【感想・ネタバレ】さかしまのレビュー

あらすじ

「久しく名のみきいていたデカダンスの聖書『さかしま』の難解を以って鳴る原文を、明晰暢達な日本語、しかも古風な威厳と憂愁をそなえた日本語にみごとに移しえた訳者の澁澤龍彦氏の功績を称えたい」(三島由紀夫)。<生涯>を至上の価値とする社会に敢然と反旗を翻し、自らの「部屋」に小宇宙を築き上げた主人公デ・ゼッサント。澁澤龍彦が最も愛した翻訳が今甦る!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

デ・ゼッサントは病弱な貴族の末裔で、パリを離れ趣向を凝らした屋敷で隠遁生活を送る。下女には修道女のようなボンネットを被らせて歩かせている。およそこの世の放蕩生活をし尽くした主人公は、ペイステギの仮面舞踏会を思わせるような葬儀のようなパーティー、喪の宴を開き、隠遁先では黄金の盾を背負わせ宝石をあしらった亀を飼い(すぐ死んでしまうが)や食虫植物や異形の熱帯植物を集め(すぐ萎れてしまうが)独自に香水を調合し、残虐な異端審問の版画やモローのサロメの絵画を眺めて暮らす。現実よりも空想を愛し、ディケンズを読んで薄汚れたどす黒いテムズ河のロンドンを訪れんとするが、パリで満足し引き返してしまう。
凡俗を忌み嫌いながら、音楽ではベートーベンやシューマンなど俗なクラッシックを愛好する。独自の偏見と歪んだ美学を貫いた生活を送るが、医師の強い勧めによりパリへ戻る。
パリ、功利主義とアメリカの商業の圧政に屈した徒場へと。
貴族の凋落と新興のブルジョワ・商業への強い嫌悪を豪奢で華麗な形容詞によって罵る。芸術的な罵り言葉。イギリスのプロテスタンティズムへの嘲笑。ローマへの憧憬。傑作。
堕天使ルシファーが天上では高位の天使であったように、全ての才能と栄華を一身に受けたはずの貴族の退廃。豪華で官能的な悪魔主義。

1
2019年03月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

世俗を厭い、人里離れた一軒家に自分の趣味を詰め込んだ理想郷を夢見た青年の話だった。
無邪気さを持っていたはずの少年が世の中を知るにつれ、いつしか偏屈な大人になっていた。資産はあるが孤独であったことが少なからず影響していると思う。
孤独で静かな部屋で語られているのに、その内容は何よりも刺激的で歪んだ情熱がある。文学や芸術分野において独自の講釈を垂れているけれど、終始人間味が感じられて好ましい目で見ていた。知らない作品の評価でも、その熱意によって読まされてしまう。
旅行に出ようとして、目的地に行かずに外食だけして帰ってきたときはちょっと面白かった。憎めないところがあるのだ。
次第に神経症が悪化して生きるか死ぬかという状態になり、健康的な生活のために街に戻るときになってやっと本心が見えるところが良かった。デ・ゼッサントは堕落した人間や組織が嫌いなだけであって、信仰心自体はあるのではないかと思わされた。
途中、サディズムについて語っているのが印象的だったが、デ・ゼッサントがこれまでやってきたことも、根底に信仰あってこそ神を汚す行為だったのではないかと思うのだった。

0
2024年04月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

【あらすじ】世の中いやになったのでひきこもっていろいろ連想を働かせていたら躰を壊しちゃいました。ああ、いやだなあ。

【笑えたところ】インテリアへの異様なこだわり。ひきこもりだから。
文学への衒学趣味は完璧。あ、でも忘れてた、音楽にもまずまずこだわりあるんだよーとエクスキューズ。その必死さ。

いわば趣味ブログ。私ってこんな高尚な趣味なんですよーとアピっている。

しょうもないが嫌いになれないパーソナリティ。
それは亀の甲羅へ宝石を象嵌させたり、酒の組み合わせを口中オルガンと見做したりするような、一種の諧謔による。
神経の病と腐肉への偏愛も。

想像力による現実の塗り替え。の、勝利と敗北。

貴族/ブルジョア/カトリック(の堕落)

「あれはみんな梅毒なんだな」
うん。この一言に尽きる。

1
2014年12月21日

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