【感想・ネタバレ】わたしを離さないで Never Let Me Goのレビュー

あらすじ

優秀な介護人キャシー・Hは「提供者」と呼ばれる人々の世話をしている。生まれ育った施設へールシャムの親友トミーやルースも「提供者」だった。キャシーは施設での奇妙な日々に思いをめぐらす。図画工作に力を入れた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちのぎこちない態度……。彼女の回想はヘールシャムの残酷な真実を明かしていく。解説:柴田元幸

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Posted by ブクログ

ネタバレ

臓器提供のためのクローン人間を育てる施設…はて、どこかで聞いたことがあるような?と思いながら読み終わったあと調べてみたら、約束のネバーランドの元ネタになってるらしいと聞いてなるほどね、となった。約束のネバーランドの方はなんとなく話を聞いてただけだったから、こっちを先に読めてよかったと思う。設定に結構SF味があるんだけど、全体的に派手じゃなく、本当にあった話かのようにリアルに感じられた。謎が徐々に明かされていくどきどき感もあった。なにより、登場人物たちの複雑な感情の揺れ動きが言葉や行動の一つ一つ、すごく丁寧に描かれていて、思わず感情移入して切なくて何回も泣きそうになった。切なく、印象的な美しいシーンもたくさんあって、大好きな物語の一つになった。

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2025年11月11日

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ネタバレ

なんて悲しい話なのか、と思いながら読んだ。主人公であるキャシーらは、臓器提供のために育てられたクローン人間である、という設定はそれ自体大変ショッキングな内容だが、読者としては、物語が進むにつれ、直接な言及はなくともなんとなく察せられるようになっていて、いつの間にかそれを知っている、ということになっている。それはまるで、主人公たちが、知るともなしにその事実を知って、いつのまにかその事実を受け入れているというストーリーをなぞっているようだ。そういう体験を、実に周到に用意しているように思う。そして、そのこと、つまり、自分たちがいつのまにかその事実を受け入れてしまうということが、とても残酷なことだと気づく。主人公のパートナー(といっていいのだろう)トミーが、些細な理由で癇癪を爆発させているのは、その事実を感づいていたからではないか、というくだりが最後の方に出てくる。本当はそれだけ抗わなくてはいけない、そういう運命のはずだが、彼らは何もわからないままに癇癪を爆発させることしかできない。すごく悲しい話だなと思った。でも、直接描かれているのはとてもリアルな人間関係のぎくしゃくだったりその中で通じ合う気持ちだったりする。そうして気持ちが通じ合う瞬間の尊さも、悲しさを増す要素のような気がする。

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2025年10月11日

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ネタバレ

物語を通して漂う不穏な空気、終盤にかけて「臓器提供」、「クローン」、「手術台」といった直接的な言葉で分からせられる地獄の中で「わたしを離さないで」というフレーズが刺さって、頭の中をぐるぐる巡っていた。
クローンが作り出した絵画や詩に映る魂、友情、愛の在り方、それを人間達はどう見るのか等、単なる悲しみや切なさだけでなく、ヘールシャムの風景をはじめとした光のようなものも見えて、余韻が美しかった。

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2025年10月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

あまりに良かった。最後の終わり方が美しすぎて余韻に浸っており、感想も書けなかったし、別の方を読む気にもならなかった。

「記憶」を一つのテーマにしているとのことだが、知らずに読み進めた場合、そのような印象を受けなかった。のちに見てしっくりきた。

友達に勧めて貸している。感想を聞くのが楽しみである。

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2025年09月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

読み終えた正直な感想は、「しんどい」だった。

物語は主人公の一人であるキャシーの語りで進む。

キャシーの主観での語りという不安定さもあるし、端々に小さい違和感があったり、「ご存知ですよね?」という感じでサラッと語られる怖い事実があり、読んでいて「これ、この中の世界はどうなってるの?」と思わされて、まるで見通しの悪い霧の中にいるようだった。

