あらすじ
用心棒が赴くところにドラマがある――。故あって人を斬り脱藩。己れの命を危険にさらし、様々な人の楯となって生きる浪人青江又八郎の苛烈な青春。江戸は元禄、巷間を騒がす赤穂浪人の隠れた動きが活発になるにつれ、請け負う仕事はなぜか浅野・吉良両家の争いの周辺に……。凄まじい殺陣の迫力と市井の哀歓あふれる十話。
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二度も実写化した時代小説の傑作
90年代のNHKドラマ版は昔見たが、原作小説も知りたいと思って読了。
この1巻のみに関しては、比較的忠実に作られていたと思う。TVで見た記憶のある懐かしいエピソードもちらほら。
なお、TVで毎話登場していた国元からのゲスト刺客は原作では4人しか登場しない。
内容としては首魁・大富家老を又八郎が斬り、同居する許婚・由亀と結婚する決意を固めるまで。
藤沢周平《珠玉の》名作。
初めて読んだのが高校生ぐらいだったので、もう30年ぐらい経ちますが、何十回読んでも何かしら必ず「気付き」が有り、「どうやったら、こんなに素晴らしい作品が書けるのか……」と毎回読後、至福のため息をついています。
昔々、NHKのドラマで『腕におぼえあり』と云う作品になったのですが、その時の配役も素晴らしくて、小説を読む度に脳内再生され、一読で何回も楽しめる、素晴らしい時代小説の傑作だと思っています。
その昔は歴史、時代小説の名手として、司馬遼太郎、池波正太郎と並び称された3人ですが、作品に漂う抒情性や人の心のきめ細やかさに於いては、藤沢先生が一歩抜きん出ていると思います。
作品数等から、軽妙洒脱で映像的な池波先生が人気ですが(それはそれで大好きなんですけどw)、つい手が伸びるのは藤沢作品ですね。
ちなみにこの作品は好評につき4作まで書かれましたが、私は最初のこの作品が一番だと思います。
再読。やはり、面白い。主人公の又八郎や、その周辺の人物像が、生き生きと立ち上がって来る。あたかも、自分が、其処で息をしているかのように感じる。
Posted by ブクログ
「三屋清左衛門残日録」などにも通じる、生真面目な武士(訳あって浪人をしている)の日々を綴った連作集。
隠し味に、赤穂浪士の討ち入りというスパイスを聞かせて、一気に読める。
家中の暗闘という、藤沢周平の作品によく使われるモチーフもちゃんと入っている。
浪人ものとはいえ、明るく、くすりと笑えるところもある作品。
Posted by ブクログ
初めての藤沢周平作品だったけど、読みやすく面白かった。
各話に美しい女性が現れ、どの女性も又八郎のことを憎からず思っているのはちょっと面白かった。男性が考える理想のモテ方を主人公がしていた。
その又八郎の男ぶりの良さが、信頼のおける主人公へグレードアップさせている。
特に、普段若い男性と話す機会がなく、又八郎と話すときにはしゃいでいる若い女の子の描写などは、世慣れた男性の視点だなと思ったし、女性の目線から見ても、あるわ…という感じで又八郎の小慣れた視点はやはりモテを感じる。
彼の生活の仕方も、仕事は一所懸命やる、でも余裕があるときはダラダラもする、懐が寂しいときは寝るしかしないなど、一貫して態度がさっぱりしており、そこにも好感がもてる。
剣術もすげーし女にモテるし誠実だし、非の打ち所がありませんってところは王道っぽいキャラクター作りだけど、一方で作者や時代の好みも反映されてる感じもあり、時代小説ってロマンを盛り込む枠組みとして有効なんだなあと感じた。
あと初めて侍が主人公の小説を読んで新鮮で面白かったのは、殺陣の描写。意外とすぐスパッと人を斬るし、斬られるし、殺す。時代劇の殺陣って派手に見せるために長尺なことが多いけど、この小説ではほんの一瞬の出来事として描かれている。あとは、刀を抜いて相手と向き合ったときの描写が面白かった。強者と対峙したときのその強さの言語化ってこんなふうにするんだ、と新鮮だった。
「鈍く光る一本の剣の陰に、塚原の五体はほとんど隠れるばかりに圧縮されてみえる。その姿勢が、すさまじい弾力を秘めていることは明らかだった(p.298)」
でも相手の描写がどんなに強そうでも、又八郎が負けることは絶対にあり得ないと途中からわかったので、ハラハラすることはあんまりなかった。
逆に相手から又八郎はどんなふうに見えてるんだろう。
そのうち続編も読みたい。細谷とのコンビけっこう好き。