学」という解釈である。この解釈によればBellの定理を破ることなく実在性や局所性を守れるので、著者の『アインシュタインvs量子力学』を読んだ時は、どこが悪いのか・なぜもっと支持されないのかが分からなかったのだが、本書では、確かに有力ではありつつ問題点があることも述べられていた。曰く、「ハーディのパラドックス」と呼ばれる状況において、負の確率(みたいなもの)が出てきてしまうそうだ。しかも、それが単なる思考実験にとどまらず、大阪大学の研究チームによって実際の実験として行うことに成功したらしい。この負の確率に対して幾つか説明が提案されてはいるそうだが、取り敢えず留保というのが現状のようだ。負の確率がどのようにして導かれるのか非常に気になるが、本書では数式などは登場しないので分からないのが残念。
新書にしては、とても難解。多分、常識が通用しないために理屈を積み上げていくしか方法がなく、頭がこんがらがってしまうんだろうなぁ。
はじめに
1 量子力学は完全なのか 量子力学のなにが不思議なのか1
2 粒子でもあり波でもある? 量子力学のなにが不思議なのか2
3 不可思議な収縮の謎を解け
4 粒子も波もある
5 世界がたくさん
6 他にもいろいろな解釈がある
7 過去と未来を平等に考えてみる
読書案内
索引
Posted by ブクログ
数式はほとんどなく概念の説明だが、とても難解だった。いろいろな諸説が概念で説明されており、この分野で議論されていることを垣間見ることができた。非実在論的な考え方にはどうしてもなじめない。実在論の立場の考え方も生き残っていることを知り安心した。それにして時間を対照的に考えるというくだりになるとほとんど理解できなかった。理解できないとますます興味が湧いてくる。
Posted by ブクログ
個人的に物理が好きなのもあって量子力学の本は結構読んでるんですけど、その中でも特異な本ですね。
多くの本は、終始、量子の世界ではこんな不思議なことが起こるんだよー、でも何でかはまだよくわからないんだー、みたいな感じなのですが、これはそういう所が焦点ではなく、その解釈の仕方を色々紹介するのがテーマとなってます。
そういう意味で少し新鮮でした。
本書の後ろにある索引を見ればわかると思うけど、いやー難しいf^_^;)
わかったようなわからないような・・・
量子力学の話を知りたいだけならもっと優しい本はいくらでもありますよw
でも、色んなものの見方だとか、科学者がどういう風に視点を変えてこういう発想に至ったのかといった経緯がわかって面白いです。
確かに時間が時空という空間の1つの座標軸に過ぎないのなら、そのなかで時間軸だけが非対称(不可逆性があるから)てのは変な話ですよね。
だったら時間も対称なのではないか!?
人間の固定観念による時間非対称という誤謬によって原因と結果という因果関係があるわけで、本当はそれ自体人間の幻想であるという考え方はすごいですね!!
現在が過去だけでなく未来にもよって決まるってのは面白い。
こういう話を読むといつも思うのは時間って何?ですね。
ただ単に事象の連続を時間と呼んでるだけで、時が進むとか戻るとかがそもそも無いんでは無いか?とか。
時間とは変化のこと?
もしも何も変化しなかったら我々は時間を認識することは出来ないだろう。
そしたら、変化が無い時は時間は止まってるの?とか。
そうこう考えてるうちに実存ってなに?みたいになって、結局わからなくて行き詰まって諦めるw
でも、色々考えるのは楽しいですね!!
Posted by ブクログ
困難。シュレディンガーの猫や、世界が多重に存在してるという件、物理世界と認識世界を別扱いする件は面白いけど、小難しくて最後まで読めず、最終章は流し読みで断念。無念。
Posted by ブクログ
久しぶりの量子力学本だった。
思い返せば、高校時代に読んだ『ホーキング、宇宙を語る』が量子力学に初めて触れた瞬間だったのだろう。主題は宇宙についてだが、天文学と量子力学の統合という壮大なテーマに胸をときめかせたことが懐かしい。
本書に話題を戻すと、
光の粒子説・波動説、二重スリット問題、シュレディンガーの猫、多世界解釈・・・もっと浅めの解説なら、読んだことがあったのだが、より深い解説、実験の詳細が記述されていたり、図式を使った解説も新鮮だった。知らなかった仮説も多く紹介されていて、とても刺激的だ。
だが、いかんせん歯切れが悪い。
「〜である。(だが、そうではない場合もありえる。これについては後述する。)」
こんな言い回しが何度も出現する。「結局どっちなんだよ」とツッコミを入れたくなってしまう。
全てが仮説であり、証明する術を持たない量子力学においては、言い切りの形をとるよりも、より誠実な記述と言えるかもしれないが。。。
あと、まだまだ続くと思っていた階段が急に終わっていて、足を踏み外すような読後感だった。
おもしろかったんだけどね。