あらすじ
大阪・船場の老舗矢島家は代々跡継ぎ娘に養子婿をとる女系の家筋。その四代目嘉蔵が亡くなって、出もどりの長女藤代、養子婿をむかえた次女千寿、料理教室にかよう三女雛子をはじめ親戚一同の前で、番頭の宇市が遺言書を読み上げる。そこには莫大な遺産の配分方法ばかりでなく、嘉蔵の隠し女の事まで認められていた。……遺産相続争いを通し人間のエゴと欲望を赤裸々に抉る長編小説。
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Posted by ブクログ
なかなかなホラーです。
予習で米倉涼子主演のドラマのさわりだけみて、怖いなあと思ったけど、原作はもっと凄味が。
(上巻)ラストの3姉妹&叔母さんが神ノ木に押し掛ける場面なんて、もう尋常じゃないですよ。忠実に映像化したら、地上波じゃ流せない。
Posted by ブクログ
大阪の老舗木綿問屋の、四代目当主が亡くなったことで繰り広げられる相続争いの話。
代々女系の家系で、総領娘が養子婿をとって事業を継続していたので、当主と言えども家庭内では影の薄い存在であった。
長女の藤代は出戻りの33歳。
総領娘として母親から甘やかされて育ち、プライドが高い。
父の跡を継ぐ(財産も家名も)のは当然自分であると思っていた。(事業にタッチしていないのに、この自信は何だ?)
次女の千寿は地味で大人しく、姉が嫁に出てしまったため、養子婿をとった。
全てのことで姉に差を付けられてきたことを恨んでいる。
末の雛子は、まだ19歳。
マイペースな現代っ子(連載当時)だが、苦労知らずゆえの酷薄さはある。
家業のことも矢島家の財産のことも一手に任されている、大番頭の宇市。
先先代から仕えているので、さすがの矢島家の面々も、彼には頭があがらないところがある。
三姉妹の母の妹である芳子叔母。
姉が家を継いだため分家を立ててもらったものの、分家に追いやられたという恨みがある。
年齢をたてに三姉妹の上に立とうとするところが無きにしも非ず。
この二人も一筋縄ではいかず、隙あらばうまい汁を吸おうと画策するのは三姉妹と変わらず。
なんなら彼女たちよりも強かで、質が悪い。
そして、父親が囲っていた藤代と同い年の妾・文乃。
家庭内で影の薄かった嘉蔵を思いやり、ひっそりと息をひそめて生きてきた彼女。
嘉蔵は遺言状の中では具体的に何かを残すことはなく、文乃も特に何かを欲しがることはなかった。
しかし彼女が妊娠していることがわかり、事態は大きな局面を迎えるのだった。
面白そうなプロットではある。
でも、読んでいてもちっとも楽しくなかったのは、出てくる人出てくる人がみんな欲の塊で、一向に気持ちが晴れなかったから。
山崎豊子の作品なのだから、単純なハッピーエンドや勧善懲悪ってことはないだろうと思うけれど、誰が得をしても嫌な気持ちになるだろうし、誰が損をしても自業自得だと思うだろうから、なかなか興が乗らないのだ。
誰か一人でも善人が出てくれたらなあ。
Posted by ブクログ
秀作。
山崎豊子さん、流石。関西を舞台にした作品は真骨頂。
男女関係、商売に古さ、時代を感じるが、それも良い。
人間の欲は時代が違っても変わらない。
終盤の急展開が面白い。