人間関係の描き方が細かくて、人間の嫌で面倒なところがすごく表されている。

最後に「しんどい」と思ったのは、救いが無いからだ。

運命は決まっていて、希望が見えて抗ってみようとするけど、やっぱり運命に逆らえない。

無力感、脱力感に襲われる読後感だった。

私はこの本のテーマを一つ決めるなら、「運命を知って、一生懸命に生きられるか」ということだ。

もし、自分の将来が分かるとする。

だとしたら、私は知りたくない。

知ってしまえば楽しみが無くなるし、怖いからだ。

もしかしたら、自分が思う以上に短い命なのかもしれないし、とんでもない目に遭うかもしれない。

そう思うと、直視したくない。

それに、今できることを精一杯味わって生きていたい。

奥さんとの会話、息子の成長、燃えるような仕事。

今できることを、今やりたい。

そうやって生きていった先で迎えた運命のゴールだったら、後悔は少なく済むかもしれないな、と考えている。

怖さ、不気味さの漂う小説だけど、『日の名残り』を読んだ時に感じた、じんわり染みるような優しい言葉が溢れている。

「世界の手触りが優しくなった」という言葉が印象的だ。

大切な人と過ごす温かい時間。

それがあるだけで、少しだけ世界の感触が変わる。

私も家族といてそれは分かる。

「家族のため」ではなく、「家族のおかげ」で、今の私はある。

運命というものはあるのかもしれない。

でも、だからといって今を疎かにして良いわけじゃない。

今を精一杯に味わって、良い人生だったと笑って言えるように生きていきたい。

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2025年09月19日

mac

ネタバレ 購入済み

人生の尊厳

一部ご紹介します。
・「あなた方は教わっているようで、実は教わっていません。
形ばかり教わっていても、誰一人、本当に理解しているとは思えません」
「あなた方の人生はもう決まっています。これから大人になっていきますが、あなた方に老年はありません。
あなた方は一つの目的のためにこの世に産み出されていて、将来は決定済みです。ですから、無益な空想はもうやめなければなりません」
「みっともない人生にしないため、自分が何者で、先に何が待っているかを知っておいてください」
・「絵も、詩も、そういうものは全て、作った人の内部をさらけ出す。作った人の魂を見せる」
・すぐにも行動を起こさないと、機会は永遠に失われるかもしれない
・「あなた方はいい人生を送ってきました。教育も受けました。もちろん、もっとしてあげられなかったことに心残りはありますけれど」
「生徒たちを人道的で文化的な環境で育てれば、普通の人間と同じように、感受性豊かで理知的な人間に育ちうること、それを世界に示した」
「あなた方は、駒だとしても幸運な駒ですよ。追い風が吹くかに見えた時期もありましたが、それは去りました。
世の中とは、ときにそうしたものです。受け入れなければね。
人の考えや感情はあちらに行き、こちらに戻り、変わります。
あなた方は、変化する流れの中のいまに生まれたということです」
・「新しい世界が足早にやってくる。科学が発達して、効率もいい。
古い病気に新しい治療法が見つかる。すばらしい。でも、無慈悲で、残酷な世界でもある。
そこにこの少女がいた。目を固く閉じて、胸に古い世界をしっかり抱えている。
心の中では消えつつある世界だと分かっているのに、それを抱きしめて、離さないで、離さないでと懇願している」
・「俺はな、よく川の中の二人を考える。
どこかにある川で、凄く流れが速いんだ。で、その水の中に二人がいる。
互いに相手にしがみついている。必死でしがみついてるんだけど、結局、流れが強すぎて、最後は手を離して、別々に流される。
俺たちって、それと同じだろ?最後はな、永遠に一緒ってわけにはいかん」


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2022年09月30日

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ネタバレ

なかなか残酷で悲しいお話。表紙だけ見ていると、正直こういう話だとは全く予想していなかった。

何と言えば正しいのだろう。物語が淡々と進み、淡々と悲しい事がたくさん起こる。そこに諦念や怒り、憎しみも感じづらく、年頃の子達がよくある悩みや不満をぶちまけている様子が物語の大半だ。

