あらすじ
炒米粉、魯肉飯、冬瓜茶……あなたとなら何十杯でも――。
結婚から逃げる日本人作家・千鶴子と、お仕着せの許婚をもつ台湾人通訳・千鶴。
ふたりは底知れぬ食欲と“秘めた傷”をお供に、昭和十三年、台湾縦貫鉄道の旅に出る。
「私はこの作品を過去の物語ではなく、現在こそ必要な物語として読んだ。
そして、ラストの仕掛けの巧妙さ。ああ、うまい。ただ甘いだけではない、苦みと切なさを伴う、極上の味わいだ。」
古内一絵さん大満足
1938年、五月の台湾。
作家・青山千鶴子は講演旅行に招かれ、台湾人通訳・王千鶴と出会う。
現地の食文化や歴史に通じるのみならず、料理の腕まで天才的な千鶴とともに、
台湾縦貫鉄道に乗りこみ、つぎつぎ台湾の味に魅了されていく。
しかし、いつまでも心の奥を見せない千鶴に、千鶴子は焦燥感を募らせる。
国家の争い、女性への抑圧、植民地をめぐる立場の差―――
あらゆる壁に阻まれ、傷つきながら、ふたりの旅はどこへ行く。
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
いろんな仕掛けがある本だった。
特に女性同士であることによる現代人からの感情移入のしやすさと権力関係の見えなさ。
もしこれが日本人男性が現地の女性に翻訳兼料理人をさせている話だとすれば、読者すぐにその権力関係に気づいただろう。
あと最後に主人公が被害者ポジションを取らずにしっかりと謝ったところが良かった。
Posted by ブクログ
青山千鶴子という作家、聞いたことないなと思って読んで、あとがきで全部フィクションだったと知った。面白かったから問題ないけど、こんな手法あるんだ〜とびっくりした。
支配者と被支配者の間には友情が成立しない。でも人として気にかけることはできる。「私だけのために料理をしてくれた初めての人です」という言葉が好きだなあ。
Posted by ブクログ
前半は台湾料理ばかりであまり進まなかった。
植民地にする側とされる側、千鶴子にはそんな認識なかったのかもしれないけど、それでも底の底の根っこにはそんな意識があって、知らず知らずのうちに平等であるべき立場に上下ができてしまっていたんだな。
この時代は現在とは違うけれど、それでも千鶴子のような言動は私自身無意識のうちに取ってしまっていることがあるかもしれない。傲慢だ。
恥ずかしながら台湾が日本の植民地だった時代の出来事や詳細は知らなかったけれど、植民地にされた土地は、その土地の伝統ある文化や遺物や考えが淘汰される、それが支配されることなんだなと考えた。
最後の構成が素敵だった。まるで青山千鶴子と千鶴が本当に実在していたような。フィクションだけど全てがフィクションではない、きっとこの物語のような出来事はどこかで起きていたんだと思ってしまう。
Posted by ブクログ
友好の印象が強い台湾。震災のときの多額の寄付・救護支援、ただただ甘受するだけになっていたかもしれません。前半にでてきた千鶴子と千鶴が役割交代して日本巡り旅行記第2弾は、「いいじゃん、楽しそう」って普通に思ってしまいました。相手が望んでいるものと合致してこその御返しですものね。
『私は思わず立ち上がり、大声で宣言した。「いっしょに台湾を食べ尽くしましょう!」千鶴は驚いた顔をしたが、すぐににっこり笑ってうなずいた。』
どこから2人がすれ違っちゃったのかなって読み返すけど、もうそれぞれの立場含めて最初からなのかもしれない。でもこの2人じゃないと見れない景色も、食べられない美味しいものも、あったんだよ!!出会いには礼節を持って、感謝です( ;∀;)
先月読み終わったのに、思うように感想が書けなかった1冊。時々、この2人のこと思い出していろいろ猛省したい。
2024.11