こういう子ども時代を過ごせることは幸運なのか、幸運とも言えるかもしれない、ただ、そもそも臓器提供をする為だけに産まれてきた子達がいる事が衝撃ではないか、その視点からみると、エミリ先生たちが行った事は、自己満足の欺瞞かもしれない。それに翻弄されたキャシー達は一体何なのか。まだ自分の中でうまく感想が言えない。

読み手によって評価も感想も180度違ってくると思う。ただ、面白い作品であることは間違いないです。一度手に取ることをオススメします。

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2025年12月11日

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何喰ったらこんな残酷な話を思い付くのか?と言うほどに救いのない話だった。

教育を経ているとは言え、非人道的な使命を当たり前のように受け入れて疑問にも思わず反抗も逃げ出しもしないのを見るに、悲しいかな結局彼らは制御された家畜でしかないと言うことなんだろうな。作品内で"魂"について追求しつつもそれすらもコントロールされた心底悲しい存在でしかない。本当に残酷。

作品全体がキャスの回顧録と言う体裁も疑うべきもので、通常の人間と彼らが感じる外界からの刺激や情報の感じ取り方も実はまったく違うものなんじゃないかな。キャスの目から見た世界は存外優しく穏やかなものだけど、先生やマダムの働きかけやヘールシャム以外の施設の話を通して想像するに現実の彼らの扱いは決してそんなに優しいものではないんだと思う。
いわゆる"信頼できない語り手"そのもので、この作品自体がそうしたコントロールされた目線、何ならこの回顧録自体がコントロールされたものと言う作りになっていることがさらにこの世界の残酷さを際立たせている。

ほんと何も救いがなく、やるせなさや切なさすらも上書きする暗くて寒さのある作品だった。

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2025年11月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

子どもたちの暮らすヘールシャムはどこか暗い雰囲気を感じる施設だと感じ、それがずっと心に引っかかっていましたが、読み進めるとその原因が次第に明らかになっていき、その度に衝撃を受けました。

臓器提供を目的に作り出されたクローンに教育を受けさせる。それは本当に必要なのだろうか。人間らしく育てた先にあるのが、臓器提供でいいのだろうか。私には安易に答えが出せませんでした。切ない気持ちが残りました。

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2025年11月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

静かで悲しい話だった。
主人公が半生を振り返る口調がたいへん抑制がきいてきて冷静で、あとルースが嫌なやつすぎて、そして長くて、ページをめくる手が鈍った...けど、ラストスパートのヒリヒリとした切実さは胸に迫るものがあった。運命が悲しいし、やるせないし、おそろしい。
マダムとエミリ先生の、無自覚な残酷さ(むしろ人格者だくらいの自負すらある)、こわい。
ふたりの運動によって主人公たちに豊かな感情が生まれ、そして絶望する。もし大きな変化の波の中にあっても「私たちの人生はこれがすべて」...。変えられない運命なら期待を持たせるような教育自体が悪なのでは?いやそれでも彼らに大切な人とあたたかい記憶ができるなら無意味とは言えないか...いろいろ考えてしまうな。
沼地の難破船を3人で眺めるシーン、静かで絵的で美しかったな。

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2025年10月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

最初は翻訳感が強い文章で、背景もイマイチ読めないまま外れかな、なんて感じで始まるものの、途中でだんだん引っかかるものが出てきて、その違和感がだんだん形になっていく中で一気に読んでしまった。
ある種ディストピア的でミステリ的で、最後も別に明確に終わりがあるわけではない、という点で個人的には消化不良感がある。

最終的には提供者として死んでいく。その中で幻かもしれないが人生の素晴らしさ、それは主に創作とこの小説の中ではされてると思うけど、それを味わえたことをよしとしているのか、いや残酷だというところなのか、そこの判断はある種委ねてるのかなとは思う。

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2025年11月29日

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